見出し画像

「1兆ドルコーチ」という本を読みました。

「1兆ドルコーチ」というビジネス書を読んだのですが、これが想像以上の良書だったので、自身の勉強のため note へ記録します。こちらの記事は投資とあまり関係のない話しになりますので、興味のない方はそっと閉じてください。

本書は、アメフトのコーチからビジネスの世界へ転身したビル・キャンベルという人物の仕事について取り上げられた本です。

ビル・キャンベルは、Apple創業者のスティーブ・ジョブズと無二の親友であり、メンター・コーチとして毎週日曜日に散歩しアドバイスをしていたと言われます。

また、Google創業者のラリー・ペイジやセルゲイ・ブリンや、amazon創業者のジェフ・ベゾス、そしてTwitter創業者のジャック・ドーシーといった名だたる偉人達の経営相談役としてコーチした共通の師がビル・キャンベルです。

本書の中で、「優れたマネージャーであるためには、優れたコーチでいる必要がある」ということが述べられています。チームのマネジメントや部下の教育に携わるビジネスマンへ向けた内容となっています。部下の指導・育成などに関わる人にとっても本書から学べることはとても多いはずです。

こちらの記事では、仕事ですぐに取り入れることができそうなことや、特に参考になった考え方へ焦点を当ててまとめます。もっと詳しく内容を知りたいという方は、ぜひ本書を手にとってもらえたらと思います。

まず前提として、ビルの考え方には【人がすべて】という信条が根底にあります。(以下引用)

【人がすべて】
どんな会社の成功を支えるのも、人だ。マネージャーの一番大事な仕事は、部下が仕事で実力を発揮し、成長し、発展できるように手を貸すことだ。我々には成功を望み、大きなことを成し遂げる力を持ち、やる気に満ちて仕事に来る、とびきり優秀な人材がいる。優秀な人材は、持てるエネルギーを開放し、増幅できる環境でこそ成功する。マネージャーは「支援」「敬意」「信頼」を通じて、その環境を生み出すべきだ。
「支援」とは、彼らが成功するために必要なツールや情報、トレーニング、コーチングを提供することだ。彼らのスキルを開発するために努力し続けることだ。優れたマネージャーは彼らが実力を発揮し、成長できるよう手助けをする。
「敬意」とは、一人ひとりのキャリア目標を理解し、彼らの選択を尊重することだ。会社のニーズに沿う方法で、彼らがキャリア目標を達成できるよう手助けをする。
「信頼」とは、彼らに自由に仕事に取り組ませ、決定を下させることだ。彼らが成功を望んでいることを理解し、必ず成功できると信じることだ。

「人材が会社の資産として扱われるべき」という考え方はだいぶ一般化してきていると感じますが、仕事の上で具体的なアクションにまで落とし込めているかはまだまだ微妙な印象なので、その点意識すると優先順位や時間の使い方も変わってくる気がしました。

次はマネージャーとしての考え方についてです。(引用)

【最高のマネージャーの条件】
優れたコーチは、選手をどうやって良くするかを夜も眠らずに考える。選手がもっと力を出せるような環境を作ることに喜びを感じる。コーチというものは、絵に的確に筆を入れようとする画家に似ている。コーチが描くのは人間関係だ。普通の人は、他人を良くする方法を考えるのに時間をかけたりしない。だが、コーチはそれをやる。それがビル・キャンベルのやったことだ。分野は違ってもいつも同じことを彼はやっていた。
「夜眠れなくなるほど気にかけていることは何か?」とは、企業幹部に聞かれる定番の質問だ。ビルの答えはいつも同じ、部下の幸せと成功だった。

一人ひとり能力を最大限発揮してもらうためには、得意なことや強みを観察して、適材適所を意識したチーム作りがわりと重要だと思っています。「どうすれば、もっと活躍してもらうことができるか?」ということを考えることも、ただ頭で考えるだけでなく、スプレッドシートなどで一人ひとり整理することも大切だなと感じました。

次はチームミーティングについてです。(引用)

【旅の報告から始める】
エリック・シュミット(Google元CEO)は10年以上の間、毎週月曜の午後1時にスタッフミーティングを行っていた。スタッフミーティングといっても、あなたが出たことのある普通の会議と多くの点で似たようなものだ。議題があり、テーブルを囲む全員が概況を報告し、こっそりメールをチェックし…という、おなじみの光景だ。
だがエリックは普通とは違うことを一つやった。スタッフが部屋に入って腰を落ち着けると、まず一人ひとりに週末何をしたかを尋ね、旅行帰りの人がいれば簡単に旅の報告をしてもらったのだ。
スタッフにはラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンもいたから、カイトサーフィンの話や極限トレーニングの世界の最新報告もよくあったが、エンジニアリング部門を率いるアラン・ユースタスのゴルフのスコアなど、日常のありふれた話が中心になることもあった。エリックも出張帰りのときは、自らレポートを提供した。訪れた都市をGoogle Mapにピンで表示してスクリーンに映し出し、都市ごとに順を追って、旅行のことや旅先で見た興味深いことを報告した。
こうしたやりとしは、一見行き当たりばったりで仕事とは無関係にも思えるが、実はビルが長年かけて開発し、エリックとともに磨きをかけたコミュニケーション法の一環だった。
目的は二つ。一つは、チームメンバーが、家庭や仕事外の興味深い生活を持つ人間同士として、お互いを知り合えるようにすること。二つ目は、全員が特定の職務の専門家や責任者としてだけでなく、一人のグーグラーや人間として、最初から楽しんでミーティングに参加できるようにすることだ。

打ち合わせでいきなり本題から入る人ってわりと多いですが、コミュニケーション能力の高い人ほど、オープニングの雰囲気作りが上手な印象があります。

【職場環境とパフォーマンスの相関性】
ビルとエリックは、楽しい職場環境が高いパフォーマンスと相関していることを理解し、そうした環境をてっとり早く生み出すには、家族や楽しいことについて話すのが一番だと知っていた。
そのあと本題に入り、経営判断について話し合う際には、専門分野に関係なく全員が意見を述べるよう、エリックは求めた。一人ひとりが自分の体験を語り、人間同士として交流するというこの単純なコミュニケーション手法は、実は意思決定を改善し、仲間意識を高めるための手段だったのだ。
ディック・コストロ(Twitter元CEO)は旅の報告をする習慣について、「最初はすごく変な気がした」と言う。彼もビルにこの方法を教わった一人だ。「でもいざやり初めて、実際に様子を見てみると、こんなに変わるのかと驚いた。全員の関わり合い方が変化し、共感力が高まり、ミーティングの雰囲気が良くなったんだ。」ディックは自分がメンターをしているCEOのスタッフミーティングに出たときのことを話してくれた。そのミーティングはいきなり重要な話題や問題から始まり、親睦のためのやり取りは一切なかった。「それがどんなにギスギスしたものかを思い知らされた。チームが全体としてうまく機能しているのか、しっかりまとまっているのかが、まったくわからなかった。」

全員がオープンな気持ちでミーティングに望むことはたしかにハードルが高いです。しかし、このような雰囲気を作れないのなら、それは心理的安全性の確保や、メンバーとの信頼関係構築ができていない自身に原因があると思った方が良いのでしょう。

次はコミュニケーションの重要性についてです。(引用)

【コミュニケーションが会社の命運を握る】
ビルはコミュニケーションが会社の命運を握る、とまで考えていた。君たちが理解していることを社員全員にしっかり理解させろと、口を酸っぱくして言った。何かをはっきり伝えたとしても、十分理解されるまでには何度か繰り返す必要がある。
実際、2002年のサザンメソジスト大学の研究によると「誰に何を伝え、共有すべきか」を知ることが、マネージャーの重要な仕事だという。この知識の共有化は、正しくやればチームのパフォーマンスを高める効果があるため、時間をかけてやってみる価値がある。
ビルはその他のミーティングの運営にも最新の注意を払うよう、私たちを促した。
「1on1を正しくやる」と「スタッフミーティングを正しくやる」が、彼のマネジメントの最重要原則の筆頭にあった。この二つのミーティングは、幹部が会社運営に利用できる最重要ツールで、それぞれ思慮深く行う必要があると、ビルは考えていた。
スタッフミーティングは1on1以上に、最も重要な問題と機会について話し合う場でなくてはならない。
「全員に共通認識を持たせ、適切な議論を行い、意思決定を下すために、ミーティングを利用するんだ」
重要な問題のほとんどは複数の部門に関わる問題だし、なにより全員が一堂に会して、他のチームで何が起こっているかを理解し、集団でそれを議論することによって、共通認識ができあがり、部署の垣根を超えた協力関係が生まれる。
チームミーティングが、メンバーの積極的な関与を促すのに最適な場であることが、様々な研究で示されている。ミーティングにおいてメンバーの積極的な関与を促すには「適切なミーティングを行う」「全員に発言権を与える」「時間管理を徹底する」といった要素が重要だと指摘している。

定例ミーティングは、目的を明確にしておかないとすぐに進捗共有だけの場になってしまいます。「ミーティングは最も重要な問題と機会について話し合う場でなくてはならない」という意識を持つことはとても大切と感じます。

次は 1on1 についてです。(引用)

【同僚の意見に注意を払え】
ビルは1on1の準備を周到に行った。彼の考えるマネージャーの最も重要な仕事は、部下が実力を発揮し、成長し、発展できるように手助けすることだ。1on1はそれを行う絶好の場である。ビルはいつもミーティングを「ムダ話」で始めたが、彼の場合、それはそこまでムダな話ではなかった。一般に職場での雑談はほとんどが通りいっぺんのものだ。「お子さんは元気?」と軽く聞いたり、朝の通勤の話をしてから、ビジネスの本題に入る。だがビルとの会話はもっと意味があり、奥深かった。ビジネスの問題より、プライベートな話題の方が本題なのではと思うことすらあった。実際、彼は本心から人々の生活に関心を持っていたのだが、そうした会話には強力な高価があった。2010年の研究によれば、こうした「意味のある」会話はただの雑談に比べ、幸福感を高める効果が大きいという。ビルはムダ(ではない)話をしてから、仕事の進み具合に移った。何に取り組んでいるんだ? うまくいっているのか? 何か力になれることはあるか?
続いて、必ず同僚との関係に話題を移した。ビルは上司や上役よりも同僚との関係を重視した。

1on1は、聞き役に徹する意識が何より重要だと思っているので、適切な質問を用意して、相手の話しを真剣に聞くことに意識を集中させます。そして、相手にはプライベート含め自由に話しをさせるようにしています。

どれだけ相手の話しを真剣に聞いているかどうかは、ボディランゲージでわりと伝わってしまうものなので、何を話すかということよりも、非言語にも注意を払うように意識しています。

本書の内容を参考に、1on1 やマネジメントに対して意識することを列挙しておきました。

■1on1 や業績評価のためのフレームワーク

・KPIについて
・スケジュールの進捗および目標
・顧客からのフィードバック
・プロダクトの品質
・予算数値
・他部署や同僚との関係

■マネジメントに対するチェック事項

・部下を指導、コーチできているか?
・採用に全力を尽くしているか?
・勇気ある行動を取るよう部下を駆り立てているか?
・常に前進しているか、向上し続ける方法を考えているか?
・新しいテクノロジー、プロダクト、手法を検討しているか?
・自分と業界トップや世界トップの人材を比較しているか?

以下はコーチングについてです。(引用)

彼らが率直に認識している部分はどこで、認識できていない部分はどこなのか? 彼らに自己認識を促し、見えていない欠点に気づかせるのが、コーチの仕事だ。人は自分の欠点について話したがらないからこそ、正直さと謙虚さが必要になる。自分自身とコーチに対して正直になり、自分が完璧でないことを自覚できるほど謙虚になれなければ、コーチとの関係を深めることはできない。

最後に、業務を統括者は、その職務においてCEOより優れてなくてはならないという話です。(引用)

【正しいプレーヤーを見つけよ】
「CEOのためになにかの業務を統括する人は、その職務でCEOより秀でていなくてはならない。人事やITの代表として行動するときも、ほとんどの場合は会社全体を代表するつもりでいてもらいたい。とびきり聡明で有能な人材を集めろ。君たちに必要なのは、その集団から出てくる最高のアイデアだ」
ビルは4つの資質を人に求めた。まずは「知性」。これは勉強ができるということではない。様々な分野の話を素早く取り入れ、それらをつなげる能力を持っていることだ。ビルはこれを「遠い類推」(かけ離れたものごとをつなげる発想)と呼んだ。そして「勤勉」であること。「誠実」であること。そして最後に、あの定義の難しい資質、「グリット」を持っていること。打ちのめされても立ち上がり、再びトライする情熱と根気強さだ。
ビルはこの4つの資質があると思える人には、他の多くの欠点に目をつぶった。彼は面接で候補者をこれらの観点から評価する際、その人が成し遂げたかだけでなく、どうやって成し遂げたかを尋ねた。

社長に頼りすぎている自分がいるので、社長の視点に立って物事を考え、ニーズを汲み取り、要求以上の成果を出すことが基準と心得るべき。そのような意識でなければ、給料以上の働きをすることはおそらくできず、昇給・昇進も望めないのでしょう。


最後に

本書は30~40代のチームのまとめ役を担っている人にとっては学ぶことがとても多い一冊だと感じました。

こちらの記事では主に、マネージャーとしての考え方やコミュニケーションの重要性についてまとめました。

少し長くなってしまいましたが、最後までご覧いただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?