サコ目撃情報供養

数ヶ月前、情熱スリーに送ったメールです。お気に入りなのでここに供養いたします。
※一部、大人の事情でカタカナにしている部分があります。ご了承ください。

先日、92年続いた私の人生は幕を閉じた。死因は老衰。心優しい妻のみでなく、娘、孫にも恵まれ、一点の悔いもない幸せな生涯だった。

命日当日、親族は私の横たわるベットを取り囲んでいた。

張りつめた空気の中私のまぶたは突然重くなり、次の瞬間、あたり一面に濃紺の闇が広がった。

そして目の前には神々しい光を放つ灯篭(とうろう)がポツンと置いてあり、その手前には「ここに手をかざしてください。」という立て看板が置いてあった。

私はピンと来た。これは生前話に聞いていた走馬灯である。

どうやらこれに手をかざすと、今までの思い出が見られるようだ。

走馬灯を見るのが個人の任意であるということに少々驚いたが、是非走馬灯とやらを見てみたいと思い、手をかざそうとしゃがみ込んだ。

するとどこからか、「ダム、ダム、ダム」という音が近づいてきて、私の真後ろでその音が消えた。

「何事だ?」

恐る恐る後ろを振り返ると、ビブスを着た体格の良い男性が私を見下ろしていた。

そう、この男がサコ ケンイチである。

生前会ったことのない男がなぜここに?と恐怖を覚えたが、そんな私を尻目に彼は軽快な口調で私に言う。

「この走馬灯、今から書き換えるから。」

書き換える?発言の意図が理解できずに狼狽(ろうばい)していると、サコは自身の手に持っていたバスケットボールを全力で走馬灯にぶつけ、走馬灯を大破した。

「なんてことするんだ!」

私が本能のままに怒りをぶつけると、サコは不敵な笑みを浮かべて去っていった。

大破した走馬灯の残骸を見て絶望していたが、好奇心の強い私は、興味本位でその残骸に手をかざした。

すると、目の前にバスケットコートの映像が広がった。

その映像は、サコがチームメイトに華麗なパスをするシーン、サコがスリーポイントラインの外からシュートを決めるシーンなど、ありとあらゆるサコの輝かしい瞬間の数々だった。そう、その映像はサコのファインプレー映像の総集編だったのだ。

以上が、自身の走馬灯を見ることと引き換えに、サコを見ることを許された男の話である。

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