【現代メルヘン】ソンナわけない味だった。


宇宙人らしき変態にお菓子をもらった

そんな…わけない味だった

味覚を楽しむ為に作られたもの

と信じて、それを口に入れた?


……そんなハズない味がした

見た目と食感も投げやりだった


なんちゃら星人に出会った喜びで
頭がラリったのか、バグったのか
と思った

五歳の子供に
「明日の朝、地球が滅亡する」と

聞かされたような衝撃で
頭に浮かんだ城壁が盛大に砕け散った

クラッカーが鳴り

くす玉が

パッカ、パッカと開くので

「誰の誕生日会だよッ!!」と
思わず、叫んでしまった


想定外のミサイルが

いやっ違う

次元上昇のミサイルが飛んで来て
今までの常識を撃破したのだ

僕は

湿気たビスケットの欠片を拾い
春の夜空の左角に漂う三角コーナーを狙って


アンダースローで投げた


そして、基地の外へ

そんなハズ…ない味…と思いながら

慣れ親しんだ居場所を離れて、城の外へ

すると

「なんで、味が無いの~?」

「空白より何も無い味だね~」

「そんなお菓子、どうやって作るんだよっ」

半笑いしながら弓隊と槍投げ隊が
攻めてきた


もう、一口食べてみた

やはり、そんなワケない味だった


明日の天気が雨とか
俳優の誰かが一般女性と結婚したとか

一瞬で忘れてしまうような味だった


爆笑しながら帰る変態型宇宙人

その試作品より前に食べた
ビスケットの甘味とクリームチーズの酸味が
インディゴブルーの空に

羽ばたいた


一歩でも動けば

逃げてしまうハエみたいに

空白より何も無い味が

舌の上に止まっていた

その日、夕闇に光る、味確認飛行物体を

目撃したのだ


目を覚ますと

知ってるベッドの匂いがする

妖怪の館に迷い込んだ時のハラハラする

気分を脱ぎ捨てたみたいだ


「全然、楽しくないってこと。」


今日も1日、退屈という魔界に住む
工場勤務犬やジダラックマ
愚痴の森のおじさん
その他、大勢の天敵を倒さなきゃいけない


昨日の出来事が愉快、過ぎて

普通の生活では得られない

ぶっ飛んだ夢か
ハイパーレアな体験が欲しくて

地底をぐるぐる徘徊する内なる獣、
サーベルタイガーの唸り声が
身体の外まで響き

手の平が小刻みに振動する

ある日の夜

部屋でゆらゆらと小説を読んでると

主人公がガールフレンドに
もらったケーキを食べて思った

地底人の生活みたいな味だ

つまり

そんなハズない味がした


宇宙人がどうやって
あの巨大なUFOを飛ばしているのか

それを聞いた衝撃波で

「地底の覇者」というハチマキが
ひらひらと春風に舞い

1日で、いぬんこ(犬のウンコ)
三回も踏んだよ。みたいな顔した人体模型が
宇宙の便座に吹き飛んだ


そんなハズない一言で


友達の部屋のゲームが壊れ

宝石店のルビーのネックレスと
教室の花瓶が落ちて

テレビが半分に割れた

その一瞬、一瞬が詰まった宝箱を

自分の足で蹴り飛ばす感覚があった

幻想に近い幾つかの瞬間が

人の足で踏まれ、潰れたアルミ缶みたいな顔になった人体模型が


宇宙の便座行きの汽車に乗って

暗黒に浮かぶ疑問

「宇宙人は、どうやってU.F.O.を飛ばしてるか?」

「あいつら、気力で飛ばしてるんだぜ。」


そんなワケない一言で


頭の中が初雪だらけ

チクタクと笑い堪える城壁も

万事休すか…?


「気力で飛ばしてる」


僕の笑点に

意気揚々と槍を投げまくる

頭脳明晰おじさん

自販機でコーヒー買って飲むような感じで


「あいつら、気力で飛ばしてるんだぜっ」


さらに鉄砲隊が攻めてきた

ズンズン、バキバキ、ズンガズンガ

ガンガン、バシバシ、ズンガズンガ

ドゥンドゥン、シャカシャカ、ズンガズンガ


「プレアデスに行くぞ!!!

うぃーん、フッフッフッ

最速じゃね!?

新記録出るんじゃね?」

ぐはっぁ

城壁の東門、壊滅

哀れなり。

「報告、大草原にて1名…笑死。」以上だっ

「ないよねー、味ないよねー」と

馬鹿笑いしながら僕の肩をバシバシ叩く

冷蔵庫

週刊誌

コンビニで一番端の一番エロい雑誌を

バシバシ叩く

宇宙型変態人が持ってきた

二個目の試作品は

今まで覚えた味が全て

空白の便器に落ちて

粉雪のように儚く散らばって

真っ暗な海底に溶けるくらい

美味だった

見た目と食感も異次元で

世界的な絵画展のエントランスに
飾ってある孔雀みたいな花園みたいに

マーベラスなお菓子だった

のんのん


僕の語彙力と想像力の果てに

辿り着いた表現

「そんなハズない味だった」


梯子をゼーゼー息を切らして登り

天井に貼り付いた言葉

「そんなワケない味だった」


そんなわけ、無い味だった。


内なるゴールデンレトリバーのエサ代、読みたい書籍の購入、音楽などの表現活動に使わせてもらいます。