見出し画像

チェンカーンへ/【ひとり旅】すばらしきかなスリン島②

二日目。今日は東北部(イサーン)へ向かう。ガイドブックには、肌寒いと書いてある。雪が降ることもある、とある。まさか。ここはタイだぜ、って思ってたけれど、ホントだった。涼しいを通り越してヒヤッとするくらい。バンコクのあの蒸し暑さはなんだったんだろう。

まずは、バンコクから『ルーイ』という街までの切符を買った。9時間の道のり。『ルーイ』からバスを乗り換え『チェンカーン』という村に着いた。らしい。
“らしい”というのは、10年以上も前のことで、細かいことはもうあんまり覚えていないから。当時持ち歩いてたガイドブックを見ると、行き先が赤ペンで⭕️されていたから、『バンコク』〜『ルーイ』〜『チェンカーン』がという道のりがわかった。
なぜ『チェンカーン』が目的地だったのか、さっぱり覚えてない。でもボクは『チェンカーン』というとても小さな村で数日過ごした。とても気に入ったようだ。胸に『チェンカーン』と書かれた(おそらくタイ語で)Tシャツを買ってたくらいだから、なんかビビビときたのかもしれない。


チェンカーンはとても静かな村だった。メインストリートは50mくらいだったんじゃないだろうか。そこに雑貨屋さんとか、カフェがあったんだと記憶している。
繰り返すけれど、なんでここが目的地だったんだろう。
今となってはメモの書かれた当時のガイドブックと、少ない写真から想像するしかないのだけれど。証拠品から推理していくようで、ちょっとオモシロい。自分のことやのに。

その名も「チェンカーンゲストハウス」に泊まった。
ガイドブックには、

  • チャイ・コーン通り282/2

  • tel/fax0-4282-1691

  • 14室

  • 温水シャワー・トイレ共同

  • 150~350バーツ

とある。
コメントには、
「きっぷのいいピムおばさんが経営。年代を感じさせる木造2階建てで居心地がよく、テラスからのメコン川の眺めが抜群」
と書かれている。

“きっぷのいい”というのはどういうこと?って当時感じたのを覚えている。っていうか、今でも思う。きっぷのよさとは?

そう、コンクリじゃなくて、木造だった。それがよかった。2階のテラス席にボクはよくいた。確かに、そこからの眺めが好きになった。メコン川が見える。川の対岸は、ラオスである。


ボクは“まるで暮らしているような旅”がしてみたい、と思っていた。だから同じ宿で数日泊まって同じような毎日を過ごそう、と決めていた。それをするのに、小さな村『チェンカーン』は最適だった。

とても静かな村である。
朝はにわとりが鳴いている。人はそんなに歩いてない。バンコクのような喧騒はない。けたたましい車のクラクションもない。
とても静かで、涼しいのだ。

この村での主な登場人物は、4名。カフェの店主バナナマンと、女性ふたり組のタイ人旅行者トリプルA、そしてナゾの墓地マンである。
バナナマンはおじさんで日村さんに似ているから心の中でそう呼んでいた。
トリプルAは、ふたりしてタイ語のAの発音を3つ根気よく教えてくれたから心の中でそう呼んでいた。トリプルAは、ようするにユニット名だ。
墓地で話した妖艶なおじさん、墓地マンである。読み方はボチマン。
彼らについても、また書くことにしよう。

旅行者が少なかったのも、気に入った一つかもしれない。行く先々で、ニッポン人ははじめてだ、と何回も言われた。ほう、ひょっとしたら、ボクは『チェンカーン』にいたことのあるニッポン人の中の、数少ないうちの一人かもしれない。
田舎で静かで眺めもよくて、これがイサーンとよばれる東北部なのか、「いい!」と、思ったんだろうな。


この時はまだスリン島に行くことになるなんて、知るよしもない。しばらく、『チェンカーン』に住むように暮らしているように過ごしてみよう、と思っていただけだ。

『チェンカーン』とプリントされたTシャツは、今となってはタンスの中もどこを探しても見つからない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?