2019年春夏の中国新聞十大流行語から振り返る2019年中国

もう2019年も年の瀬なのだけど、春夏の中国新聞の10大流行語を見つけたので備忘録として書いておきます。
中国は政府による強力な推進力で、社会が猛スピードで変わっていると改めて感じた2019年。振り返りメモも添えて。
※中国語訳が変だったり、事実と異なっていたらご指摘ください。

2019年春夏中国主流新聞十大流行語とは
国家語言資源モニタリング・研究センター(http://cnlr.blcu.edu.cn/)が「2019年春夏中国主流新聞流行語」を発表。今回発表された流行語は総合、国内時政関連、国際時政関連、経済、科学技術、文化体育娯楽、社会生活、民生の8つのテーマ。
「2019年春夏中国主流新聞十大流行語」は北京語言大学のコーパス(言語学において自然言語処理の研究に用いるため、自然言語の文章を構造化し大規模に集積したもの)に基づき作成されたもの。
中国国内16の新聞の2019年1月1日から6月30日までのすべてのテキストをもとに集計。16の新聞は中国国内の重要な政府機関紙、地方都市新聞と発行量の大きい夕刊。中国の主流メディアの言語特徴と変化の徴候を表しています。
16の新聞:
北京青年報、北京日報、北京晩報、法制日報、光明日報、華西都市報、今晩報、南方都市報、齊魯晩報、銭江晩報、人民日報、深セン特区報、新京報、新民晩報、羊城晩報、中国青年報。

1.総合

中華人民共和国成立70周年、アジア文明対話大会、中米経済貿易協議、五四運動100周年、中華人民共和国外商投資法、ゴミ分類、月背軟着陸、5 G商用ライセンス、学習強国、携帯番号転載網。

中華人民共和国成立70周年
今年は本当に70周年記念イベントが多かった。私の中で印象深いのは国慶節(国の設立記念のお休み、10月頭から7日間ほどの大型連休)の記念式典、数多くの芸術展。あと国慶節前後の過去最大のVPN規制。
国内外に対してのアピールの場ともあって、FF7のパレード?と思うくらい70周年は気合いの入った壮大な軍事パレードで、映像をみるだけでも今の中国がアピールしたいこと、できることがたくさん情報として詰まってるので気になる方はyoutubeで見てみてほしい。https://youtu.be/hcv77XMjWiE
建国70年の歴史を題材にした「我和我的祖国」という中国の愛国歌と同じ名前の映画も上映されました。主題歌はFF8でおなじみのフェイ・ウォン。https://youtu.be/qOHaJeVu5NE 

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1949年10月1日に北京で行われた中華人民共和国の成立を宣言した式典・開国大典で国旗がスムーズに掲揚されるよう、その背後で夜も眠らずに、一分一秒を争って必死に作業した人々、1964年に実験に成功した中国初の核兵器を研究開発し、自分の青春、恋愛を犠牲にして国防テクノロジー事業のために自分の身を捧げてきた大勢の英雄たち、1997年に、1分1秒も遅れずに香港地区が中国に返還されるように努力奮闘した外交官、国旗を掲揚する人、香港地区の警察、庶民たち、2008年に開催された北京五輪開催中、はるばる北京にやって来た四川大地震で両親を失った子供に、貴重な五輪開幕式のチケットをプレゼントした北京のタクシードライバーなど、人々の心から決して消えることのない感動のシーンが次々に描かれ、感動の一作となっている。
引用元:http://j.people.com.cn/n3/2019/0927/c206603-9618786.html

内容は愛国と国威で、70周年なのでこの映画に限らず特別愛国教育に力を入れたと習近平国家主席自体発言している力の入れぶりの2019年国慶節。(※毎年中国ではこの国慶節時期になると国関連の映画を上映しているようです。最初に中国来た時は驚きました。)
また芸術展では、「国」をテーマにしたものも多く、中国人アーティストの書道家や中国の童話(逸話?)をテーマにした作品や戦争関連なども多く展示された印象。映画は見ていないので内容はさておき、このようにいろんな側面から国内外に国のことをアピールするのはとてもいいなと思った。
一方外国人という側面では、国慶節前後でVPNがかつてないほど規制され、Twitterでは中国関連の方々がどのVPNが死んだか毎日つぶやいてて面白かったです。

ゴミ分類
習近平国家主席が「ゴミ分別は社会文明レベルを体現する」と指示を出す重要政策で、上海を皮切りに日本より厳しいゴミ分別開始。
「とはいえ今まで通り適当に捨てるでしょ?街中至る所にゴミ箱あるし。誰も見てない夜中とかにも捨てられるのでは?」と思っていたのですが、6月中旬になると街中から一斉にゴミ箱が撤去され、マンションなどのゴミ捨て場も整備され始めました。それもそのはず、個人最高200元(約3300円)の罰金、企業最高5万元(約82万円)の罰金、収集・処理業者の違反にも厳しい罰則を設けられていたから。やるといったからには必ずやる中国の本気を感じた。ちなみに日本より厳しいといったのは分別の難しさ。

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上から「リサイクルゴミ」「有害ゴミ」「湿ったゴミ」「乾いたゴミ」。
鶏肉の骨は生ゴミ、豚肉の骨は乾燥ゴミ。紙袋はリサイクルゴミと何を基準に判断すればいいのかわからず、ビニールや紙袋に生ゴミを入れてゴミ捨て場に行き、ゴミ捨て場にいる人の指示に従い、だいたいの中身は生ゴミの箱に入れ、袋は乾燥ゴミ(紙袋の場合は濡れていなければリサイクルゴミ)に入れる。豚が食べるものは「湿ったゴミ」などとまことしやかにSNSで拡散されるほどゴミトピックに上海住民は困惑した。最大手ECタオバオでは画像をスキャンすると何ゴミか教えてくれる機能がついたり、Wechatのミニプログラムでは何ゴミか当てるクイズが出たり、ゴミ分別することでお金を得る人が出たりと一大社会トピックとなった。
その影響はデリバリーとホテルにも。中国はUberEatsのようなデリバリーがめちゃくちゃ盛んなのですが、飲食業者が使い捨ての箸や食器を積極的に提供してはいけないとしており同様に罰則が設けられたため、現在は利用者が申請しないことには付帯しなくなった。
さらに、ごみを少しでも増やさないようにするために、利用者による注文時の細かいリクエストが殺到。そのリクエストが細かすぎて飲食店がおおいにに困惑することになった。例えばフルーツが入ったドリンクなど注文の際に「フルーツの皮が湿ったゴミになってしまうので、皮は外してバラバラにしていれてほしい」、串焼きを頼めば「串から全部外して、骨も外してほしい」など様々。
旅行宿泊業に対しても、使い捨ての日用品について提供を控えることが求められ、上海のホテルは6品(歯ブラシ、くし、ボディータオル、かみそり、爪やすり、靴磨き用の布)の使い捨て系アメニティを提供しないようになっている。上海のホテルに宿泊する際はご注意を。

5 G商用ライセンス
商用ライセンスどころか、2019年11月時点ですでに個人用が出ている。
私が契約している中国移動というキャリアでは、月額128元(約2000円)~のプランが出ている。日本だと2020年春ごろから開始とのこと。
こういった些細なところからも中国ってデジタル本当に力入れてるんだなと感じる。家の5キロ圏内を見てるとカバー率は90%強といった感じ。

2.国内時政関連

末端のマイナス軽減年(基层减负年)、「好評価」制度、深圳建市40周年、特赦令、チベット民主改革60周年、「台湾同胞に告ぐ書(告台湾同胞书)」の発表40周年、工業インターネット、两不愁三保障、健康中国戦略、自我革

「好評価」制度
中国にはいたるところに評価ボタンがある。デリバリー、入国時のシステム、ネットショッピングの商品配達員、本当にどんなところにも評価制度がある。デリバリーのお兄さんたちは雨等で遅れてもユーザーの評価一つでかなり評価や賃金が左右されるため、「遅延分個人のお金で払うから悪い評価付けないで」といわれることはままある。タクシー降りるときには「5つ星評価ちょうだいね」とお決まりのフレーズ。そんな評価制度が行政にももっと導入されるということだった。すでに結構あると思うけど、これ以上追加するのか。。。という印象。

自我革命

自己革命に勇敢であることは、マルクス主義政党の本質的属性である。中国共産党はマルクス主義政党として成立した日から、マルクス主義政党の立党原則に従い、積極的に党の自己革命をもって社会革命を推し進め、自発的に党の綱領、理論と路線方針政策で中国社会の発展を牽引してきた。

これもすごく70周年関連のスピーチだなぁと思いました。なかなかこういったスピーチを日常で聞くというのは、日本で暮らしていた私にとって新鮮なことです。

3.国際時政関連

パリ聖母院大火、中朝友情、ボーイング737 MAX、米フェデックス、米ロ「解約」、新時代中ロの全面戦略提携パートナーシップ、谅解备忘录、テレサ・メイ辞任、日韓レーダー照射、「工笔画」。

4.経済

ファーウェイ、グローバル化4.0、コーエー上場、第五套人民币、上海倫通(沪伦通)、暗号化貨幣、六税二費、夜間経済、限界圧力、FRBの利下げ。

第五套人民币
人民元が新しくなった(らしい)。普段キャッシュレス社会なので全然お目にかからない。見るまで知らなかった。
https://baike.baidu.com/item/2019%E5%B9%B4%E7%89%88%E7%AC%AC%E4%BA%94%E5%A5%97%E4%BA%BA%E6%B0%91%E5%B8%81

暗号化通貨
2017年に仮想通過は禁止されたが、ブロックチェーンはかなりの盛り上がりを見せている中国。5月のイベントの際に代表がブロックチェーンを人工知能(AI)、量子コンピューター、モバイル通信、IoTと並ぶ次世代技術の代表と位置付ける、ブロックチェーン技術で世界のトップを走る、と発言をしたのがきっかけ。
さらにこのあとの2019年10月に「中華人民共和国暗号法」が発表され、2020年1月1日に施行される。暗号産業の発展を目的に、暗号の定義や事業者のルール、違反行為に対する罰則などを定めたもので、本当にこのスピード感がすごい国だと改めて思う。

5.科学技術

于敏、ブラックホール写真、京張高速鉄道、海上発射、青蒿素抗药性、「カササギ」エンジン、新舟700機、極目一号、王中林、瀘定大渡河大橋。

6.文化体育娯楽

「流浪地球」、奋斗是青春最亮丽的底色、贝聿铭、二万計画、中国女子バスケットボールの優勝、ロシアの大学入試に中国語の導入、上元、绿书签行动、「飛人」の蘇炳添、李宗偉の退役。

流浪地球
興行収入46億元(約720億円)超え、中国映画市場で歴代2位の映画。日本人には「三体」の原作者、劉慈欣原作作品といった方がなじみ深いかもしれない。海外配信はNetflix独占配信となっている。さすが

奋斗是青春最亮丽的底色

奮闘は青春の最も明るい(輝かしい)ベース色だ。
五四運動以来の100年は中国の青年世代が絶えず奮闘し続け、凱歌前進の100年である。
100年来、中国の青年は祖国と人民に対する赤子の心を持ち、積極的に党指導の革命、建設、改革の偉大な事業に身を投じ、人民のために戦い、祖国のために献身し、幸せな生活のために奮闘してきた。

直訳なのでちょっと変かもしれませんが、これも五四運動100周年ということで、スピーチした冒頭の部分の言葉ですね。
本当に代表のスピーチが良くニュースになっているな、と振り返ってみてもわかりますね。

7.社会生活

996、百日行動、夸夸群、泣き言の権利擁護(哭诉维权)、長寧地震、新職業、逆春運、短乗長、ネット予約看護師、付き添い式ニート(陪伴式啃老)。

996
「朝9時から夜9時まで、週に6日間働く」の意味で、つまり1日12時間労働、休みは週1日、日曜日だけという勤務状況を指す。
事の発端は2019年3月。Github上に匿名で「996.ICU」と名付けられたプロジェクトが立ち上がり、中国のエンジニアたちが残業実態を投稿し、ブラック企業とホワイト企業のランク付けを行った。996は先述の通り、ICUは集中治療室の意味を指す。
ブラックリストの中にはアリババグループ、百度、ファーウェイ、シャオミ、京東(JD) 、アントフィナンシャル、テンセントといった中国を代表する企業が並び、一方ホワイトリストにはGoogle、IBM、インテル、マイクロソフトといった外国企業の名前が多かった。
この騒動はココだけではとどまらず、ジャックマーが996を肯定する発言をしたり、京東代表がそれにコメントしたりなど、各社の代表がコメントを個人的に出して大きく炎上した。ちなみに残業問題は日本より法で厳しく整備されているが、アリババ等ブラックリストの会社は、少なくとも周りの知り合いたちは本当に996状態である。

付き添い式ニート(陪伴式啃老)
中国のネット用語「啃老」。ニートの意味です。
表面上は老人(親)の身の回りの世話などをするような態度をとるが、実際には衣食住すべて老人に頼り、なけなしのお金を搾取する人のこと。従来のニートと比べ、「たくさん家に顔を見せに帰ろう」などと美化するらしい。
中国の人気ドラマ《都挺好》から派生したといわれている。

8.民生問題

乳幼児のケアサービス、廃棄物のない都市、全国の運営、地名の規範化、仿制药目录、候补购票、郵便税の引き下げ、南沙大橋、接诉即办、小院議事堂。

以上、2019年春夏の中国新聞十大流行語でした。結構知らない言葉が多かったので、2020年はもっと中国ニュース見ようと思いました。