不思議の国の豊7/#神を名乗る悪魔たち・打つ手なし

#神を名乗る悪魔たち・打つ手なし

前回は

ここまで、そして、

#僕の図書館

大栃小学校の仮教室にある河口小学校に通い始めてからすぐに、

河口小学校は大栃小学校の古い体育館跡か何かに

鉄筋コンクリートの新校舎を建て始めた。

3階建ての淡い黄土色にピンクが入った色の新しい校舎は

豊が3年生になる頃には出来上がった。

1階は1年生から3年生まで、

2階は上級生の教室があった。

大栃(おおどち)小学校は、運動場を真ん中に、

周りを校舎や体育館が囲んでいた。

全部木造で、壁や壁板は

太平洋戦争中の空爆対策として黒く塗られてあったが、

その片隅にできた河口小学校はひときわ輝いていた。

僕は松井先生が「今日はテストをしますよ。」

と言う授業時間が好きだった。

一個の授業時間は4-50分あるのだが、

松井先生はテストのときは

「全部答えを書き終わって、書き間違いなどの見直しをした人は

外に出て遊んでええですよ。」

と言うのだ、

僕はいつも、一番に15分ほどでそれが終わり、

外の運動場に出て遊べるのだ。

それから数分すると、二人が外に飛び出してくる。

僕はその子たちと広い校庭を使って

自由に遊べた。

大栃小学校の生徒はとても多いので、

休み時間や昼休みは校庭がいっぱいになり、

それほど自由には遊べない。

僕は走るのが嫌いなので、ほとんどの体育は嫌いだったが、

フットベースボールと言う、ボールをけって、

野球のように一塁から本塁まで回ってくるゲームが好きだった。

高知のおじいチャンに買ってもらった革靴がお気に入りで

学校に行くときはいつも履いていったのだが、

これでサッカーボールをけると、

ズック靴と違って、つま先が痛くないのだ。

そして、よく飛んだ。

二塁手の上を飛び越え、

僕は1塁を通り越し、2塁にも、3塁にも、時々本塁にも行けた。

走るのは嫌いだが、この時だけは一生懸命走った。

だって、僕の一蹴りで、一走りで僕のチームに点が入るのだ。

僕は3人で、そのボール蹴りをしたり、

普段混んでいて、なかなか乗れないブランコに自由に乗った。

僕は、ブランコも得意だった。

みんなは、ブランコを後ろに引き、

勢いをつけて、乗って漕ぐのだが、

それはどんなに漕いでも、そんなに高くはならなかった。

僕は、動かない状態から漕ぎ始め、

あっという間にプランコは支えている棒の高さまで達した。

それはすごい爽快感があった。

雨の日は図書室に走った。

河口小学校の本も大栃小学校の図書室に並べられていた。

その大きな図書室が好きだった。

僕はいっぱい本を読んだ。

毎日3冊本を借りて、家では、夜寝る前に読んだ。

僕は物語と、理科に関する本が好きだった。

家では、ひょっこりひょうたん島を見、

それに続く、教育番組のケペル先生の科学番組が好きだった。

そういえば、母が良く言った。

中風で寝たきりだった氏弥(うじや)おじいちゃんのベッドの横で、

僕は小学校に入る前、よく国会中継を見、

殴り合いをする国会議員たちを見て、

おじいちゃんと一緒に、

「あいつら、話し合いをするところで殴り合いをする馬鹿な奴らや。」

と言っていたと。

そして、「僕は総理大臣になって世界中を飛び回り、

戦争のない世界を創るんや」

と言っていたと。

勿論僕は覚えていない。


河口小学校の生徒はスクールバスで通っていた。

僕のうちのある集落は、学校のある大栃まで比較的近く4-5キロだった。

大人が普通に歩けば1時間ほどの距離にあった。

しかし、他の子はもっと遠かったから、スクールバスは必須だった。

僕は本好きだったから、

女子の上級生の教科書も読ませてもらった。

両親が僕の為に取ってくれた月刊誌

「学習」と「科学」も好きだった。

特に、「科学」についてくる理科的な実験ができる付録

は好きだった。

ゴム動力でプロペラを回して走る自動車の付録は

僕の改造によって、地面を離れて低空だが空中を滑空した。

僕は友達を巻き込んでは、今までにないゲームを作り楽しんだ。

虫、植物のいっぱい詰まった本も買ってもらえた。

ハーモニカや縦笛が好きで、好きなテレビ番組の歌を演奏した。

夜は勉強部屋のある二階の窓の外に出て、

屋根瓦に寝そべり、星空を眺めた。

星座もほとんど分かった。

僕はもともと視力が良かった。

それが、星座への興味で空を眺めると、

徐々に、夕方の早い時間や、朝も遅い時間に

シリウスが見つけられるようになった。

徐々に星は増え、

昼間でも星が見えるようになった。


図書館では、百科事典も興味を引いた。


そして、人類の歴史が戦争に満ち溢れていることを知った。

そのほとんどに宗教が絡んでいた。

この宇宙に存在しないはずの神を語る者どうしが、

相手の神を否定しあるいは滅ぼそうとしての

結果が戦争だった。

彼らの神もそれを担ぐ者も戦争を好む悪魔だった。

悪魔の神々たちは、科学者や芸術家を迫害し、亡き者にした。

それゆえ人類の科学の進歩が遅れた。

そうでなければ、人類は今頃星々を飛び回れていたかもしれない。

僕は、その神々=悪魔たちを恨んだ。

しかし、僕には手も足も出なかった。

次号に続く


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