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30%引きのパン

 バイトが終わってお腹が空いていたので、スーパーで菓子パンを買った。
 いつも通りにレジへ行き、いつも通りに金を払い、いつも通りにレシートを捨て、いつも通りに店を出る。
 そうして食い歩きしようと袋を見たとき、表面に30%引きのシールが貼ってあるのに気がついた。
 白地に赤い“30%引き”の文字、一部に青も使われて非常に目につくデザイン。貼ってあればすぐに気がつくはずだ。実際、私が買ったものとは別の種類のパンに貼ってあったのを覚えている。
 だが私の手にしたパンにはなかったはずだった。同じ種類の別のものにもなかったと思う。
 チョコホイップのコッペパンを齧りながら考える。この割引シールはずっと貼ってあったものか、あるいはなにかの拍子でくっついてきてしまったのか。シールの芯を捉えて貼られていたので、もしかしたら私が気がつかなかっただけかもしれない。
 仮に私が取ったあとにくっついたのだとして、どのタイミングでついたのだろうか。レジ台に置いたとき、袋詰め台に置いたとき、どれもピンとこない。
 レジを通した後についたのか、通す前についたのか、これも問題だ。通した後についたのなら別にいいが、通す前についたのなら値段も変わるし、最悪なにかの罪に問われるかもしれない。90円の30%引き、27円のために社会的地位を追われるのはなかなか気分が悪い。
 レジを通した後は合計金額しか見ないから、一つ一つの値段はあまり気にしない。真相を知るにはレシートを見るしかないが、あいにくノールックで捨ててしまった。
 もそもそとしたパンと甘ったるいチョコホイップを頬張って思う。やはりパンはしっとりしたものよりチープな食感のものの方が美味い。

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