不思議の国の豊34/#20世紀軍団との戦い

前回、そして

#20世紀軍団との戦い

僕には、あまりにも敵が多すぎた。

とても戦いきれそうにないほどいた。

そして21世紀はあまりにも遠かった。


僕が小学3年生になったある日、

僕は自分の母の形相に驚いた。

弟の徳智(ノリトモ)は1年生だった。

ノリは僕と違って外で日が暮れるまで

遊んで帰る元気なやんちゃ坊主だった。

そんなノリに算数か何かを教えていた母が

甲高い声で、ガミガミ言って責めているのだった。

僕が中学ぐらいになって知る教育ママ

と言う感じだったのだろうか?

僕は見ていられなかったし、

見ていなくても想像するだけで辛かった。

弟には一杯良いところがあり、

特にいたずらをしている相手にさえ好かれる

のは良いことだと僕は感じていた。

弟は僕といるときは僕の子分のようについてきたし、

僕といないときも誰かと一緒に遊んでいた。

ひとり遊びが結構多い僕とはまるで違った。

母は多分、弟に僕になること望んでいたのかもしれない。

母は、おじいちゃんの好きだった盆栽みたいに

弟をいじくりまわしているように見えた。

それは僕が小学校に入って思い始めた

「21世紀は個性と女の時代」に

真っ向から対抗することだった。

おじいちゃんの盆栽は個性を伸ばす盆栽だったのに。

そんな20世紀軍団は僕を直接攻めずに

僕の知らないところでそれも時間差を利用して

執拗に弟に襲い掛かっていたことを

僕は後で知ることになる。

一番敵が多かったのは学校だった。

僕のかつての担任や同じ学年の同僚の担任だった教師などが

「豊君は君と違ったよ」と

教壇で何度も言われたことを

弟やその同級生やそれを言った教師から

僕の耳に入るようになったのは

僕が中学3年になって、

弟が同じ中学の1年生になった時だった。

僕は胸が張り裂けるかと思ったが、

過去も他人も変えることはできなかった。


20世紀軍団はとても人数が多かったし、

僕にはなすすべもなかった。

小学校高学年になった時、

学年の成績上位5人ぐらいが

塾に行っているという話を聞いた時は

僕はひっくり返りそうになった。

いずれも裕福そうな身なりの男女だった。

学校から帰ってからまた同じ勉強をするって

どういうことか僕にはわからなかった。

放課後の楽しい時間を

宿題さえなければもっと楽しい時間を

「いったい何が悲しゅうて潰しゆうがやろう?」

彼らはお城下(高知市のこと)の

私立中学に進むかもしれないとの

噂もあった。

僕にはわざわざ遠いところにある中学に進む

事も理解できなかったし、

彼らの中で、学年の順位が変わることはあっても、

成績を気にしない僕を上回ることは無かったから、

僕には「伸びきったゴムのみたいや」

と感じるとともに、

「多分本人が望んでのことではないがやろう」と

気の毒でもあった。

当時の僕は知らなかったが、

そんなことは日常的に日本中で行われていたらしい。

それを知るのは僕が高知高専に入ってからになる。

全く、20世軍団は圧倒的多数で、

僕の周りを埋め尽くしていた。

以下次号






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