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通訳論

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手話通訳の仕事内容や、仕事をする上で大切にしている思いについて述べた記事集です。
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#相互理解

失われそうなコミュニケーションが復活するとき

 「“ありがとう” をやりがいに仕事をしている。」 そんな方もいるかもしれません。 でも、私はそれとは違う“やりがい”を見つけたいと思っています。 通訳の現実 私の仕事は手話通訳ですが、聴者の世界と当然同じく、ろう者にも色々な方がいます。 家族に暴力を振るう人もいれば、公的機関に当たり散らす人、犯罪を犯して取り調べを受ける人もいれば、金銭問題で訴訟を起こされる人もいます。  彼らが皆、私たち手話通訳に感謝する訳ではありません。 そんなアウトレイジな人でなくとも、私の気持ち

通訳って誰のため?

 私たち手話通訳者は依頼者からよく言われます。 「ろう者のために手話通訳を付けることにしました!」 私はいつもこの言葉に違和感をおぼえています。 通訳の目的を考える ろう者の世界も当然いろいろな人がいます。 生活の怒りを通訳の派遣事務所にぶつける方もいて、職員に手を上げ警察沙汰になったことも。 警察と通訳  警察は職務遂行のために通訳をつける義務があります。 都道府県域の派遣センターと連携する決まりになっていて、予算も取ってあるのです。  更に私のような一介の地域通訳

事例から「相手の視点に立つ」を考える

 相手の側からものごとを見る。そうは言っても何をどうすればいいのか…。  100%は無理ですが、それでも思いを馳せることが良いコミュニケーションに繋がると信じています。 この記事では私が仕事の中で実践している事例をご紹介します。 『「相手の視点に立つ」一緒に考えてみませんか?』の第二弾です。 “日本語が第二言語の人” からのFAX 私は手話通訳者です。 今回も、手話が第一言語のろう者が日本語で書いたFAXを読み解きます。日本語は第二言語なので私たちとは違う表現をします。言