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ユービーエム倒産からの立て直し ”ククンの走れメロス”



土地から新築したRCの物件で、建築会社ユービーエム(UBM)の倒産の被害者となったククンです。



どうやって短期間でUBM物件の立て直しをして完了検査を受けたのか、またどうやって早期に満室にしたか、また破産管財人との清算はどうしたのか?などTwitterでは書けないこともたくさんあり、今回の経緯をNoteにまとめることにしました。 

  

被害者となった1月31日、建築会社倒産の立て直しなどの記事をネットで必死に探しましたが、建物の早期保全以外には、参考になるような記事は見つけられませんでした。

  

 このNoteはまさに、1月31日に自分が読みたかった内容をまとめたものです。このNoteが建築会社の倒産や、施工会社が使っている下請け施工会社の倒産など、倒産はしていないが大幅遅延のケースなどの参考になれば幸いです。

  

またこれから新築する方が気を付けるべき点についても、今回の倒産から学んだことをまとめました。倒産は債務者(建築の方が先に進んでいて、支払いが残っているケース)と、債権者(建築よりも先に、支払いが過払いになっているケース)の2つがありますが、どちらのケースも立て直しは必要であり、初動がとても大切です。

  

倒産といってもいろいろなケースがありますので、今回のNoteはあくまでの1つのケースとして参考程度に読んでいただければと思います。  

  

<目次>


1.       建築会社選定 

2.       建築の途中経過 、危険な兆し

3.       倒産 

4.       初動 

5.       完了検査までの道のり 

6.       満室までの道のり 

7.       倒産の原因 

8.       清算完了までの道のり 

9.       倒産時の対応について

10.   今回の立て直しを振り返って

11.   Lessons learned - 今後の新築で気を付けるべき事とは?

 

 飛び込みで入った藤沢の仲介会社から、2021年8月に商業地域でRC用のJRの駅チカの土地の紹介があり、購入を決意しました。

 

 

2021年11月にUBMと建築請負契約締結、2022年5月中旬に建築確認がおりマンションを建築することになりました。竣工は2023年2月末、繁忙期にちょうど竣工というベストなスケジュールで建築が始まりました。

 

  しかし1月31日(火)大変な事が起こるのです。

  

【登場人物】 (全て仮称)

 

①        ククン:都内を中心に4棟の新築を所有する投資家。 1棟目は建て替えの新築木造AP。2棟目は建売新築木造AP。3棟目、4棟目は土地から新築。今回4棟目で初めてのRCに挑戦したところ、建築会社が倒産し、自ら現場監督となり立て直しをすることに。土地から新築とリーシングの工夫が大好きな大家。Twitterはククン@東京不動産投資(@kukun_tokyo1)

 

②        投資家の栗山さん:UBMの倒産の情報をいち早く教えてくれた、横浜の投資家さん

 

③        知り合いのわん1級建築士:3棟目も見学してもらい、この土地を購入する際にボリュームを入れてもらった、土地から新築に詳しい1級建築士

 

④        同じUBMで建築中だった佐藤さん:同じUBMで建築中だった、比較的物件住所が近い施主さん

  

⑤        同じUBMで建築中だった佐藤さんの建築士の高橋先生:完了検査に立ち合って下さった高橋先生。佐藤さんの物件を設計した1級建築士

 

 ⑥        弁護士の田村先生:土地から新築案件に詳しい、仕事の早い弁護士

 

⑦        新しい施工会社:倒産した物件を立て直した、稀有な経験のある施工会社

 

⑧        申請機関会社の鈴木部長:何度も足を運んだ申請機関会社の審査課の部長。やさしいお爺さん。

  

⑨        同じUBMで建築中だった佐藤さんの電気屋の広瀬さん:運命の電話を佐藤さんにしてくれた広瀬さん。最後には照度測定もしてくれた、親切な電気屋さん

  

⑩        同じUBMで建築中だった佐藤さんの設備屋の唐沢さん:佐藤さんの物件の設備、鉄筋を担当。コンクリート強度試験の結果が必要なことを、いち早く教えてくれた親切な業者さん、最後には風量測定をしてくれた、神様のような設備屋さん

  

⑪        下請け業者 曙社: 多くの下請け業者間をまとめてくれたククンの物件の設備、電気、左官、内装、外構業者

  

【完了検査、清算までの道のり】

 

1/31 UBM破産第1報

2/1 弁護士との契約

2/4 下請け業者が判明 残工事の依頼

2/6 新しい施工会社が見つかる

2/8 完了検査の予約

2/8    UBM破産決定

2/15   破産管財人の現場確認と、建築関連書類の入手

2/20   配筋と軸組の写真の入手

2/22   消防検査

2/23 募集再開

2/28 完了検査

3/10 竣工

3/19 第一号賃料発生

3/25 満室

4/19    清算に関する裁判所の許可

5/31 清算金の支払い

 

  

1.建築会社選定 


  

土地は、相続コンサルが持っている業者の土地でまだ販売されていなかったことから、土地の契約までには時間があった。そのため発注前にいろいろな建築会社に見積もりを取っていた。

 

 

しかし融資先の銀行が融資の了解を出した建築会社はUBMの 1社のみ。UBMよりも見積りの安かった建築会社へは、銀行の了解が出なかった。

 

 

知り合いにUBMの帝国データバンクの点数とデータを見てもらい財務内容を確認してもらう。帝国データバンクのUBMの点数は、売上も経常利益も順調に伸びており、55点で優良企業であるとの回答を得た。資本構成は低めの点数だったが、資金現況(売掛金の回収や手元資金など)は問題ない点数だったいう。

 

 

施工事例も多く、融資先の銀行でも融資の実績が複数あり、建築会社として問題ないとの回答だったので、土地決済と同時に請負契約を締結。

 

 

しかし、銀行が問題ないと判断した会社が倒産するのだから、今回の件で銀行の信用調査はあてにしてはいけないと思った。 

 

 

投資家仲間の建物の中でも、「UBMは金額は高めだが、UBMは安全だと思われていた会社」の1つであった。またクオリティも「比較的良い」とされている会社だったが、現場監督となり建物を見てみると、クオリティや、施工会社としてのマネジメントに?という部分があったことは確かである。 

 

 

倒産してから調べてみると、UBMは「自己資本比率が2%」とかなり他の建築会社より低く、もっと財務情報を調べるべきであった。

 

 

 2. 建築の途中経過 、危険な兆し

 

 

5月25日に建築確認済証が出て、建築が始まった。地盤改良では水は少し出たが、天候も良く近隣のクレームも無かったことから、建築確認申請の2週間ほどの遅れを途中で巻き直し、2023年1月までは工程表よりも少し早めに建築が進んでいることは、ラッキーだった。

 

 

UBMは投資家仲間でも工期が遅れないことで有名な会社で、実際1月に引き渡し日を決めた際には、当初の予定の2月末より、2週間ほど早い2/17(金)が引き渡し日と設定されていた。1月中旬には表題登記も依頼済で、引き渡しの1か月前には、「引き渡し時の4回目の最後の請求書」がUBMから届いていた。

 

 

2022年11月14日に予定通り上棟。上棟後の3回目の支払いは、12月9日(金)予定だったが、この時、今から思えば少しおかしなことがあった。

 

 

12月9日の支払い日の前日に、UBMの担当者から、経理に言われたのか、「ククンさんお金が入金されていません。どうなっていますか?」という電話があった。支払いは明日ですよと連絡すると、「そうでしたか。すいませんでした」とちょっと焦っているような様子が伺えた。

 

 

いままで一度も支払い日の前倒し依頼などはなく、支払い期限はいつも、(中間検査後などが)完了した月の月末で構わないと言っていたので、資金繰りには余裕があるのだと思っていた。

 

 

上棟時のみ、12月末支払いではなく12月9日にして欲しいということだったので、年末ということもあり、早めに入金して欲しいのだと勝手に思っていた。今から思えばUBMの資金繰りは、その頃から火の車だったのかもしれない。 そういえば、それまで季節の贈り物はきっちり早めに頂いていたが、最後のお歳暮だけは年末の暮れに届き、少し違和感を感じた。

 

 

3. 倒産

 

 

1/31(水)

 

 

怪しい情報

1/28(土)大家の会で知り合いの投資家の栗山さんから、「UBMがちょっと危ないかもしれない」という話を聞く。あと竣工まで20日ほどだから、うちは大丈夫だと聞き流し家族にも言わなかった。

 

 

LINEでの第1報

1/31(火)、同じ投資家の栗山さんから、18:53にLINE。「UBMが倒産した」と信頼できる友人から聞いたという。家族にもすぐ伝える。確かにUBMの誰にも携帯電話が通じない。30日からメールも無い。おかしい。栗山さんの話では、30日社員全員が会社に呼ばれ、携帯とPCを取り上げられたという。

 

 

あと竣工まで17日というところで倒産?すでにTwitterでも倒産のニュースが出ているからこれは確実に違いない。倒産時は、倒産した会社からは連絡が無いのが普通だから、こうやって知人かSNSで情報を取るより仕方がないんだと気付く。栗山さんからの連絡が無ければ、Yahooニュースを見るまで分からなかった。

 

 

落ちついて、落ち着いてと言い聞かせるが、心臓がドキドキする。もしこのまま、完了検査などを通すことができなければ、この建物は死にビルになってしまう。

 

 

そうなると、建物を取り壊し、更地に戻し土地として売却するなど、最悪のケースも考える。しかし解体費用も莫大で、購入した金額と同じ金額で売却したとしても、それまでの建築費を銀行に返済しなければならない。これまで建築したアパート3棟全部と、自宅を売ることも覚悟した。 

<Twitterでの倒産のニュース>

 https://twitter.com/tenku_ooya/status/1620338784897466368


 4.  初動



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