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#280 魔法がとけるとき(前編)

2024年7月5日(金)の出来事

16時にジョーと駅の改札で待ち合わせをして、その後はひなたぼっこの部屋で夕食を食べながら、いい感じになればそのままお泊まりしてもらうつもりでいた。(相手の気持ちはまだ未確認の状態なのだが)ひなたぼっこの中ではすでに交際スタートという妄想も始まっていた。

【前回までのあらすじ⬇️】

急にお泊まりという事態になっても大丈夫なように寝具も準備して、新品の歯ブラシも購入。
そうだ!マーが置いていったカミソリとか歯ブラシは別の場所に移動しておかないと。
それと、マーのマンションに置いてある私の私物も取りに行かないとなぁー…なんて、おぼろげに考えていた。

ところで1つ気になることが…。
初めてジョーと会った日は、最後のグループ分けで会話したので、日が長いとはいえ夜の7時を過ぎていた。改めて日差しの強いこの時間帯、自分の顔を見てみると、年相応のシワとか劣化がはっきりと目立つ。さらには昨年の秋から続いている肌荒れも気になってしまう。

これってもしかして…ジョーは私の顔を見てショックを受けるかも?なんて不安もかすめたのだが…。
もうここまできて隠しようがないし見た目については仕方がないと現地に向かう。


前言撤回😓

待ち合わせの場所には10分以上前に到着したのだが、まだジョーの姿は見えない。まだ余裕があるので一旦化粧室に行き、もう一度身だしなみ等チェック。
2分くらい前に戻ってくると、遠くのほうにジョーらしき人物を発見!
ちょっと緊張するわ〜😥(ドキドキッ)。
そして近づいてご挨拶しようと、ふと顔を見ると…。
えっ?!こんな顔だったっけ( ̄◇ ̄;)
なんか・・・ちがう・・・

初めて会った時は、40代にしか見えないくらい若々しく感じたし好みのタイプに見えたのだけど、明るいところで見るジョーは普通の年相応のおじさんで、好みのタイプでも…ない😨
ていうか間違いなく同一人物なのだけど、少なくとも笑った顔がオダジョーでは…ない。

しかも体型も…袖の長さが前回の服装より短かったせいか、筋肉モリモリの上腕二頭筋が露出していた。
逆に下半身は細身なので上半身だけムキムキの細マッチョ的な体型(高校生の頃は体操部だったらしい)。
ひなたぼっこ的には、マッチョ体型ってあまり好みではない。もちろん「好き」のスイッチが入ったらそんなのはどうでもいいのだけど、ここも大きな勘違いだった。

そしてもう一つ。
ジョーのファッションセンスがイマイチなのは初対面の時に気づいていたのだが、その辺は好きになれば関係ないやと思っていたが、改めてこのときのジョーの下半身に着目すると…。
ウェストがかなり細いのか、サイズ感の合わないジーンズをベルトで調整しているため、背中の部分にめちゃくちゃジーンズのシワが寄っている。最近痩せたのかもしれないけれど、おそらく昔のデニムをそのまま履いているのだろう。
そこもちょっと気になってしまった。

あれだけこの1週間のブログで、「22年ぶりの一目惚れだ」「木星人なので縁があるかも」など散々1人で騒ぎ立てていたのだが、全てがガラガラと音を立てて崩れていった。
キツネにつままれた感じ… 。
何だったの?先週の土曜日のあの高揚感は?

恋愛妄想に走っていたこの1週間のひなたぼっこ、まさに「穴があったら入りたい」というのはこのことで、いっそのことジョーに関する有頂天ブログは削除しちゃおうかと思ったくらい、冷静さを見失っていた自分が恥ずかしい。

そもそもひなたぼっこ、恋愛に関しては冷静にはなれない方なので、こんなことは人生の中で何度もあった。
この1年だと、マッチングアプリの奇跡の1枚の写真のマジック。
写真と実物のイメージが全く違うというのは何度も経験したこときたのでわかるのだけど、リアルに会ってた人でさえこんな感じだからもう始末に負えない。

このパターン、フォトグラファーとの初デートの時にちょっと似ているのだけれど、すでにモチベーションが100から50位まで低下。
ジョーには以前LINEで「好みのタイプ」みたいに送ってしまったけれど、「やっぱりよく見たらタイプじゃなかったので勘違いでした」と今さら言えないし、もっといろいろ話してみないと本質の部分もわからないから、気を取り直して予定通り部屋に招くことにした。

相手はどこかの店でお話しするつもりでいたようだが、こちらは店の下調べもしていなかったし、外食するより生活空間の方が深い話もできて、いろんな部分が見えてくると思ったので。
この時点で、ひなたぼっこの中で「お泊まりプラン」は白紙になった😓。

酒と女

待ち合わせ場所からひなたぼっこ宅まではバスと徒歩で30分程度の距離。初めてのデート妄想プランでは、バスの中で隣り合わせに座った時に、ジョーの手を握ろうかなと思っていたが…却下!

いや、すでにジョーでもないしオダジョーにも失礼なので、ヒデユキ(仮名)と呼ぶ(少し遠目に見ると、笑顔がうっすら似てるけど)。

ちょうど1年前のこの時期、フォトグラファー・カツミも写真と実物とのギャップにショックを受けたり、あまりにしつこくエッチを誘ってくるので嫌になってブロックしたのだが、結局はその後のやりとりで恋に落ちてしまった。

もしかしたらヒデユキともその可能性はあるかもしれないので、気になることをいろいろ聞いてみた。

LINEの中でひなたぼっこに対して「この人なら、と思ったのは間違いではなかったと改めて思った」と書かれていたので、真面目にお付き合いができるのかどうか、将来的にどういうスタンスで考えているのか、そこが1番気になる部分。
イベントで会ったとき、酒が原因で2人の女性と3度の離婚に至り、ものすごく喪失感を味わって後悔していたので、この先は気持ちを入れかえて生き方を変えていくつもりがあるのか?

ヒデユキにその点について確認すると、答えはこうだった。

「今更、自分を変えることもできないし、自由気ままに生きていきたい。そういう自分を受け入れてくれる人を探している」
みたいなコメント。
心を入れかえて…ではなく、あくまで自分を貫くという姿勢らしい。
最後の離婚から約20年の間、特定の彼女をつくらなかったというのも、また同じことの繰り返しで喪失感を味わうのが嫌だからなのかもしれない。つまりこの人は、このままずっと同じというわけか!
もちろんヒデユキの人生なので、否定するつもりは全くないのだけれど…多分私は無理。

そしてほとんどの人が、特定のパートナーができると出会い系サークルのイベントは卒業するものなのだが、
「(二次会に参加した仲良しの飲み友達から連絡があり)今月だと、○日と○日がオフと重なるので参加しようかなと思っている」との話もあった。
仮にひなたぼっこと付き合っても、彼の飲み会参加はこれからもずっと続くということだ。
この時点で、恋のモチベーションは50から25位に低下。

さらに決定打は飲酒問題と女性関係。

仕事をしている時以外は、朝からでも飲み始めるという人は何人かいた。アキヒコ然り、多分フォトグラファーやアツオも酒好きだからこの類に入るかもしれない。

アキヒコは、50を過ぎる頃から飲んだり食べたりが徐々にできなくなってきたのだが、55歳になろうとしているヒデユキは(本人は以前より飲めなくなっていると言っているが、普通の人と比べると)ザルに近いと思う。おそらく他の人に比べると、想像を遥かに超える飲酒量だ。

居酒屋をやっていた時は、5リットルのビールの樽を2日で空にしていたらしい。飲まない私はその辺がぴんとこないけれど、尋常じゃない飲み方なのだろう。
しかも、前回ドライブの話をしたときに、「酒を飲むから運転しない」と言っていたが、実は飲酒運転によってすでに免許取消しになっており、そもそも運転免許すらないことがわかった。本人も飲酒運転の危険を感じているらしく、それ以降免許はとらなかったそうだ。

健康診断ではいつも問題ないらしいが、おそらくアルコール依存一歩手前だと踏んでいる。脳細胞はアルコールによって麻痺しているだろうし、間違いなく同年代の脳より萎縮しているはず。
依存症のような症状が出ていないとしても、常に飲まずにいられない人はヤバいと思っている。

そしてもう一つは、女性との付き合い方について。

私と知り合った同じサークルで、2年位前に仲良くなった女性がいたようだが、飲みに行くなどのデートが半年ほど続いたあと、北海道旅行の話が出たらしい。だが予約をする段階で二日間彼女からの返信がなかったことに腹を立てて、イライラしてLINEのアカウントを削除してしまったとか。
その短絡的なところもちょっと引っかかったのだが、もう一つ気になったのは、一緒に旅行に行く間柄にもかかわらず、「付き合っていたわけではない」と言った点。

ヒデユキのいう恋人(付き合っている)の認識は、「お付き合いしてください」という言葉がないと、それは付き合ってるには入らないらしい。
肉体関係があっても、一緒に旅行に行く関係であっても、飲みに行く関係であっても、彼女ではない。
その辺が既にひなたぼっこ的にはよくわからない・・・。

おそらくヒデユキの周りにそういう関係の女性はたくさんいるのだろうが、特定の誰か1人に絞っているわけではなく、もしかしたらひなたぼっこもその中の1人になってしまうかもしれない。
それはちょっと、私の意図するところと違ってくる。
そもそもが自由奔放な男なので、どれぐらい恋人のことを大切にしてくれる人なのかも想像できない。

下ネタに関してはそれほど話題に出なかったのだが、ヒデユキ曰く、そういうことは地球を何周も回るほどしてきたから飽きたとか。
今は、キスとかハグとかそういう(スローセックスみたいな)もので満足するそうだ。

「性感染症」の話題になった時も、お金を出す相手以外、基本ゴムなしでやると言っていた。
すでに恋人候補から外れていたので、それ以上の事は踏み込まなかったけれど、私と付き合うためにわざわざ検査してくれる人ではないなと感じた。

ひなたぼっこ宅にて

バスを降りて途中のスーパーでアルコール(サンゴー缶を4本)を購入。
交通費をかけて暑い中来てくれたので、それはひなたぼっこが払った。

部屋に着くまでの間に、もうひなたぼっこの気持ちは決まってしまったので、今さら進展もないのだが、誰かと一緒に部屋でご飯を食べたいという欲求もあったので、酒のつまみ程度のもの出してあげた。
本当は、赤魚の煮つけ、生協で買った冷凍パエリア(具材のみ)などを、一緒にキッチンに立って作りたかったのだけど、本人はそんな様子もなかったので提供するのはやめた。

床に座ってアルコールを飲みながら、ひなたぼっこが出した酒のアテ(柿ピー、枝豆、茹でブロッコリー、鰹のたたき、薩摩揚げ)をつまみながら、つまらない話をする。
当初の懸念通り、さほどテンションも高くなく、ときには何を言っているか聞き取れないくらい声が小さくなる時もあるヒデユキ。
共通の話題もあまりなく、やっぱりたいして楽しくなかった。

そもそも、(決してペースは早くないが)水のように酒を飲む相手と、全く飲まなくなったひなたぼっことでは、やっぱり何か相容れないものを感じた。

初めて来る人の家なので、多少遠慮はあったのかもしれないけれど、もっとガツガツおいしそうに食べて欲しかったな。
たいしたものは出してないのだが、食べることで盛り上がりたかったんだけど…残念ながら酒飲みとはペースというか感覚が合わないらしい。

もちろんそれだけではなく、今までずっと夜の世界に住んでいた人と昼の世界に住んでいる私とでは、見ている光景も関わっている人も違ってくるし、当然経験も全然違うだろう。
なんだか会話がもたないので、Netflixとかテレビをつけようかと思ったけれど、彼はほとんどそういうのは見なで携帯ばっかりいじっている人で、興味はないと言われた。
シーンとするのも嫌なので、BGMがわりにテレビをつけておいた…。

マーとのことがヒデユキによって上書きされるかなと思ったけれど、結局それは無理だった。
マーだったら、一緒にドラマやアニメで盛り上がるのになぁとか、マーとはお互いアルコールを飲まない同士なので出した料理は喜んで何でも食べてくれるのになぁとか、そんなことがぼんやり頭をよぎった。
爪も指も短くて蛙の水かきみたいなヒデユキの手を見て、ふと、マーの指と爪が長くてきれいな手を思い出す。

印象に残っている会話

高校生の時にアルバイトにはまってほとんど高校には行かなかったそうだ。アルバイト代だけで月10万円以上稼いでいて、高校の学費も自分で払っていたらしい。
労働時間も月150時間以上?とか言っていたけど…ほんとかな?
そのアルバイトというのがレストランの厨房で調理の仕事を手伝っていたのだが、「将来はコックさんになりたかった」そうだ。
詳しい経歴は聞いてなかったか失念してしまったが、結局サラリーマンのような組織に属するような仕事には1度もついたことがなく、居酒屋とかバーとか酒に関係する仕事が1番長く、当時は羽振りも良かったらしい。

80万位の月収のうち、毎月嫁に生活費として50万円位渡していたが、残りのお金で自分は飲み歩いていてほとんど家には寄り付かなかったとか。彼の男友達は逆で、働かない代わりに毎日家にいた(ひも状態)が、結局2人とも離婚されたとか。
多分ヒデユキからしたら、働かないで毎日家にいる夫よりは、生活費を出している自分の方がまだマシだろうと言いたかったのかもしれないけど、一緒に将来を共にしようと結婚した嫁から見たら、どっちもクズ男だよね。

パン工場で10時間位ひたすらドーナツを裏返す仕事をした時は頭がおかしくなりそうだったとか、夜勤の看護助手の仕事は拘束時間にして14時間位だが、立ち仕事ばかりなので足がパンパンに張ってしまい辛いとか、認知症で徘徊する人の世話が大変だとか…。
まぁそんな彼の仕事の愚痴を話半分で聞いていたり…。

興味のない話が多かったのだけれど、ちょっと心に残っている話題といえば食べ物の事と旅行の話し。
枝豆の茹で方については9分位で切り上げて、お湯を切った後少し蒸らしておくと良いとかなんとか…。
そういう情報はありがたい。
北海道旅行ひとり旅の話は、唯一、心に刺さった。

お見送りの帰り道

時刻は20時半をまわっている。
まだ帰らないのかな〜?と、内心ソワソワするひなたぼっこ。
そろそろ帰らないの?とも言えないし、もちろん泊まっていきなよ、とも言いたくなかったので、彼から切り出すのを待っていた。

するとようやく「そろそろ帰る」と言ってくれたのでほっとする。
この近くにコンビニはないかと聞かれた。駅までの帰り道、アルコールを飲みながら帰りたいらしい。コンビニまで案内して駅近くの通りまで送ることにする。サンゴー缶4本は全然飲み足りないらしく、地元の川崎で飲んでから部屋に帰るらしい。

駅に向かう帰り道、コンビニで買ったアルコールを飲みながらの会話。
「あ!そういえばマカロニサラダ作るの忘れてた!」とひなたぼっこが言うと、
「マカロニサラダ食べたかったなー、好きなんですよー、マカロニサラダ」
「じゃあ・・・次に来た時に作るね」(次があるかは未定だが)

そしてここまで送ったら帰ろうと思ってた横断歩道まで着いた。
だが、青信号なのにヒデユキはなかなか渡らない。
「マカロニサラダ食べたいなぁ。帰りたくな〜い」と突然甘えだして手を繋いでくる。
え?!なになに突然?!
手くらいはしょうがないなと繋がせておいたが、ここまで来て急にそんなこと言われても…。

マーがうちに初泊まりの時、オジサン顔でぶりっ子して「今夜お泊まりしてもいい?」と聞かれて、しょうがないなとお泊まりさせた経緯があるが、でもそれは挿入なしのスキンシップのあと。
もしヒデユキに同じことを部屋で言われたら・・・?

とにかく、帰り道の途中でよかった。
横断歩道の前で粘るヒデユキだったが、赤信号にかわり、また次の青信号になった時、背中を押して今夜は帰るように促した。
だって…先の展開がない人は無理だもん。

(後編に続く・・・)

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