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酒と原始人類

こんにちは。
薬膳師のクコの花です。

お酒と人類について少しだけ書いてみようかと思います。

薬膳の起源

人類は記述によると、「茹毛飲血」と呼ばれる時代がありました。これはまだ火という文明を持たず、毛がついたままの獣肉を食べ、血をすすっていた時代です。

生存するために食物を食べているうちに、これを食べたらお腹がはってしまったとかこれを食べたらだるいのが改善したなど、食べることによってさまざまな不調を改善できることを偶然発見しました。この偶然の発見の積み重ねで食べることで治療するということが行われるようになりました。


しかし火を使わず生ものが中心だったこの時代は雑多の病にかかることが多く、寿命も短いものでした。

火の発見によって、人類の食生活は大きく変化し、それに伴い病気も減っていったのです。

薬膳を学ぶ人ならだれもが知っている「神農本草経」。これは人類最古の薬草書と言われていて、神農さまが中国全土の薬草を試食して歩きまとめたものと言われています。茹毛飲血の時代から長い時間をかけ神農さまに至る頃には「薬食同源」の薬膳食療の基礎ができたと言われています。


酒と薬膳

早期の薬膳をみてみると、酒と薬膳ははじめから強い結びつきがあったことがわかります。

中医理論、薬膳理論の最古の本と言われている「黄帝内経」を見ると、酒は飲料であり、病気を治す薬品でもあるというようなことを示す例が記述されています。

古代の文字の解説書によると古代の醫(医)と言う字は「酒、所以治病也」「医之性、然得酒而使」と書かれています。これはお酒というものは病を治すものであるから、当然医は酒を治療に使うのであるというようなことで、当初から酒と医療が結びついていたことがわかります。醫と言う字をよく見ると、医と言う字と酒と言う字が含まれていることがわかりますよね。

このように酒は飲食物でもあり、薬品でもあるという考えが古くからあって、薬膳の一部門として酒という分野は大きな役割を果たしてきました。

その片鱗が感じられるのが、あるメーカーさんが発売されている薬用〇〇酒です。これはこの薬酒をもとに現代の日本人に合うように作られたものなのです。現代にこのような形で薬酒が息づいているのは薬膳師としてはうれしい限りです。

酒は飲んでも飲まれるな

最後に、酒は身体によい食品であると同時に毒でもあります。食品としての性質は激しく、良いものであればあるだけ、毒性も強くなります。
依存性が高く、度を越えた飲料を続けていると依存症になりかねません。

厚生労働省で示されている一日の適量は日本酒1合とされています。
過去の中国の記録ではおちょこ一杯分が適量との記述のあるものもあります。中国のお酒と日本酒ではアルコール含有量が違うので一概には言えませんが、皆さんが思っている以上に控えめに飲むのが身体にもココロにも美味しい飲み方であるのは間違いないようです。

おまけ

現在「薬膳酒」という言葉が一人歩きをしていますが、以前にも書いたように、本来「薬膳はごはん」であるので「お酒は薬酒」というのが正しいということになります。薬膳酒の方が薬膳と同じ理論に基づいて作られたという事がわかりやすいし、薬酒というと本当に薬品のように思ってしまうので、家庭で作る梅酒と同じ感覚で飲めるお酒という点では薬膳酒という言葉は私は気にいっています。

日本人は自分たちに合わせてなんでも進化させていくのが得意なので、薬膳の世界も今後かなり多種多様に広がっていくでしょう。ですが基本はやはり大切。その本質を見失うことなく発展していって欲しいと思います。

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