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その前に、

 「ランドスケープデザイン」を考える前に、「ランドスケープとはなにか?」「デザインとはなにか?」、ということを先に考えてみたいと思います。

 ランドスケープデザインという言葉はニューヨークのセントラルパークができる際に生まれた言葉らしいです。
 "landscape"は直訳すると風景。つまり、風景をデザインすることがランドスケープデザインと言え、風景や景観を構成する諸要素をデザインすることと捉えるとよいかと思います。(「風景」という言葉も色々な意味を持っており、ややこしいので注意して使うとよい気がしています)
 特に日本国内では捉え方が違ったり、人によって考え方が異なったりするので、この機会にクジラとしてはどう捉えていくかを考えてみました。


ランドスケープとはなにか?

 ランドスケープデザインとは何かを考える前に、ランドスケープとは何かというところを考えてみようと思います。
 ランドスケープという言葉はわりと耳に入ることが多くなってきている印象ですが、ランドスケープデザインはあまり知られていないという印象があります。ランドスケープ=風景という意味からさまざまなところで使われていますが、デザインにおけるランドスケープに関しては、建設や都市計画界隈の人こそ知れど、まだあまり広くは使われていないように思うところです。
 自分は自己紹介でランドスケープデザインに携わっていることを伝えますが、相手から「どんな職業?」、と聞かれることもいまだに多いです。笑

 前段でも述べたように風景や景観の諸要素をデザインすることなのですが、こと日本の建設業界では建物の周りのこと=外構や植栽の計画・大きな造園計画やその設計のことと捉えられていると思います。再開発やマンション外構などでも最近はランドスケープという単語が使われていることも多いです。
 外構や植栽の設計というと、アプローチや緑・樹木を入れることと捉えられ、敷地内の屋外全般のことをどうするか考えもするので、外構デザインや敷地デザインいう捉え方をされることもしばしば。ときには建築の配置も一緒に検討することも。このあたりが現在の日本で一般的にイメージされるランドスケープデザインかと思います。
 一方で、自然公園や都市公園の計画や設計も、ランドスケープの仕事だったりします。国土や都市における風致をどうするか、環境に配慮した計画を求められます。公園だけでなく都市空間のオープンスペース、通りや広場なども対象です。つまり、建築の有無にかかわらず、屋外といえる箇所のデザイン全般です。
 対象となるスケールも様々で、建築的なスケールだけでなく、国土計画や都市計画といったスケールも対象になるのがランドスケープに含まれると考えてよいかと思います。
 いずれも整備であることには変わりなく、大きなくくりとしては建築や土木と同様に開発分野です。しかし、建築や土木以上に環境に配慮することが求められるので、「環境にやさしい開発」というところでしょうか。

 建築や土木に造園といった分野を含むとも捉えられるので、どれとも言い切れないところがありますが、特徴としてはそれら分野をまたぐ、架け橋になるようなものと捉えてもらうといいかもしれません。
 架け橋というと聞こえ良すぎるかもですが、それぞれの分野はわりと領域や役割を明確に線引きしていたりします。ランドスケープはその間を取り持つ分野と考えてもらうのが良いような気がしています。
 抽象的な表現でわかりづらいと思いますが、ひとまずこのようにお伝えしてみます。

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 参考画像(というには極端な事例ですが)として、都市計画・建築・ランドスケープそれぞれの平面図、土木・造園・ランドスケープの空間それぞれのイメージを下記に載せてみます。
 それぞれのスケール感で表現できるものが違ったり、重きを置いているポイントが違っていることがなんとなく感じられるかと思います。

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広域でディテールが捉えづらい都市計画の図
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ディテールまで把握できるも周辺のことがわかりづらい建築の図
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都市計画ほど広域でなく、建築ほど細部を確認できないが、敷地周辺まで見れるランドスケープ図


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 敷地内のことに加え、境界外のことも合わせて考えるのがランドスケープと考えています。それ故にコントロールできない部分もあり、どこか領域が曖昧で、それぞれのバランスを考える必要がある、というのがこのランドスケープ分野が持っている特徴かと思っています。


デザインとはなにか?

 デザインという言葉は、日常的に耳にするもので、特に説明が必要なものではないと思いますが、生業として関わっている人たちのデザインと世間のデザインという認識が大きくズレている気がしていて、その点を記載してみようと思います。

 世間一般的には辞書にも記載があるように、ものづくりにおける意匠であったり、図案や模様を考案することという意識が強いように見受けられます。

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 もちろんこれはそのとおりで、工業製品や街に溢れるサインやポスター、伝統の工芸品から建築まで、しいては環境やwebの世界まで様々なものの意匠・それらを設計すること指します。

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 ただし、その部分は実はうわべの部分であって、デザインを生業としている人たちは、「デザインの本質は情報を整理して、想いを伝えること」と考えています。それを「コミュニケーション」と捉えているデザイナーも多いです。その本質の表層に意匠として、姿・形が出てくるものとしています。

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 何を言いたいかというと、「形を考え、つくること」だけでなく、「なにかを伝えるために、表現すること」がデザインの本質と捉えています。


 様々な考え方があるランドスケープとデザイン、それぞれの分野をクジラとしては上記のように考えて活動に取り組んでいます。
 なぜこれらをはじめに宣言したかというと、このあたりを共通認識として持てると、実際に取り組む際に方針の共有がしやすく、同じ方向を向いて取り組み始める可能性が高くなるためです。

 これらランドスケープとデザインの本質を考えた上で、クジラの取り組むランドスケープデザインとは何か?というところを考えてみようと思います。

追記1:改めて読んでいると上手くまとめられていませんね。。近いうちにもう少しわかりやすく整理してみようと思うところです。しばしお待ちください。
追記2:2024.5.14だいぶ修正しました。

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