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垂直の詩

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空       言 間 に 立てる 葉
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2022年2月の記事一覧

鹿

鹿

川の瀬で鹿の頭が見つかった
猟師は焚き火の前に ごろんと大きな塊を置いた
真っ黒い眼がちらちらと火に照らされている
首から下はなかったのだという
衰弱した鹿は川へ向かうそうだ
鹿は水の流れる場所を知っている

残雪の山路 行く手の先に鹿を見た
茂みから茂みに 路を横切る一瞬
鹿は静かに此方を見た
私と鹿の間逢い もうひとつの時間が流れる
後ろをついて歩いていた息子に呼ばれたときには
もう鹿の姿はな

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