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吉田兄弟に関する強めの幻覚(小説じゃないです)

吉田ベルリネッタと吉田テスタロッサに関する考察とも呼べない妄想について

風桶が終わってしまった。ずっとずっと観たかった吉田兄弟。神社仏閣パワースポットでその再来をガチで二、三回祈った吉田兄弟。祈った通りに最高だった。彼らのことは忘れない。忘れないが、時が経つと細部の記憶や熱量が摩耗し、「なんやかんやでとにかく最高」という曖昧な概念になってしまう可能性はある。今のうちに、できる限り見たもの/読んだものに準拠し、ぼくのかんがえた最高の吉田兄弟について記録しておこうと思う。

と言っても、グラバーエアプ芸人の私にとって、寄る辺となる一次情報は七回分の風桶2021本編の記憶とパンフレットにしかない。知っての通り、風桶本編における吉田兄弟の描写はそう多くはない。というかあのふたりが兄弟ということすらはっきり分かりやすく明示されている訳ではない。

ということで、これより下部に記載されているものは概ね強めの幻覚(だいぶキツい)である。

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吉田ベルリネッタ
吉田兄弟の兄で、2322年の科学者。
性格は「真面目で頑固で神経質」(風桶2021パンフレット)。
愛とは「見返りを求めない無償の奉仕」(グラバーのパンフレット(中の人の回答))
30-35歳ぐらい?
芸者見習い(=舞子か仕込み=15-20歳)の小唄に軽く執着していたことからロリコンの気があるのでは…。
頭は良いし能力も高いが何かと間が悪く、損ばかりして鬱憤を溜めがち。
人望がなく、お金でしかお願いを聞いてもらえない。

弟とふたりでタイムマシンを開発していたが、完成後に弟に手柄を横取りされてグレる。タイムマシン開発に関する全ての機密データを第三者に売り渡し、単身江戸時代へ。江戸では売り払ったデータの対価と思わしき金塊と、未来から持って来た発明品を抱えて何やら企んでいたようだ。弟が江戸時代まで自分を追いかけてきたことを知り、金で雇ったチンピラを使い迎え撃とうとする。最後は弟と共に恐竜が闊歩していた太古の地球に飛ばされ、とても大人とは思えないような兄弟喧嘩を繰り広げることになる。

吉田テスタロッサ
吉田兄弟の弟で、2322年の科学者。
性格は「陽気で適当で大雑把」(風桶2021パンフレット)。
愛とは「相手の幸せを願うこと」(グラバーのパンフレット(中の人の回答))。
年齢は、中の人の年齢差を採用するならベルリネッタの二つ下。
28-33歳ぐらい?
300年前に活動を終了したロックバンド、「夜桜前線」の大ファン。
「失踪した実の兄の捜索」というシリアスな状況下でも「どうせ大阪に行くならたこ焼きをたべたい」程度のノリで現代に寄り道し、結果的に無関係な民間人3人を時間旅行に巻き込んでしまう。
"人がいないと思って"大入りの劇場の舞台上に飛んだり、タバコの不始末によってかなりの規模の大火事を起こしたりとやらかしが目立つが、愛嬌と可愛げで怒られを免除される。
夜桜前線を推す奴は全員友達のコミュ力おばけ。布教を惜しまないタイプのオタク。
「歴史を変えてしまうことはできない」と表明しつつ、2022年でも江戸時代でも未来の服を着たまま行動するアホちゃんなところがある。
オモシロ芸者お姉さん、市丸にモーションをかけられた際には必死で逃げていたので、男子校出身なのかもしれない。

適当で何も考えていないように見えるが、冒頭の前説でも恐らく作中でも、タイムマシンの共同製作者が実の兄であることを人に話していない。
また、破損したタイムマシンを修理する際には夜桜前線のメンバーをも部屋から締め出していたこと、異時代人を感知する謎ダウジングを行っていた際にはひとりだったことから、タイムマシン関連の出来事に関してはできる限り人に頼らず、「自分で責任を持ってやる」ことに執着しているようにも見える。「いつまでも助けてもらってしまってはダメだ」「一人前に自立しなければ」という末っ子のコンプレックスを抱えている?

(参考:中の人の過去のブログ
・「僕は誰か助けてくれと心の底で叫んでおきながら、差し伸べてくれている手にうるさく注文をつけては振り払うのである(要約)。末っ子が故の性分か
・「人は自立してなんぼである。」
「責任を持つべきだと思う。末っ子だったせいもあり、最近やっと気づいたが、何かまずいことになっても誰かがなんとかしてくれると思っていたらしい。」「責任を持って、恥をかくべきだと思う。」

兄とふたりでタイムマシンを開発していた際、兄の試作機を弄っていると偶然タイムマシンが発動。布教するタイプのオタクなので、自分と兄が作った素晴らしい発明について世界に知らせるべく早速メディアに出演。兄と自分が作ったことを強調するも、報道ではテスタロッサだけが取り上げられ、本人も知らぬ内に事実上のタイムマシン開発者に。気づいた時にはグレきった兄が機密データを売り払い、江戸時代に飛んでしまった。なんやかんやで現代に寄り道して夜桜前線を巻き込み、兄を捜しに江戸時代へ。現地人と秒で友達になり、夜桜前線の解散も防いでよろしくやっているところに、突然拗らせ切ってめちゃくちゃ怒っている兄が出現。困惑しつつも兄の捕縛に成功。兄と共に恐竜が闊歩する太古の地球へ飛び、大人とは思えないような兄弟喧嘩を繰り広げることになる。

テスタロッサについては作中滅多に素を出さないため、彼について理解しようとすると、歌詞やら行動や表情の拡大解釈やら、果ては役者さん本人のブログやらを使ってかなり強い幻覚をキメる必要がありそう。

~妄想のコーナー~

・吉田兄弟について
グラバーエアプ芸人なので未来でのふたりの平常時の関係性は知りようがないが、少なくとも息のあった良いコンビだったのでは?
ふたりともマッドサイエンティストで天才肌なので、お互いにお互いの良き理解者だったとは思う。
特に友達のいない(ヘッドキャノン)ベルリネッタにとって弟は、話ができる数少ない同世代の人間だったのでは。

・ベルリネッタの長子コンプレックスと江戸時代での目的について
現地人と接触してはいけないとはいえ、常にムッとした顔をして他人との一切のコミュニケーションを拒絶するようなところがあるベルリネッタ(怒ったムーミンに似ている)。
江戸時代へ逃亡する際も、江戸時代で弟に対して攻撃する際も、そこに至った感情や過程を弟本人には一切説明しない。
チンピラに弟を攻撃するように依頼する際も、説得を早々に諦めてお金を使っている。
おそらく、コミュ障。
テスタロッサと違ってかわいげでどうにかなった経験に乏しい為、対価なしに自分を慮ってくれる人間の存在を信用していない。
弟にタイムマシンの手柄を横取りされたと思ったのに自分からメディアに出て弁明しないのは、「弟と違って自分の話には誰も耳を貸さない」と思っているからなのでは。
弟が生まれた瞬間に「世界で二番目に大切な存在」となってしまったことに対するコンプレックスがありそうな気がする。

自分が何かやり遂げたとして、弟がそれをできなかったとして、周囲の人間が手を差し伸べるのは弟で、自分はお兄ちゃんなので「できて当然」。年上の子が少し何かできたところで、大人にとっては特別面白くもない。
例えば兄弟で紙飛行機を折っていたとして、ベルリネッタがどれだけ遠くまで飛べるものを作ったとしても、それを見たテスタロッサが「できない」とかんしゃくを起こせば、周囲の人間が弟にラジコンを貸してやり、自分の手元にはよく飛ぶ紙飛行機だけが残される、というような経験を繰り返して来たのではないか。(後、里帰りする時に「テスタロッサも来るよ」と言った時に明らかに明るくなる親戚の顔とか、「求められているのは自分ではなく弟」を経験的に刷り込まれている気が。)
いくら真面目にコツコツ優れたものを作ったとしても、それを上手く伝えたり、人を惹きつけることができなければ何の意味もない。
ただでさえ天才肌で神経質なベルリネッタにはそれがどうしても難しかったのではないか。
幼く、取るに足らないコンプレックスでも、本人にとってはかなり深刻で耐え難いことで、タイムマシンの実質的な開発者が「吉田テスタロッサ」になってしまった日にそれが爆発したのでは?
この時点での弟に対する失望と怒りの向こうには、自分を認めない世間と、それを解っているのに"上手いことできない"自分への絶望があり、自分のものを自分で終わらせて(=データを売り払う)、この世から消える(=江戸時代に飛ぶ)という行動に出たのでは。
テスタロッサが実質的な開発者となってしまったことも悔しいけど、もっと根本的には、自分の存在を顧みない世間に弟が迎合したことと、それを赦せない自分自身に耐えられなかったのでは。

江戸時代のベルリネッタは金塊を持ち歩き、凶悪な発明品を持参してはいたものの、悪巧みをしていた訳ではないと思う。
弟に復讐するなら弟が生まれた日の新生児室に飛んで、文字通り赤子の手を捻れば良いだけなので。
中の人のパンフの回答「人を楽しませるものを作りたい」を採用して良いなら、コンプレックスから離れて時代に影響しない程度の発明をして、人を喜ばせたかったんじゃないかな…。

・ベルリネッタの感情の変遷の急さと、テスタロッサの真の目的について(強めの幻覚)
チンピラが持っていたパーツによって、弟が江戸時代まで自分を追いかけてきたことを知るベルリネッタ。
その際、かなり早いペースで、驚き→絶望/悲しみ→怒り(弟をとっちめるようにチンピラに依頼)と感情が変化する。
日本刀を持ったチンピラにボコることを依頼するほどの怒りがこんな短時間で出て来る?と違和感があったのですが。

1. 江戸に飛んでしまったベルリネッタは、未来においては兄弟(ひいては兄弟が所属している会社?)の大発明の機密を売り渡した犯罪者である。
=通報されれば当然何らかの処罰の対象にはなる。

2. 機密を売り渡す前のベルリネッタを止めることができれば、彼は犯罪者にはならず、江戸にも飛ばない。

3. にも関わらず、弟が直々に江戸時代のベルリネッタを
追いかけて来たということは、弟はベルリネッタの凶行を"無かったこと"にせず、未来へ連れ帰って法的な裁きを受けさせる気である(=機密を振り払ったことを恨んでおり、赦さない)。

と考えたとすると、それはとても悲しいしムカつくし、退路を断たれたような気分になるだろうな、と。
これまで兄弟コンプレックスを抱えつつ上手いこと吉田兄弟をやって来られたのは、人付き合いが苦手なベルリネッタの唯一の理解者がテスタロッサだったから。
味方だと思っていた肉親が、自分を軽んじて来た"世間"と一緒になって自分を罰しに来たのだ、と思うと、それは窮鼠猫噛状態にもなりますね。
加えて、経緯はどうあれ、説明もなしに最初にテスタロッサを裏切ったのは自分であるということも内心解っている訳ですから。

一方のテスタロッサは冒頭で、「ある男を江戸時代から未来へ連れ戻せという"指令"を受けた」と話しています。
科学者であるテスタロッサに"命じる"立場の人間といえば、出資者か、経営者か、いずれにしてもベルリネッタの味方ではなさそうです。
強火の妄想が過ぎるとは思いますが、テスタロッサが受けた本来の指令とは、「"情報を売り渡す前の"ベルリネッタを、いかなる手段を使ってでも止めろ」というものだったのでは?
そもそも、“指令”を出すような人間にとって、情報が第三者に渡ってしまった後の世界にベルリネッタを連れ戻すことに意味があるとは思えないので。

テスタロッサは、最初は指令通りに兄が情報を売り渡す直前に飛んだものの、想像以上に思い詰めている兄の様子を見て、"なかったこと"にしても無駄だ、と思い直したのでは?
テスタロッサが人に好かれるのは、何かができなくても、失敗をしても、それを隠さずに開示して、人に助けを求めるからです。
ベルリネッタは「しっかりした兄」という立場からそれができず、失敗=失望や断絶を呼ぶと解釈してしまうので、ますます独りよがりに、孤独になっていきます。
(参考:「助けがないと何もできない〈弱いロボット〉が教えてくれた、いま私たちに足りないこと)

テスタロッサは、江戸時代の兄を迎えに行って未来で一緒に謝ることで、失敗した兄でもちゃんと認められる、少なくとも自分は認めているということを証明したかったんじゃないでしょうか。
また、もしそれで赦されなかったとしたら、「そんな世間に居る必要はない」とまた一緒に時間旅行に出かけるのではないでしょうか。
ラストシーンで白亜紀かジュラ紀に飛んだのは、もしかしたらベルリネッタが恐竜が好きだったからなのかもしれません。

この、「不完全さ/弱さを受け入れることができる強さ」が「強いままでいなければいけない弱さ」を抱擁する構図がサイコーなのです。もはや宗教画。
初演だと、アンビリーバーズのふたりのパートで、”ふっと顔を上げるベルリネッタを笑顔で見つめるテスタロッサ“という場面があったらしく、本当にありがとうございます。

ベルリネッタ、踊りも佇まいも全てがかっこいいんですが、表情や行動を見ていると常にどこか虚で途方に暮れていて、迷っているようです(幻覚かも)。
加害行為にしてもパニックになってその辺の物を手当たり次第蹴っ飛ばしながら走り回る牛のようなもので、形だけ笑ってはいても明らかに楽しそうではない。
ベルリネッタは、自分がしでかした初めての“取り返しのつかないやらかし”に、めちゃくちゃビビっているだけなのかもしれません。
強いのに、弱い。
強さを肯定したり、力の使い方を選ぶための理屈が見つからない。
仮にどう使ったとしても誰も認めてくれない(と思い込んでいる)ので。

そこに普通の兄弟喧嘩のノリでメロイックサインを突きつけられるのは、やっぱりやらかし慣れてるテスタロッサだけなのではないでしょうか。
テスタロッサ⇨ベルリネッタの心情はあまり描写されていないのですが、「ナイーブで面倒臭いしいつも小言ばっか言ってくるけど頭がよくて何でもできる兄貴」ぐらいのもので、機密を売られたとしても、「家族をやめる」とか、「知らない場所で死んだとしても関係ない」
とはならなかったのでは。
「ベルリネッタを認めない」という選択肢が最初から存在していないので、あんなことがあった後も「もう、帰るよ!」程度のノリで手を差し伸べることができるのでは?と思います。「これまで完璧すぎて、この程度のやらかしにアレルギーを起こしてるんだなあ」ぐらいのノリで。
弱さと不完全さを自覚して、それでも前を向こうとする強さがある。
物心ついた時から能力的に敵わない良くできた兄の下で、”できない存在“として、できるようになる為に踠いて来たので、「できないけど、何十分の一だったとしても、いつかできるようになる」と思わなければやっていけない。
できないテスタロッサには常に「いつか」という未来への希望が残されている。
理想や希望を捨てない奴が1番つえーので、ベルリネッタはテスタロッサに敵わない。
でも、そのテスタロッサの強さの源は、「良くも悪くも模範となってきた2歳年上の兄」なのです。
ウロボロスかな?

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