見出し画像

【小説】或る妄想、闇に沈み眠れ(7)

この小説は、おそらくフィクションである。

注意喚起

見慣れぬアカウントからのメッセージリクエスト。作りたてのアカウントのようだ。所謂捨てアカウントだろう。

アカウント名は
「shinjuku/@shinjuku1962」

アイコンの写真はNo Imageだ。
設定されていない。

プロフィールには
「0QDFTYDX;WE. QR:W」と
意味不明な言葉が書いてある。

(この名前、このプロフィール……)

わたしは、ピンときた。

長年、不可思議なショートショート作品に熱中してきた甲斐があったというものだ。

(これは…… K/W先生 だ)


わたしは迷わずDMリクエストを許可し、DMの内容を確認した。

署名はない。
だが、わかる。
これは間違いなく K/W先生 だ。

憧れの K/W先生 からDMが来た……
以前のわたしなら、喜んで小躍りして、一日中ニヤニヤしていただろう。だが、いまは状況が異なる。それどころではない。こんな捨てアカウントを作って連絡しなければならないほど、おそらく緊急事態なのである。

そして、それに気づいているのは地球上でわたしくらいだ。

このメッセージ。
「縦読み」が仕込まれている。


「の・っ・と・ら・れ・た」


やはり……

K/W先生 のアカウントは乗っ取られていたんだ!!

わたしの『X』アカウントは2段階認証を取り入れているからセキュリティは安全……なのだが、なぜか、毎日の違和感のせいで背筋にうすら寒いものを感じていた。このDMすら誰かに傍受されているような気がしたのだ。わたしは、スパイになったような気分で手短に返事をすることにする。

実際指令が来るかどうかはわからない。でも頼みごとがあるのは本当のようなので、「指令をお待ちします」と返信した。

何せ、プロフィール文章がかなり物騒だ。

「0QDFTYDX;WE. QR:W」
これは比較的簡単な暗号でわかりやすかった。
この文字どおりにキーをたたく、「かな入力」で。

「0QDFTYDX;WE. QR:W」わたしはかんしされている たすけて


時間を置いて再びDMが来た。

そのDMを確認して K/W先生 のページに飛ぶとさっきまでNo Imageだったアイコンが、画像に差し変わっている。

これは……おそらく、新宿中央公園の「平和の鐘」の写真。
そして、小さく小さく画像内に 日付と時間が書いてある。
未来時間……この時間にこの場所に来いということだと思う。

わたしは、その指定日時の自分の約束をすべてキャンセルして、自分の勘を信じ、新宿中央公園に向かった。

(つづく)


駆動トモミをサポートしてみませんか。noteを通じてどんなお返しができるか未知数ですが…おまちしております。