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ほくたんネットプリントVOL.1について

選と、感想を少し。

スティックシュガーのような雨降る水底に口を淀めた語彙のじゃりじゃり
跪くムーヴで布団に吸いこまれ王は何処におわしますかな
/辻村陽翔「淀みのために」
一首目、水底に「すいてい」のルビ。なめらか、やわらかな景だがずっと韻律が引っ掛かるように作られていて不思議だ。出来事としての雨のスケールにしてはスティックシュガーは細すぎるし、雨の一線を形容するにはボリューミー。スティックシュガーのフォルムがよく強調されていていいと思った。

免許証裏に遮二無二まるつけるアジの開きのように死にたい
/涼木和貴「To be continued」
ことばの調子だけで一首つくってしまう、つくれてしまう作者で、自己紹介にある「おもしろい短歌」の内実はそこから類推することになる(何も言っていないなあ、と)。三句目までまったく実感がこもっていないのが、面白く読めると思った。

海のないところに生まれて海の家には海が暮らしてる気がする
/衣井くう「さみしいプール」
「海の家」の指すところがぶれにぶれる。言い回しの既視感に寄り添うとかき氷やビールを出してくれる海水浴場の飲食店だが、海が住んでいるはずの家には海がきっと住んでいるという、一見したトートロジーだと読みたくなる。夢の実感っぽい。





・4

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