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企業調査_ミダックHD(6564)

ミダックHD(以後「ミダック」とします)の株価が、2021年9月につけた6,280円から1,200円以下にまで大きく下がっていたので、投資検討するため調査しました。

掲載元:株探

業績は右肩上がりで成長していているのですが、株価はピークから4分1以下にまで下がって、1,700億円あった時価総額も400億円にまで下がってます。

掲載元:株探(2024年8月9日)

直近10年分の業績をまとめてみましたが、売上高・営業利益ともに素晴らしい伸び率です。売上原価率や販管費率も年々改善傾向にあるため、同業他社と比べても高水準な売上高営業利益率となっています。

マネックス証券(銘柄スカウター)より作成

業績面はかなり優れているのに・・・
なぜこれほど株価が下落したのか?
ミダックは良い投資対象となるか?
調査してみたいと思ったので、その記録をnoteに残します。


会社はなにで稼いでいるか?

ミダックは産業廃棄物・一般廃棄物の収集運搬や処分を手掛けている企業です。

#産業廃棄物とは
事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、廃棄物処理法で規定された20種類の廃棄物のこと。産業廃棄物のうち、爆発性・毒性・感染性のある廃棄物を特別管理産業廃棄物という。

#一般廃棄物とは
廃棄物処理法で規定された産業廃棄物以外の廃棄物のこと。一般廃棄物は事業系一般廃棄物・家庭廃棄物・特別管理一般廃棄物に分類される。

売上高の約100億円(2024年6月期)は次のように分類されます。

1.廃棄物処分事業
 
- 約84億円(売上構成比:85%)
 - 売上高営業利益率53%
 - 自社施設による廃棄物処理サービスの提供

2.収集運搬事業
 
- 約13億円(売上構成比:13%)
 - 売上高営業利益率17%
 - 固形物から廃液まで多様な廃棄物を運搬

3.仲介管理事業
 
- 約1億円(売上構成比:2%)
 - 売上高営業利益率64%
 - 当社グループ以外の処理業者の紹介・サービス提供

同社の特徴は、収集運搬から中間処理、最終処分まで請け負う一貫処理体制を構築できている点です。

#収集運搬とは
廃物の排出場所から廃棄物を回収し、処理場まで運搬する業務。同社は固形物から廃液まで多種の廃棄物を運搬する車両を保有しており、収集運搬料や運搬距離などに応じて排出事業者から料金を受け取る。

#中間処理とは
最終処分に先立って廃棄物を原料・減容化・安定化、無害化、資源化すること。廃棄物の性状に応じて焼却、粉砕・選別、圧縮・成形、中和、脱水、溶融などの処理を行う。

#最終処分とは
廃棄物を埋め立て処分、海洋投入処分、再生に寄って最終的に処分すること。埋立処分は、廃棄物の環境への無用な拡散や流出を避けるために、陸上や水面の限られた場所を区切って貯留構造物を造成し、廃棄物を埋め立て貯留して年月をかけて自然に戻そうとするもので、安定型最終処分場・遮断型最終処分場、管理型最終処分場の3つに分類される。

ミダックは「廃棄物処分事業」が売上全体の85%を占めています。営業利益率も53%あり、企業全体の利益の9割以上を占めています。

同社の業績に決定的に貢献しているのは「廃棄物処分事業」であるため、当事業を主な分析対象とします。

①中間処理
ゴミ処理場のようなイメージで、収集運搬した廃棄物を最終処分しやすくするために、破砕・焼却・溶融・分別などを行い、廃棄物の量を減らすのが中間処理です。
ミダックは、多種の廃棄物を中間処理できる施設を保有しており、一般的な汚泥・廃液だけではなく、有害物質を多く含んだ廃棄物や、引火性、腐食性の廃棄物の処理にも対応できるよう「特別管理産業廃棄物処分業」の事業許可を取得しています。

②最終処分
リサイクルが困難な廃棄物などを埋め立てます。最終処分場は、廃棄物処理法に寄って遮断型最終処分場・安定型最終処分場・管理型最終処分場の3つに分類され、それぞれの処分場において埋立処分できる産業廃棄物と最終処分場の構造基準・維持管理基準が定められています。
ミダックが所有するのは、安定型最終処分場と管理型最終処分場であり、遮断型最終処分場は所有していません。

#遮断型最終処分場とは
埋立処分基準に適合しない有害な産業廃棄物および有害な特別産業廃棄物を埋め立てる処分場。

#安定型最終処分場とは
有害物や有機物などが付着しておらず、雨水等にさらされてもほとんど変化しない廃棄物を埋め立てる処分場。

#管理型最終処分場とは
埋立処分判定基準を満たした産業廃棄物および安定型産業廃棄物を埋め立てる処分場。

なぜ稼げているのか?

同業他社と業績や経営指標を比較したところ、ミダックは規模こそ小さいものの営業利益率36.5%はかなり高水準でした。

ミダックは収集運搬・中間処理・最終処分の一貫した廃棄物処理体制が構築できていて、全工程をカバーできる体制が運用コストの削減に寄与しています。公開資料によれば、この一貫体制が収益性に大きく貢献しているとされています。

しかし、同業他社の大栄環境(9336)やTREHD(9247)も同様の一貫処理体制を構築しており、この点だけでミダックの高利益率を説明することは難しいと考えられます。このため、ミダックの収益構造をさらに詳しく分析することにしました。

ミダックの利益の大部分を占める廃棄物処分事業は、中間処理と最終処分の二つに分けられます。比較対象として、ダイセキ(9793)は最終処分場を持っていないことが、収益力の違いに影響を与えているかもしれません。

この点から、最終処分場の有無や規模が重要な利益源泉となっている可能性が高いと感じたので、最終処分場に関する各社の公開情報について調べてみました。


■最終処分場について

ミダックは稼働中の最終処分場を3つ保有していて、2022年2月に稼働開始した「奥山の社クリーンセンター」の埋立容量が圧倒的に大きいです。

掲載元:https://www2.sanpainet.or.jp/zyohou/index_u5.php?Param1=8&Param2=009796&Param0=&menu=2

大栄環境(9336)も最終処分場を保有しているのですが、中間処理施設も併設されており、公開情報もミダックと異なるので単純比較できませんでした。

掲載元:有価証券報告書

また、大栄環境(9336)の総許可容量は合計31,793,000㎥で、総許可容量からすでに廃棄物や土壌を埋め立てした容量を除いた将来積立可能な残容量は10,103,000㎥(2024年3月末時点)とありました。

TREHD(9247)は次のような情報が公開されており、2024年に1,000,000㎥ほど埋立量が増加されたようです。もともとの埋立地がすでに満杯だったのなら、2024年3月期の営業利益率8.4%という数字も納得です。

掲載元:有価証券報告書

以上の内容から、最終処分場の規模と利益率には一定の相関が見られるため、産業廃棄物の業界において、最終処分場が重要な役割を果たしていると言えそうです。

ミダックが保有する「奥山の社クリーンセンター」という比較的大規模な最終処分場が、同社の利益の源泉になっているようです。

最終処分場をもっと新設すれば良いのでは?
と思ったのですが、次の3点が大きな課題となるため簡単にはいきません。
(1) 適切な立地の土地を確保する
(2) 周辺住人の理解を得る
(3) 環境への影響に配慮する(河川の汚染・農作物の被害・生態系の影響)

最終処分場の新設は中期的な視点で計画を進める必要があるため、これが競争力を高め、強固な参入障壁になります。なお、ミダックは次の「3つの強み」をさらに強化する方針です。

掲載元:Sustainability_report 2024

今後どのような変化があるか?

現在、既存拠点「奥山の社クリーンセンター」の第2期から第4期の工事が進行中であり、2026年9月の稼働開始を目指しています。

ミダックは事業地域の拡大に注力する戦略で、特に廃棄物の排出量が多い関東地域を含む有望な地域への新規廃棄物処理施設の展開を計画しています。

掲載元:Challenge 80th と中期経営計画

ミダックは、許可取得が容易ではない最終処分場の新設について、候補地を広範囲に設定して開発を推進する予定です。関東進出の第一歩として、2021年11月には埼玉県熊谷市に新規焼却施設用の土地を取得しています。

また、東日本エリアでは、環境調査を行いながら2ヶ所の大規模な管理型最終処分場(各150万㎥~200万㎥超)の計画を進めています。

さらに、新規廃棄物処理施設の展開にあたっては、自社だけでなくM&Aを含む柔軟かつ迅速な対応を取る方針です。

2023年3月期~2027年3月期における拠点開発計画

どのようなリスクがあるか?

①新規最終処分場の開発について
ミダックは事業計画に沿って新たな最終処分場の開発計画を推進していますが、予測できない何らかの自体で開発の延期や中止の判断をせざくなることがあります。
計画が遅延すれば、コストの高い他社の最終処分場を利用する必要性が高まりますし、計画が中止となれば既存の支払額が毀損するリスクがあり、ミダックの業績に影響を与える可能性があります。
ちなみに、ミダックが保有している浜松市浜名区の管理型最終処分場の設置許可に関して、許可権者の浜松市は、反対派住民より設置許可取り消しを求める訴訟の提起を受けています。

②借入金の依存度について
廃棄物処理業は装置産業であり、施設設置には多額の資金を要します。同社の2024年3月期の有利子負債は104億円あり、現金同等物は86億円です。
資金調達は主に銀行からの借り入れに依存しているため、金利の上昇傾向が続いた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

今後どのくらい稼げそうか?

ミダックは、今後の経営指標として経常利益率20%以上、ROE15%以上を目標に設定しています。2024年3月期には売上高9,547百万円を記録し、規模の面では同業他社に劣るものの、営業利益率は36.5%と非常に高い水準を維持しています。

関東進出と事業規模の拡大を通じて収益性をさらに強化する方針で、2027年3月期に売上高100億円、経常利益50億円の達成を目標としています。

掲載元:Challenge 80th と中期経営計画

また、2032年3月期には売上高400億円、経常利益120億円をチャレンジ目標として設定しています。

掲載元:Challenge 80th と中期経営計画

株価水準について

ミダックの業績や株価指標を同業他社と比べたところ、営業利益率やROEといった収益性は優れていますが、PERやPBRといった株価水準は業界平均といった印象でした。

ミダックの株価は、2020年3月の安値386円から2021年9月には6,280円まで上昇し、この期間に約16倍にまで増加しました。

この株価の急上昇は、「奥山の社クリーンセンター」が2022年2月に稼働を開始することへの期待感や、コロナ禍による三密回避の影響でアウトドア活動の増加や家庭内ゴミの増加が予想され、これに対する投機的な買いが集まった結果だと考えられます。

掲載元:株探

ミダックの株価が現在の水準に落ち着いたのは、さすがに買われ過ぎだったので、同業他社と比べても違和感のない水準にまで修正された結果だと思っています。

さいごに

ミダックは一度大相場を経験しているため、再び株価を上げるためには相当な売り圧力を克服しつつ市場の信頼を取り戻す必要があります。

株価回復のカギは、大規模な最終処分場(150万㎥~200万㎥超)の設置にあるはずです。

人口増加や経済成長、自然災害などの要因により廃棄物の総量は増加していますので、ミダックは今後も安定してキャッシュフローを生み出せそうです。

また、長期スパンでの成長戦略を持っていて、業績向上へ向けた種まきを行っているため、時間の経過とともに企業価値も向上しそうです。

2024年8月9日に公表された第1四半期の決算では、2025年3月期の経常利益目標に対する進捗率が29%と順調な滑り出しでした。

掲載元:株探

2027年3月期の売上高100億円、経常利益50億円達成に向けた計画の進行状況を引き続き注目したいと思います。

こちらの記事は、あくまで一つの意見であり、個別銘柄の株価上昇や下落を示唆するものではありません。また、いかなる投資推奨を目的とするものでもありません。投資はくれぐれも自己責任でお願いします。

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