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072 愛をめぐる西馬込三題

えー、今日は西馬込をめぐる三題話をひとつ。

あれっ、三題話なのに一つとはこれ如何に。。。なーんて、ここで練習して、次の「お笑いLive的な・・・」で話そうかと。。。

それはさておき、先日、前にもいらっしゃったような記憶がボンヤリと頭の片隅でしているお客さんが。たいていの場合、お客さんとお話しした内容は覚えているのですが、名前や顔はまず覚えていません。一度や二度ではねぇ。いえいえ、十回は通えって脅してるわけじゃないんですよ。。。

歳はとりたくないですね。目に耳に、記憶まで。。。これじゃあ、スパイ失格ですね。

なんの話やねん。。。でも、スパイって職業に憧れたことありません?
フレデリック・フォーサイスにジョン・ル・カレ。007はちょっと荒唐無稽すぎるかなぁ。

それはさておき、聞けば、入籍したばかりだと言います。

「おめでとう。残念ながらお酒は出せないので、お祝いに、とっておきのリキュールをサービスします」
「ええー、いいんですか。でも、リキュールって」
「あ、ストレートやロックでってわけではないよ。るみ子の酒の珈琲リキュールをバニラアイスに注いで」と、例によって、長ったらしいお酒の説明をして、お出ししたのが写真のデザートです。

「ご近所にお住まいですか?」
「いえ、西馬込に住んでいます」
「それはまた、随分遠くから、、、」
「おばあちゃんがこの近くに住んでいて、彼を紹介しに、、、」

「ああー、やっぱり前にも一度来てくれましたね」と、ようやくボクの記憶の糸は繋がりました。
「覚えていてくれたんですか」

もち、と言いたかったのですが、これでは50点くらいですね。でも、西馬込は懐かしい。

「ボクは大学時代、池上線の長原って駅に住んでいましたから、時々、西馬込駅や、近くにある図書館に通っていました」
「うれしー、西馬込を知っている人は珍しいです」

西馬込は都営地下鉄浅草線の終点です。知らない人もいるかもしれませんが、当時、西島三重子の「池上線」って唄が大ヒットしていました。ボクは池上線の長原駅と都営地下鉄の西馬込駅の中間くらいに住んでいて、スナックに入ると、有線でしょっちゅうあの唄が流れていたものです。

と、そこへ我らがカメラマンの麻美ちゃんがやってきました。聞けば、先日、西馬込まで出張して撮影してきたばかりだと言います。

入籍組の彼氏の趣味がカメラで、それからしばらくカメラ談義に。もち、九条Tokyoの「お写んぽ部」や、新たに始めようとしている小説作品をテーマに写真を撮る「名作を一枚に」に誘いました。

その時、彼らの話を聞きながら、まるでデジャヴを見ているような記憶が蘇って来ました。

九条Tokyoのそばにおばあちゃんが一人で住んでいるからと、近所にアパートを借りて一人暮らしをしている女性客がいました。うちの客の中で最も近くに住んでいたっけ。

何故知っているかと言うと、彼女がイギリスに留学することになってアパートを引き払うことになり、店に納品されてきた食材の入っていた空の段ボール箱を運んだことがあるからです。

あれだけ猛威を振るったイギリスのコロナ騒動も、つい最近、死者ゼロの日が出てきたようですね。素晴らしいと言いたいところですが、陽性者数はまた増えてきているそうです。なかなか油断できないもんだなぁ。。。これでオリンピックなんて何をとぼけたことを言っているんだか。

話は三体ではなく三題話に戻って、別の日、麻美ちゃんが西馬込で撮影した被写体の女性を伴って来てくれました。プロマイド写真を撮ったそうです。

でも、その話はここではしません。個人情報コードに引っかかりますから。。。って、三体じゃなくて一体全体、何が言いたいの?って思ったあなた、指を折って数えてみてください。

西馬込に住んでるカップルが訪ねてきてくれたこと。
ボクが学生時代、西馬込のそばに住んでいたこと。
麻美ちゃんが西馬込で撮影したこと。

ほーら、すでに三体じゃなくて三題。でも、『三体』早く三部作全部読みたーい。でないと、前の話を忘れちゃうよ〜。

ええっ、そんな話はどうでもいいって?
では、もう一つ、おまけの話をサービスしましょう。

ボクが学生時代に住んでいたのは、家主の息子が住んでいたという離れでした。その向いに、人が通れる程度の狭い道路を挟んで、小さな町工場がありました。工場といっても、自宅の一部で何かの部品を作っている程度の。

その町工場の騒音は大したことなかったのですが、(当たり前ですね、平日の昼間、ボクは大学に行っているわけですから)、夜の騒音と言ったら。。。

誤解しないでください。騒音は騒音でも、夫婦「喧嘩」のほう。いつも深夜まで飲み歩いている亭主が家に入れてもらえず(おそらく内側から鍵をかけられている?)、深夜に戻ってくると、怒鳴り合いの喧嘩が始まるのです。

愛には、激しく傷つけ合うほど熱い関係ってものがあることをボクが知るのは、ずっと後のことですから、その時はいい加減にしてくれよ、もう別れちまったら、などと思っていたものです。

ところが、ある夜のこと、激しい喧嘩がいつもより早く終わったなぁと思っていたら、何やらパチパチ音がします。なんだろうと頭まで被っていた布団を外すと、深夜だというのに外が明るいではありませんか。

なんだぁ?

不思議に思って窓を開けた途端、熱風がボクの顔を襲いました。

ヒャー、火事だぁ‼️

慌ててボクは母屋の窓を叩いて、家主のお婆さんを叩き起こしました。当時、スマホもないし、電話も持っていません。彼女に急いで消防署に電話してもらい、消防車が来るまでの間、バケツリレー。母屋に下宿していた学生たちが次々に現れて、手伝ってくれました。

今思い返せば、よくあんなに住んでいたこと。5、6人はいたでしょうか。ボクの離れは4.2畳くらいで独立していましたから、普段は顔を会わせたことがありませんでした。

「いやぁ、初めまして」なんて挨拶を交わしながら、10分くらいはバケツリレーをしていたでしょうか。その後、サイレンが聴こえてきて、消防車が到着。

幸い、全壊になる前に火は消し止められましたが、ボクの部屋は燻された上に、延焼を防ぐために消防車から放水を浴びて、布団や本はビショ濡れ。

驚いたことに、翌日には赤十字か何かから毛布の配給が。戦時中?

さらに驚いたことに、数週間経って放火犯の連れ合い、つまり喧嘩して放火された女性のほうがボクの家主のお婆さんと一緒にやってきて、署名してくれって言うのです。

生涯ブタ箱から出すな、というのならわかりますが、普段は優しい人で、その夫婦には子どももいて仲睦まじく暮らしており、あの日はたまたまお酒を飲みすぎてしでかしてしまった過ちなので、軽い刑にしてほしいという嘆願書でした。

男と女の関係ってわかりませんねぇ。。。

ボクは穏やかな関係がいいと思うんだけど、身を焦すような関係に敢えて飛び込む人もいます。DVにならなきゃ、かえって刺激的でいいって考え方もあるかもしれませんが、家を壊すとか燃やすってどうなの?

燃やすものは他にあるだろうが、、、と知ったかぶりですが。
愛の前では、所詮誰もが盲目になってしまうってことでしょうか。

西馬込は愛の終着駅か、始発駅か。
「池上線」じゃなくて、「都営浅草線」、いや「西馬込駅」って唄が生まれそう。

いずれにしろ、ボクにとっては西馬込って駅名は、愛にまつわる記憶がさらに色濃く刻印されたものになりました。

あっ、九条Tokyoにも燃えるような愛はあります。

6/26(土) 15:00〜の「短歌好きあつまれ〜」で、その熱い想い、紹介しあいましょう。

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