「これ、食べるんですか?」【散文小説】
ぼんやりとした黄色…甘酸っぱい赤
堅苦しい匂いが押し寄せる
山登りの匂いが押し寄せる
全国大会の匂いも押し寄せる
走り幅跳びの匂いが消えた?
ヘッドスライディングの匂いが消えた
ため息すらシャボン玉に変わるような風景が
波打つように僕の五感をもて遊ぶ
葉っぱに落ちた雨粒と
静かに泣いてる少女が気球に乗って
宇宙の気圧を掻き回す
青紫のシャーベットの渦に
恋する心を溶かして
メルヘンチックな想像の星を設計する
地の底から湧き出る泉のような愛の力で
死に染まる鉱物と思い出の全てを
透き通る水晶に創り変える
天才画家の油絵を小さな瓶に閉じ込めて
ピンク色のカーテンの向こう側で
次々と宝石を産み出す
宇宙絵画展と呼べるくらい幻想的で
癒しに満ちた麗しい星の建設が
水色の星の上に展開される。
そして。。。
泣き疲れた少女の潜在意識で始まった表現活動。
それは、僕にとっては理解不能である。
でも、コケティッシュな現実を引き寄せる魔法だ。
数億本の釘と那由多の建築道具を使って
少女の描いた理想の世界が展開する。
ヘンテコリンな絵本のページを捲る
常識というネジが数千本ぶっ飛んだ物語が
僕の住む世界に可視化する。
僕の体は想像力の外に置かれたベッドの上で
横になっていた。
さらさら…してる柔らかい砂が
マーブルチョコみたいに渦巻いた。
今日の気分を赤、青、黄の三色の配合で表現する
画用紙に不思議な絵を描く少女
円形の島と海の間で、南国の風に舞う白い粒子が
ピンクと紫の幾何学模様を設計して立体化する夢。
ある日、突然、現れた地球外生命体に
誘拐され、眠らされたのかもしれない。
銀色のナイフとフォークで僕の体を切り開く
無味乾燥の冷たい風にビクビク怯えながら見栄と意地でポーカーフェイスを演じてるサンドイッチのように凡庸で脆弱な思考回路を根こそぎ抜き取って。
天才パティシエの遺伝子に組み換える的な
境遇に巻き込まれたのかもしれない。
集中治療室から始まる夢
宇宙的でメルヘンチックで不条理なコントの主役に選ばれてしまったのかもしれない。
聞こえるはずがない潮騒のリフレイン
オレンジとマスカットの爽やかな香り
無いはずのテーブルに差し出された。
架空のデザートが僕の内なる大海原に
黒いクジラを泳がせる。。。。
ボクは
現実じゃないことを確かめる為に
目の筋肉に意識を一点集中して
ワインのコルクを引き抜くように瞼を開けた
夢の空間に拡がる半透明で
曖昧な風景のカーテンを開けた
砂浜に白い皿
その上に乗ったホットドック
波打ち際に百くらい溜まった靴
運動靴、10センチのピンヒール、下駄
グラディエーターサンダル、長靴
サッカーのスパイク、革靴
テニスシューズ、登山靴
揺れる青の静寂
ホットドックと白い皿で埋め尽くされた砂浜
無尽蔵に雪崩れ込む靴という靴の世界観の渦へと
自分の体がぐるぐる引き寄せられて
骨という骨が愉快な方向に曲がって真っ直ぐ歩けない気がした僕は、落ちてるはずがない
鏡の前で
不可解な笑みを浮かべながら
まともな星に存在する僕という設計図を
引っ張り出した
目と鼻と口の寸法が間違っていないか
注意深く点検する
どこにも存在しない普通という偉大な神様に
合掌して、落ちてるはずがないネジを
2、3本拾って、体の一部に差し込んだ。
みるみる高まる走り幅跳びの臨場感で砂の上を華麗に舞い遊べるくらいのレベルに到達した!!!と思った1秒以内に足の指にホットドックのソーセージが挟まる。
その感触の気持ち悪さに
あた、ふた、した直後に、誰も頼んでない
お皿にヘッドスライディングを豪快に決めていた。
さっきまで賑やかだった霊界のレストランに沈黙のビーチボールが転がり込んで
ルビーより輝く赤の一滴をこぼした音で
お皿が割れた。
無いはずのお皿が割れて、出ないはずの血が出た。
ただの白くて丸いお皿が、この世に二つとない芸術作品になる。
極彩色の鱗をまとった龍が
途方もない時の関門を潜り抜け
人間の想像力の外に存在する
幾つかの琥珀色の玉を口の中に貯めて
魔界に住むフクロウの目が青く光り
首の稼働範囲を越えて
ぐるぐると狂ったように
異様な光景をくるくると眺める
誰も知らない新大陸に
ツマサキを乗せたような高揚感
胸の内側に小さなハムスターが
愉快な踊りを披露する
クタクタになって枝から落ちて
失神したフクロウの精神世界を
【魔界で見た新航路】という三部作の小説に
文字で起こしたら、半年後に映画化する
そういう超感覚的なメッセージが
ボクの頭蓋骨と旋毛の間に設置された
アンテナに届いたような気がした。
五次元に次元上昇する星の近くに漂う
宇宙由来の電波が僕の鳴らした翡翠の石の
ホイッスルを感知した瞬間に方向転換する
僕の呼吸の管理するマンホールの蓋が開き
光のストローを目指してジャンプする
宇宙空間に出現した場違いな掃除機が
銀河に散らばる金平糖を吸い取るように
ボクの意識した森羅万象が
蜘蛛の巣を張って、自分にとって素晴らしい世界を構築して拡大する
海王星の湖から何光年も離れた
山羊座の森の蜘蛛の巣と繋がるような
ロマンチックな空想が途切れた後
白いお皿に飛び散る幻想的な赤を見た
地球には存在しない草木のような
太古の巨木の先端を切り取った小枝のような
前菜が
転んだ僕の
目の前に現れた。
完。
内なるゴールデンレトリバーのエサ代、読みたい書籍の購入、音楽などの表現活動に使わせてもらいます。