不思議の国の豊38/#育てたかった子猫たち
前回はここまで、そして
#育てたかった子猫たち
僕たちは、河口小学校が大栃小学校の敷地に移ってから、
スクールバスで通うことになっていた。
影仙頭から生徒によって近い方の二つの道を下り、
大宮橋を渡って、
対岸を上にのぼり、
上日の地からスクールバスに乗る。
放課後、僕たちはスクールバスが出るまでも
それぞれ遊んで楽しんだし、
バスの中でも楽しかったし、
バスから降りてから、家に帰るまでも楽しかった。
上日の地から急な坂を下り、
途中の道の近くに3-4件の家があり、
最後一番下の家を過ぎてしばらく歩くと、
ダム湖の͡湖面とほぼ平行な水平の道になる。
それをしばらく歩くと、
杉か檜の林があり、それが終わる頃に、
有宮神社が見えてくる。
その鳥居のすぐ向こうは有宮橋だ。
僕たち影仙頭の小学2年生6人組は
ある時、有宮神社の横を通る道を
上日の地駅からスクールバスを降りて帰っているところだった。
有宮神社の社殿のすぐ横の藪の中に、
僕は子猫の鳴き声を聞いた。
僕は、ランドセルを捨てて、
藪をかき分けながら山の斜面を這い上った。
そんなに上ではなかった。
道から見ると大人の背の高さの2倍ぐらいのところに
段ボール箱があり、
その中で5-6匹の子猫が鳴いていた。
下には布が敷いてあって寒くないように気遣ってあったのだと思うが、
捨てられているのは明らかだった。
僕は近くにいた影仙頭の同級生の5人だけに、それを教えた。
みんな這い上がってきて、
口々に「可愛いねぇ!」
「捨てられちゅうがや!」
「飼おうや、飼おうや!」
と言い始めた。
僕たちは次の日からちょっとずつ
お菓子やご飯やおかずや粉ミルクを持ち寄って
朝晩、そこを通るたびに、
子猫たちに与えた。
最初、目が見えてなかった子猫たちも、
眼が開いて見えるようになったようだった。
「ミャーミャー」と鳴いて可愛い。
ある日僕は変だと思った。
猫たちの目に小さな白い虫がいた。
5人の目の前で、
僕は子猫の瞼をめくってみた。
全部の猫に白いウジ虫がいっぱいいた。
僕たちは全員が直感で
「この猫たちは助けられない。」
と感じた。
誰ともなしに、「ねえ、ダムに流しチャろうよ。」
と言ったときには、
全員が目に涙を浮かべ、
コックリと頷いた。
僕たちはやり切れない無力感を感じていた。
だから、七夕が終わって、七夕飾りの笹を流すように
僕たちは自然と子猫たちをダム湖に流すことにした。
有宮橋の真ん中で、
子猫の入った箱が少しづつ下流の大栃の方に
流れていくのを
僕たちは日が沈むまで見送った。
以下次号
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