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トリプルA/【ひとり旅】すばらしきかなスリン島③

チェンカーンの朝は寒い。ボクはぶあつくて裏地がふわふわのパーカーを着ていた。昼は気温が上がって半袖Tシャツで過ごせる。
キンと冷たい水で顔を洗う。車のやトゥクトゥクなどのエンジン音はない。あるのはにわとりの鳴き声。あぁここは本当にタイランドなのだろうか。

『チェンカーンゲストハウス』に宿泊していた、ふたり組のタイ人女性とよくお話しをするようになった。当時30代の後半(たぶん)。ボクは30代前半。旅行で来ているみたいだ。へぇ、タイの人も旅行するんや、って不思議に思った。が、そりゃそうだ、われわれだって国内旅行するじゃないか。

タイ語でAの発音を3つくらい教えてくれたので、ボクは彼女らを“トリプルA”と心の中でそう呼んでいた。便宜的なユニット名である。
ちなみにタイ語の発音はとてもむずかしい。そしてこの発音のむずかしさで、数日後に大変な目にあうことになる。ま、それはまた違う話。


トリプルAの一人は、『X JAPAN』のファンだ、と熱っぽく言っていた。ボクは『X JAPAN』の熱心なファンではなかったので、そこまでアツい話はできなかった。ちょっと悲しい。
もう一人のトリプルAは、フェイスブックについて教えてくれた。でもボクはフェイスブックについて、何も知らなかった。2010年。その当時の日本ではフェイスブックはまだそこまで一般的ではなかった。
『X JAPAN』もフェイスブックも知らない。変なニッポン人だと思われたかもしれない。

ニッポンに帰国後、アカウントをつくって、トリプルAのひとりと友達になり、写真をいただいた。ありがたし。


トリプルAのひとり
トリプルAのふたり

そうだ。
これは托鉢(たくはつ)の時の写真だ。


早朝から、修行中という仏教徒(たぶん30人くらい)が、托鉢でゲストハウスの前に来るのだと言う。

托鉢(たくはつ、サンスクリット:pindapata)とは、仏教やジャイナ教を含む古代インド宗教の出家者の修行形態の1つで、信者の家々を巡り、生活に必要な最低限の食糧などを乞う(門付け)街を歩きながら(連行)、または街の辻に立つ(辻立ち)により、信者に功徳を積ませる修行。乞食行(こつじきぎょう)、頭陀行(ずだぎょう)、行乞(ぎょうこつ)とも。

Wikipedia

ボクはニッポン人でありタイ人ではないが、仏教徒であれば大丈夫だから、ぜひ一緒に托鉢に参加しよう!とトリプルAは言ってくれた。たぶん、こんなカジュアルな感じではなかったと思けれど。もちろん食糧を乞う側の僧侶ではなく、お布施、提供をする側である。

オレンジ色の袈裟を着たお坊さんが並んでいる。
静かさと重々しさ、それから神聖さがあった。感じたことのない感覚だった。そしてとても寒かったことを覚えている。こんな時でもトリプルAの頭では『X JAPAN』が流れているんだろうか。そんなわけないか。

ご飯だったか、お金だったかを、托鉢にきた僧侶が持ってるカゴに入れた。あ、なんか悪いことしちゃいけないな、と思った。ひょっとすると少し徳を積んだのかもしれない。

おぉ、なんか土地に近づいた気がした。
これこそが、旅の醍醐味である☆
トリプルAのおかげである。ありがとう。

ちなみにトリプルAは、メコン川クルーズにも誘ってくれた。
カヌーで対岸のラオスまでいくというのだ。
行く行く!行く〜!
でもこれは日本人はムリだった。
国を渡るからかな?トリプルAは一緒に行けないことをとても悲しんでくれた。
一緒にカヌーに乗ることはできなかったけれど、誘ってくれたのはとてもうれしかったな。


チェンカーンでトリプルAの存在は、とても大きかった。タイの文化に触れることができた。

何年も前の旅でボクが覚えているのは観光地ではない。今でも覚えているのは、だいたい現地で知り合った人である。つまりボクの場合は、現地人と絡めば絡むほど、旅は楽しくなるのだった。

でも基本的には人見知りである。その時に知り合った外国人とともに、朝まで飲み明かすぜ〜!っていうようなタイプでもない。いわゆる旅の達人ではない。
だからこそ、じっくりゆっくりのんびりやりとりのできる現地の人々には、とても感謝している。

この時、スリン島の存在は、まだ知らない。





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