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小説っぽいもの(読み切り・たまにポエム)

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創作小説・よみきりっぽいものまとめ。お時間あればどうぞ。
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令和米騒動奇譚

深夜、スマートフォンに着信があった。 画面に表示されたのは「実家」……電話に出てみると、お袋からだった。 『親父が大怪我をした。容態が危ない。病院にきてくれ』という。 お袋は軽いパニック状態で興奮しているらしく、言っている内容がなんだかおかしい。すぐにでも駆け付けたいと思ったが、実家は新潟。俺は東京在住。今から車を飛ばしても3~5時間はかかる。 とりあえず、新潟市内に住んでいる妹に連絡して、そばについてもらうように言い、俺は仕事用のパソコンと必要最低限の荷物を用意して

侵蝕

太陽がぎらぎら暑い そんな日は あなたのことを考える あまり汗をかかなそうなあなたでも 流石に暑いのではないですか Tシャツを替えるあなたの 背筋の動きを妄想したりする 激しい雨が地面を叩き続ける そんな日は あなたのことを考える 突然の豪雨に出会ったあなたは 静かに困った顔をするでしょうね 濡れた前髪やまつ毛にしたたる 水の滴を妄想したりする つまるところ わたしは  あなたのことがあたまからはなれない 心配は、親愛に似ている 愛だの恋だの 形のないものを形にしたが

この夏ほしいもの

暑さで火照っているから 甘い香りのバニラアイスなんかを口に含みたい でも食べたらなくなってしまうよね 形に残るものが欲しいけれど 形に残るといつまでも含んでしまったりして 寂しくなるだけなのかもしれず だったらいっそ 形に残らないほうが幸せなのかも とも思う 気持ちが火照っているから 身体が溶け出しそうだから どうせなら 蕩けるほどのやさしさ  が欲しい ……なんて、言ったら ひとつ、いただけます?

あなたを知りたい

「漫画家……さん、なんですか?」 ぼくは、手元にあるプロフィールカードに目を落としながら言った。 「あまり有名ではないんですが」 目の前にいる女性・ユウコさんははにかみながら答える。 ◇  ◇  ◇ 今日は、いわゆる婚活パーティーってやつに参加している。 ぼくは10回目の参加。 結婚願望があり、もう適齢期はとっくに過ぎている。なかなか運命の人に出会えない。そろそろパーティへの参加を終わりにしたい…そう思っていたが、なかなかうまくはいかないもんだ。 ぼくは気になっ

ショート・ショートを書きたい

わたしはショート・ショートを書きたい。 でもわたしは作品を短くまとめることが苦手だ。 わたしの物書きのスタイルは【感情に任せて書く】。 伝えたい内容を感情に任せて乱暴に書き綴っていくのだ。でも、そのせいだろうか、長文になりやすい。 長文になっても、読むに堪えうる壮大な超大作になるのならいいだろうが、そうなるわけでもない。元も子もない言い方になってしまうが、自分がもし話の筋を知らずに読む側に回ったら、こんなに長い作品は抵抗があるだろうな、と思う。 短い物語で、要点が伝

勇者さまっ!出番です(お気に入りストーリーまとめ版)

この物語についてこれは、選択肢によって展開が変わる「なんちゃってゲームブック風物語」としてかかれたものを1つのルートで最初から最後まで読めるようにしたものです。今回は、作者:駆動トモミ が一番気に入っているルートをご紹介します。 作者の思惑としては、ゲームブックみたいに分岐点を設けて、読者が続きを選択していくと、それぞれ違うラストにたどり着く、という遊びをしたかったのですが、そうすると結構読みにくく、まんべんなくあちこち読んでほしいな~と思ってもなかなかアクセスしにくいんだ

東京という街が

わたしは、結局のところ 東京が好きなんだろうと思う 札幌から東京にでてきた というと 『夢を追ってきた』 と言われがちだけど 実はそうじゃない 複雑な経緯があるがここでは省略する ただ、札幌から出たくて 住んでみたかった東京を選んだというのはある 東京が好きだと感じるのは わたしが憧れているひとや 大好きなひとが住む街だからなんだと思うし 空に向かってはえるビル群もとても大好きだし なにより たまに街へ降りていって すっと、雑踏に紛れると 自分の存在が消えてしま

ボートに乗ったカップルは、

この公園は、広くて緑が多い。 遊具もたくさんある。 大きな池にはボート乗り場もあって 家族やカップルで賑わっている。 みんな癒しを求めてやってくるみたい。 私も小さい頃からここで遊んでいる。 大人になった今でも散歩コースにしてるんだ。 でもね、この公園にはひとつ怖い話がある。 この池のボートに乗ったカップルは、 おひとりさまになっちゃうんだ。 ふたりを引き離しちゃうんだって。 根も葉もない噂だっていわれてるけど… でもきっと本当だよ。 あなただけに私の体験談を教えて

いろいろあるけど

最期に笑えたら いいんじゃないかなぁなんて思うんだ いまどんなにあわなくても そう思っている方が よほどいい未来が待っている気がするし そう願っている方が よほど夢を引き寄せられる気がしないか だから我慢しないで 笑っていようよ 泣いたっていい 怒ったっていいよ 歌っていようよ 時には離れたっていい なんなら殴り飛ばしたっていいんだ それができるのは 生きているうちだけなんだし あなたとわたしが 生きている時間は 意外に、短いんだ そして 尊いんだよ

シンギュラリティの憂鬱

むかーしむかし…2020年くらいだったかな? 「AIの技術が進歩すると、ニンゲンのやるべき仕事の役半数がAIに奪われてしまう」とかっていう妄想が流行ってたらしいですね? 実際…ここ2、30年のうちにAIはすごい速さと勢いで普及したんだ。しかもとても良い経済効果をもたらした。それは認める。AIの技術を導入して、瀕死の企業が人件費削減に成功してV字回復したり、画期的なAIを向上に導入した会社が世界トップレベルの企業にのし上がったり、いろんなミラクルを間近で見てきた。 でも、ニ

かつて相棒だった君へ

深夜のファミレスでひとり、仕事で疲れ果ててミックスグリルを食べていた時、一通のSMSがとどいた。 たったひとこと。スマートフォンの連絡帳アプリに登録された人物からのものではないようで、名前は非表示。迷惑メールの類かもしれない。そう思い、特にアクションを起こさず、食べ続けていると、ふたたびメール受信通知があった。 …こいつ誰なんだ? 見当がつかない。なぜなら日常生活で使っているメインの連絡手段は主にメッセージアプリで、SMSはほぼ使っていないからだ。 SMSは電話番号あ

【アレ】に手を出した

いつも、このサイトをチェックしてくれている君、ありがとう。 ここのサイトでいつも作品を読んでいる君なら なんとなく気が付いているんだろうけど ついに、【アレ】に手を出してしまった。 そのことについて告白しようと思う。 わかるよ…ディスプレイの前で、いま君は悲しい顔をしているんだろうな。 だって、あれだけ【アレ】は嫌だなどと書いてきたのに… でも、ここによくきてくれる君だからこそ伝えたかった。 わかってほしい。 ◇    ◇    ◇ ある時を境に、ぼくは空っぽに

ほんとうにあったら怖い話

俺は、東京都内で喫茶店をやっている。 とはいっても、喫茶店経営は俺の本意ではない。ここは、親父が定年退職後、ズブの素人なのに突然「こだわりのある喫茶店をつくる」といいだし、作った店だ。親父は自分の夢をつめこんだ店がいよいよ開業するという時、ぶったおれてそのまま他界してしまった。開業にあたっては親父の退職金の大半がつぎ込まれていたし、物件を買うために銀行からお金も借りていた。逃げるわけにもいかず…急遽、俺がこの店を引き継ぐ形となったのだった。 競争相手が少ない地域だったこと

Kカフェで会いましょう

ふと、頭の中にぼんやりとした映像が浮かんだ。 幼い時に観ていたテレビ番組の記憶なんだけど。 あれは…たしか、ゲームだ。 ゲームを紹介する番組。 あ~この番組名なんだったっけ? 司会は…眼鏡をかけた髭のおじさんで… ニンテンドーのソフトを紹介する番組かな? ちがうな? 番組内容がちゃんと思い出せない。 スタジオでスポーツ対決したり、子供の特技を比べっこしたり…変なコーナーばかりが思い出されて、肝心のゲームのコーナーが全然思い出せないぞ。 あれは…なんていう番組だったかな