チタン U-NEXT

以前舞踏のワークショップで、「既成概念を崩す」というワークをした。
即ち、人間はこうあるもの、身体はこう使うもの、といった当たり前にわかっているようなことを、「もし知らなかったらどうするか」と問うことだ。

冒頭からアレクシアは自動車への愛着を見せる。そこに説明は無い。
そして自らが愛する自動車と一体になる。

愛や衝動にはその発生の原因があると思ってしまうが、実は明確な理由などないのではないか。
説明無しに淡々と描かれるアレクシアの妊娠には、人間とは人間を愛し人間を生む、という概念を打ち崩す力がある。

何故チタンなのか。チタンは航空宇宙、自動車、火力・原子力発電、石油・化学工業、医療・福祉などに利用されている。もはやそれ無くしては生きて行けないほどに人間の生活に浸透している。

一方、アレクシアを息子として引き取る父親にとっては、息子こそ無くてはならない存在だ。
彼にとって本物かどうかは関係無くなっている。
彼らの関係性は、親子とは血のつながった存在であるということや性別や年齢という概念をもぶち壊してしまう。

生きていくということ。そしてそのために何が必要かということ。
ますます複雑になっていく社会で、私たちは今までの概念をぶち壊していく必要があるのではないだろうか。

常識が壊れて行くカオスを見せられた時、そこに不思議な魅力を感じている自分に気づく。
私たちの中にある、未知の未来への欲動が、小さな疼きとなって見るものを駆り立てて行くのではないだろうか。

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