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猫と愛と、それから。(仕事で仲の良かった先輩の話)
人はいさ 心もしらず ふるさとは
花ぞ昔の 香ににほひける
昔、お世話になった先輩がいました。
当時新人だった私は先輩にべったりついて仕事をしていたので、
先輩からの指示を理解すること、
そして忠実に実行することに、
1日のほとんどのエネルギーを費やしていました。
新世紀エヴァンゲリオンで言えば、
先輩とのシンクロ率を上げることにひたすら注力していたのです。
仕事の時間の大半をそうやって過ごしたのですから、
先輩の思考と私の思考は次第に同期されていきました。
最終的に先輩と私は、
何も言わなくても、同じパソコンのキーボードを2 人で同時に操作できるようになったのですから、
恐ろしいことです。
しかし今、私は先輩と異なる仕事をしています。
会社の都合で私が別のプロジェクトに移ることになったからです。
最初の頃こそ寂しい思いもありましたが、
新しい環境での仕事にもだいぶ慣れ、
この頃では次のキャリアへの道筋も見えてきました。
ただ、最近なぜか先輩の夢をよく見ます。
大抵の場合、先輩は私に対してそっけない態度を取っています。
嫌いだとかそういった言葉を言うこともあります。
(注:現実では一度も言われたことはありませんしこれからも言われないでしょう。)
夢占いはよく分かりませんが、自分自身が自立しようとしているのではないかと思います。
冒頭の歌は仮名序で有名な紀貫之の歌です。
百人一首にも載っています。
紀貫之が旧友を訪ねた際、
先方に「あなたは変わってしまいましたね、昔はよくここを訪れたのに」というようなことを言われたので、
「人の心はどうかわかりません(変わってしまったかもしれません)が、昔からここに咲いている梅の花は昔と変わらず香っていますね」
と言った歌です。拙訳ですが。
方丈記に「行川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」とあるように、
先輩も私も常に変化をしていますから、
二度と昔と同じ状態、心持ちで会うということはないでしょう。
(紀貫之がお洒落にフォローした部分をバチバチに壊す…)
それでも、
紀貫之と旧友の間にあった梅の花のように、
二人の間の変わらないものを
一生懸命に探してしまうものです。
先輩が好きだった音楽、
仕事が大変だったときに教えてもらった本。
またいつかどこかで会うことができたら
お洒落に本の引用なんかをしてみたいものです。
2つの世界の調和を願って。
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