失井敗斗暗殺計画⑤　諸葛遊部

遊部「……ってわけで、お姉さま方が敗斗さんの『ファーストキス』を狙ってるんス」

敗斗「なるほど……。ここのところ、みんなの様子がおかしかったのはそのせいか……。クロエのやつ……」

遊部「モテモテでうらやましいっスねー。全国のモテない勢を代表して、百合ちーが復讐してやりたいっス。具体的には、今後の情報提供を自粛してやろうかと思うっス」

敗斗「おいやめろ」

遊部「世間も色々自粛期間ですしぃー」

敗斗「そろそろ多方面で解除されるだろ。お前からの情報がなきゃ、こっちは仕事にならねーんだよ」

遊部「そうは言っても、羨ましいものは羨ましいんです！　だいたい、なんで敗斗さんだけモテるんスか！　おかしいでしょ！！　あれっスか！？　ラノベ主人公だからっスか！？」

敗斗「メタ発言やめい。すっかり忘れてるかもしれないが、遊部だってモテるぞ。どこぞの殺人鬼からストーキングされてただろ？」

遊部「……じゃあ、敗斗さんはノリオさんに『やらないか？』って言われて悦ぶんスか？」

敗斗「んなワケあるか」

遊部「そういうことっス」

敗斗「……どういうことだよ」

遊部「とーにーかーくー！　百合ちーがモテたいのは女の子なんス！　具体的には、メリアお姉さまとか、クロエお姉さまとか、カナミお姉さまとキャッキャウフフ♡したいんス！　毎日一緒にお風呂に入って、洗いっこしたいんス！　できれば下着も洗いたいんス！」

敗斗「最後のは違くない？」

遊部「てことで、敗斗さん。百合ちーと取引しましょう。どーせこの騒動は、決着が着くまで……つまり、敗斗さんの『ファーストキス』を誰かが奪うまで終わらないっス。だから、今この瞬間、百合ちーが奪ったという『てい』にしてほしいんスよ」

敗斗「なるほど。まぁ、俺としてもその方が助かるし、全然構わないんだが……ところで、なんでお前はこんなくだらねぇイベントに参加してるんだ？」

遊部「……ぎくっ」

敗斗「勝っても、得られるものは正妻ポジション？くらいだし、お前にメリットがあるとは思えないが……」

遊部「そそそ、それはアレっスよ！　つまり、百合ちーもどこかで敗斗さんに惹かれてたとか……そんな感じ？　だから正妻ポジションが欲しいんスよ！」

敗斗「……ふむ。じゃあ、キスするか？」

遊部「はあっ！！？」

敗斗「俺は構わないぞ。ぶっちゃけ、中身はアレだが、お前も容姿はいい方だしな。どうしてもキスしたいと言うなら、やぶさかではない」

遊部「ちょっ、まっ……！？　なんでそんな顔近づけて――あ、むっ、無理っス！　それ以上は――……おぇぇぇええええええ（嘔吐）」

敗斗「……まっ、こうなるか」

遊部「ひ、ひどいっス……。朝食べたパンケーキが全部出ちゃったっスよ……」

敗斗「小学生の身分で朝からそんなブルジョワなもん食ってる方が悪い。……で、本音は？」

遊部「クロエお姉さま公認で、正妻ポジションを手に入れたら、側室であるお姉さま方とエロエロ……じゃなくて、『色々』できることになってるっス」

敗斗「……そんなことだろうと思ったよ。お前は《情報屋》としては一流だが、ビジネス上の駆け引きはまだまだだな」

遊部「そんな！　完璧な『孔明の罠』だと思ったのに……っ！」

敗斗「諸葛孔明さんに謝れ。そういう事情なら、先ほどの取引には乗るわけにはいかないな」

遊部「そんなー！　せっかくお姉さま方とエロエロするチャンスがーっ！！」

敗斗「キスするぞ」

遊部「おぇぇぇぇえええええええええええええ（嘔吐）」