デート対決

 文田さん根建さんこんにちは。
 僕は大学生なのですが、先日、ずっと片思いしていたえりちゃんとデートの約束を取り付けることに成功しました。

 僕はそれまで女の子とお付き合いどころか、二人で遊んだことすらなかったため、デートに向けてきる限りの準備をすることにしました。とりあえずgoogleの検索欄に「デート テクニック」と入れてみると、一ページ目に「男子必見!デートのモテテクニック10選!」というサイトが出てきました。これだ!と思った僕は、この記事に書いてあることをきっちりと予習しました。

 いよいよデート当日。改札で待っていると「おまたせ!」とえりちゃんが笑顔で駆け寄ってきました。さぁ、サイトに書いてあったように、荷物をもってあげよう!そう思って彼女を見ると、えりちゃんは何も持っていませんでした。面食らった僕は「あれ?荷物は?」と言うと、彼女はズボンのポケットから財布とスマホを出し「私、荷物少ないんだよね。だからかばん持たないの。」と言いました。荷物を持つ作戦、失敗です。

 次に、車道側を歩くというテクニックを実践しようと試みました。左側が車道だったので、えりちゃんの右側にいた僕は、そーっと左側に回り込もうとしました。しかし、えりちゃんは道路の縁石(えんせき)ぎりぎりを歩いていたため、思うようにいきません。僕は思い切って、えりちゃんを肩を押しのけるように左側に割り込もうとしました。しかし彼女は思ったより力があり、思ったより体幹も強かったため、びくともせずにスタスタと歩いていました。車道側を歩く作戦、失敗です。

 いよいよ予約したカフェにつきました。彼女のホーム画面が深海魚だったので、共感できる男をアピールしようと「僕も深海魚が好き!」というと、「私、ニッチな趣味に軽々しく共感されるの、なんか嫌だよね。」と言われてしまいました。作戦失敗です。

 次に店員さんに対して態度がいい男がモテると書いてあったので、ウェイターにニコニコと接していたら、「私、店員に対して過剰に愛想がいい人、なんか怖いんだよね」と言われてしまいました。作戦失敗です。

 その後、スマートにお会計をしようと「トイレ行ってきたら?」と言うと、「私、全然お手洗い行かないんだよね!」と言って全く席を立とうとしませんでした。作戦失敗です。

 思うように行かず、ぐったりした状態でカフェを出ると、えりちゃんは、僕の顔を見て、ケタケタと笑い始めました。僕が動揺していると、彼女は「君、これ見たでしょ?」と言って、自分のスマホ画面を見せてきました。何とそこには、僕が予習したサイトが映し出されているではありませんか!「な、なんでこんなこと…」僕がそう言うと、彼女はよどみなく話し始めました。

 「君みたいな真面目な人だったらデート前に予習すると思ってね、どんなサイトを見てくるかなって昨日調べていたのよ。でも、まさか一番上に出てくるサイトに書かれてることを順番に使ってくるとはねぇ。その闘い、受けて立とうじゃないの!」そう言った彼女の目は、闘志に満ち溢れていました。どうやら、すでに戦いは始まっていたようです。

 その後、商店街を散歩している時、カッコよくみせようと僕が腕まくりをしようとすると、「しわになっちゃうからやめたほうがいいよ!」と言って強い力で僕の手を掴んで動きを静止してくるし、知性をアピールしようとクイズを出題しても秒速で正解を言ってくるし、頭をポンポンしようとしたら隙を狙って腹パンしてきました。しまいには僕が「足、疲れていない?」と言った瞬間、えりちゃんは「全然大丈夫!」といって全力でダッシュし、視界から消えました。人生で初めて巻かれたのです。あたりを探しても見つからず、トボトボと家に帰った僕は、えりちゃんに対して「今日はごめん。もう一回チャンスをくれないかな?今度は水族館で深海魚見に行かない?」とラインをしました。するとえりちゃんは「こっちこそ今日はごめんね。私の好きなものを覚えてくれて嬉しい。楽しみにしてるね!」と返してくれました。今度からネットに頼るのではなく、彼女自身と向き合おうと思います。
 文田さん根建さん、荷物が少なすぎる人って、なんか怖くないですか?


このメールは数週間前に情熱スリーにふつおたとして送ったメールです。読まれなかったため供養いたします。

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