雪解け

北国には雪まつりがあるそうで。冷やし中華が流行り出す頃まで、溶けずに残っている。

一見冷たいものこそあたたかいのだと、かまくらが証明済みらしい。私はそれをマンガでしか知らないけれど、入れるものならあなたのもっと内奥まで、入って、息の詰まるほど、側に寄り添っていたかった。

自然消滅するのが自然だったから、拙く光るろうそくを無残に吹き消すように、耐震構造だと信じていた私とあなたの関係は消えゆく。垂れたろうそくの涙は、それでも時間が経てば凝結して、きちんと過去になる。

雪かきだけで一日が終わって、春が終わって、だからもう私には四季じゃ足りないのだと自暴自棄になって。

それでも地球は動いている。涙の代わりに汗が駆け抜けていって、おかげで蜃気楼じみた現実を見れるようになった。ベタつく衣服を脱ぎ捨てるのと同様な身軽さで、夏の誘いが舞っている。

だからもう、全部雪のせいだった。あなたが私をきらいだと告げるのに負けないほど、私は冬に怯えていた。

ただそれだけの、昔話。浄化済み。

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