カフェバナナマン/【ひとり旅】すばらしきかなスリン島⑤
タイの東北部 の街、チェンカーンの朝は早い。完全に明るくなる前、肌寒い。霧が出ているのか、とても幻想的だ。
今日はこの旅を決定づける人物に会うことになる。寝起きのボクはそんなこと、もちろん知らない。
これは、2010年2月の話だ。
ここチェンカーンで出会うタイ人は、トリプルA、墓地マン、そして最後のバナナマン。バナナマンが最も濃いキャラだった。
お笑い芸人のバナナマンの日村さんに似てたからそう呼んでいた(もちろん心の中で)。175cmくらいの猫背で、体は少しふっくらしている。たぶん40歳くらいだ。
髪の毛が耳くらいまでのおカッパで、前髪がぱっつん。髪はツルツルしてて艶やかだった。バナナマン以外のあだ名は思いつかなかったようだ。
そしてバナナマンから、スリン島の話を聞くことになる。
◆◆◆◆◆◆
チェンカーンの短いメインストリートに面してあったカフェ。バナナマンはそこのオーナーだ。オーナーと思っているのはボクだけで、ホントは雇われ店長なのかもしれない。
ま、そんなことはどうでもいい。
ボクはよくそこで朝食や昼食などをとっていた。何回も通っていると、自然と会話をするようになる。
一度、トイレを借りて大きい方をさせてもらったのだが、トイレットペーパーを使い切ってしまった。スペアが見当たらなくて、けっきょくそのままにしてしまった。
ボクがトイレからでると、なかなかの勢いでバナナマンがトイレに入っていった。あの慌てようは、きっと大きい方だ。どうしよう。紙を使い切ってしまった、スペアもない。大丈夫かバナナマン。
◆◆◆◆◆◆
数日後、バナナマンが聞いてきた。
「これからどこへ行くのか」と。
「え?」
あ、旅はここが執着ではないのだ。
漠然と(海でも見に行こうかな)と思っていたけれど、具体的なことは何も決まっていなかった。
どこへ行こう?オレはどこへ行きたい?
「海にでも行こうかと思ってる」
「プーケットとかタオ島はどうかな?」
と言うと、
「ベリーツーリスティックで、ベリーエクスペンシブやから、そこはやめとけ。スリン島へ行けばいい」
と、バナナマンは言った。
スリン島?
知らない。初めて聞く島だ。
地図で確認してみる。おぉ、載ってる。実在する島のようだ。
物価はとても安いし、のんびりしてるし、そこにいる人はクレイジーじゃないからおすすめだ、とバナナマンは教えてくれた。
スリン島か…。いいかもしれない。知らない島っていいかもしれない。旅とは出会いだ。
出会った人から「ここはいいよ」って教えてもらったところに行けばいい。それも立派な出会いだ。
そんなことを考えていたら、スリン島しかない、と思い始めた自分に気がついた。
ふむ。
スリン島へ行こう。そうと決まれば話は早い。よし、明日出発しようと決めた。
◆◆◆◆◆◆
どれどれ。
スリン島に行くには、まずバンコクへ戻る。バスで海岸の街までいって、その街から船に乗る。そしてスリン島へ。
楽しそうだ。船だぜ☆
ここチェンカーンから、バンコクへ行くには…ムムム!経由便のバス停と違って、直行便となると、バス停が遠い(当時、たしかそうだった)!
「おいおい、明日、バス停まで車で行くから、乗っていく?もうひとり車にのるけど」
バナナマン!いい人すぎる!もちろん乗ってく!
騙されるとか、高額なチップを請求されるとか、この時はまったく思わなかった。実際に何もなかった。バナナマンは本当に、純粋にいい人だったのだ。
これで、スリン島へ向かうことになった。わくわくだ。
もちろんスムーズにことは進まない。これからもトラブルは起こり続ける。これが旅だ。これらのトラブルを楽しめるかが、こういう旅では大事になってくることを、ボクはよくわかってる。
さあ、明日はスリン島へ出発の日。
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