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ノゾクダイス「創作の轍①オリジン」

はじめまして金沢小立野ゲームのとらです。
2015年ころにボードゲームに出会い
2020年にボードゲームの創作をはじめ、
ゲームマーケット2021大阪で「クラクラップ!」を初頒布しました。
このnoteでは2作目となる「ノゾクダイス」の創作の過程を、
私の創作したボードゲームに興味を持っていただいた方と
何かを新たに生み出そうとしている方へ向けて伝えたいと思っています。
①ではゲームのルールが完成へ向かっていく過程をお伝えします。

ボードゲームはいかにして創られていくのか

ボードゲームを創作するときの進め方は様々だと思います。
そしてほとんどのゲームについて「創られていく過程」は知らないし、
特に知る必要がないことでもあります。
一方で、ボードゲームを創作するという活動を進めていくと、色んな方がどのような発想や着想や方法論で創作を進めているのか気になります。
「あのゲームってどんな創り方したら産まれるのだろうか」と考え出すと夜も眠れません。

日常の何かから着想を得てゲームに落とし込んだり、面白そうなシステムから発展して独創的なゲームが創られたり、様々だと思います。

金沢小立野ゲームズは多くの場合、既存のゲームからのインスパイアから始まります。ノゾクダイスに関しては、サイコロを効果的に使ったトリックテイキング「ノコスダイス」をインスパイアしています。しかし、ルールやシステムではなく、コンポーネントとゲーム名に焦点を当てたインスパイアです。色に対応したカードとサイコロのコンポーネント、ノコスダイスという心地いい響きの名前から何かできないかと考えたのです。

ダイスをいっぱいふりたい

個人的な好みですが、ダイスをふるゲームが好きです。私は比較的運に恵まれているためダイスの結果に踊らされるのが楽しいです。しかしながら、ダイスゲームを苦手とするプレイヤーも沢山いると思っています。それはいわゆる運ゲーに対する否定的な感情だと思っています。「ユーロゲーム」[1]の中では(BGGユーザからの統計ではありますが)、「運」は60%程度の方が「ゲームの悦び(pleasure)」にとって「さほど重要ではない」と回答しているデータが示されています。これにはもちろん同意です。

一方で、「ユーロゲーム」の中では、「ダイスロール」は70%程度の方がゲームのメカニクスとして「普通、またはいつでも悦ばしい」として回答しているデータが示されています。ということでダイスゲームに関しては、ダイスをふる行為自体は楽しい、だけどそれだけでゲームの行方が決まってしまうのはよろしくないという、ごく自然な結論が導き出されるのではないでしょうか。「マルコポーロの旅路」、「ブルゴーニュ」、「グランドオーストリアホテル」、「ティーフェンタールの酒場」、「ブルージュ」(全部私が好きなゲーム)などなど、ダイスロールがキーとなるメカニクスを内在しているゲーム[2]ではあるけど、ダイス運をさほど感じないゲームは枚挙にいとまがありません。大切なのはふった後にプレイヤーの選択や駆け引きがあることだと思います。

どうせサイコロふるならたくさんドバっとふりたいです。「ノコスダイス」のサイコロをいかにドバっと全部ふるかを考え始めたのが「ノゾクダイス」の始まりになります。

ただし、たくさんふるけども、サイコロの目の揺らぎはプレイヤーの選択によってある程度コントロールできるということは重要ポイントになります。

ダイスをゾロ目にしたい

ダイスをふったときに嬉しいことは、1つのダイスであれば「6」が出ることかもしれません。すごろく的なゲームの場合は特定の目がでることになるでしょうか。これが2つ以上のダイスとなると目がそろうことに嬉しさを感じるような気がします。我々は本能的にゾロ目が好きなのでしょうか。

ただし、たくさんダイスをふってゾロ目を目指すというのは例えば「王への請願」の内容そのものでもありますし、先述のダイスコントロールとは違う方向です。
あくまで最終的にプレイヤーが向かう目的が目をそろえるというものになればいいなと思っていました。

ダイスのまだ知られていない部分を見つめてあげる

名古屋のテストプレイ会に参加させていただいた際に、ダイスの目でセリをするゲームをテストプレイさせていただきました[3]。そこでのダイスの使い方が、ダイスの出目だけでなくその反対側の目も効果的に使っているものでした。

このことに刺激を受けて、ダイスの新たな一面をもっと見つめてあげようと思い、すぐに目に入った剥き出しのダイスの側面に注目しました。するとダイスの側面には4つも目のついた面があります。側面は同時に4つの情報とその方向を与えてくれていたのです。そこで、各方向に向けた目の情報をその方向にいるプレイヤーが参照することを考えました。プレイ中に各プレイヤーが視線を落としながらダイスの側面を覗き込む様子が想像できます[4]。

そして、このゲームの名前は「ノゾクダイス」しかありえません。

「ノゾクダイス」

ダイスを大量にふる。
カードをプレイしてダイスをピックする。
ピックの際に側面を参照して手番プレイヤーとそのほかのプレイヤーがアクションする。
アクションによってダイス目をコントロールしてダイスの目をそろえる。
これが「ノゾクダイス」の核です。

その後、富山テストプレイ会での指摘から毎ラウンドダイスをふる処理を加えたり、名古屋テストプレイ会での指摘から最終得点の計算を加えたりのアップグレードを経て最終形へたどり着きました。テストプレイしていただいた方々に感謝です。

(引用等)
[1] Stewart Wood (2012). EUROGAME The Design, Culture and Play of Modern European Board Games , 翻訳版 訳 沢田大樹 山本拓 (2020). ユーロゲーム 現代欧州ボードゲームのデザイン・文化・プレイ 合同会社ニューゲームズオーダー

[2]「マルコポーロの旅路」各自ダイスをふりダイス目に応じたアクションスペースにワーカーとしてダイスを配置する。基本的に目が大きい方が嬉しいが小さい目にも価値がありそのバランスはダイス運の影響を薄めている。「ブルゴーニュ」各自ダイス2個をふりそれぞれのダイスで対応するアクションを行う。欲しい目もあるがそれは特定の目ではなくてその都度変化するし、ある程度コントロールできるのでダイス運というより広く受ける準備と見通しが大切。「グランドオーストリアホテル」ラウンド最初に共有のダイスを大量にふり、そのダイスをとることでアクションを行う。このラウンドはこんな世界なんだと割り切ることができるのでダイス運を感じない。「ティーフェンタールの酒場」各自4個のダイスをふってトレーにのせて1つを獲得して隣へ回すダイスドラフト。ドラフトなのでダイス運というよりも隣との兼ね合いを考えることが大切。「ブルージュ」ラウンドの最初に色に対応したダイスをふり、色の価値と厄災を決める。よいことと悪いことが表裏一体であり、ダイス運に翻弄されながらも納得感がある。むしろカード引きの運要素がめだっている。

[3] Akiraさんの「Community service」は未だ世には出ていない(2021.11現在)。待望。

[4] ダイス側面を参照するボードゲームとしては、例えばペンとサイコロさんの「陰陽賽」があります。最終得点が各方向から見えるダイス側面の目の数になります。

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