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2/24という日

2021年2月24日、九段こと私の「嫌いな食べ物リスト」に2つ目の食べ物が登録された。

ローソンの「玄米の黒ごまカレー&タイカレー」。

インドカレーもタイカレーも、今まで食べたカレーに対してはすべて美味しいと評価してきたし、チョコミントアイス以外なら何でも大体好きな私だが、このローソンの弁当だけは、嫌いである。「好きじゃない」とかではなく、「進んで食べない」とかでもなく、嫌いだ。食べたくない。まずい。

どうやらローソンさんは、塩、化学調味料不使用で健康にいいカレー弁当を作りたかったらしい。まあ美味しければ何でもいい派の私としてはどうでもいいのだが、企業努力は認められるところだろう。ただ、完成品がいただけなかった。

この弁当に乗っていたものを順番に見ていく。

まずご飯は、炊いてからの足が比較的遅い玄米を使用している。おそらく保存料を抑えるためだろう。
これは最近のセブンの弁当などでも行われている。昨今の健康志向と保存性のコスパ、両方にとって都合がいいのだろうと思う。セブンの玄米の入った弁当が玄米と精米を混ぜているのに対し、こちらは玄米がおそらく100%。
にもかかわらず、炊いてから時間が経っていることは確かでかつ、おそらく安定材を使用していない。そのため食感が悪く、甘みも薄い。玄米の本来のプチプチ感が微妙に失われ、なんだかシャキシャキムニュムニュしている。
つまりまずい。

次に「カシューナッツチキンカレー」は、スパイスのみで構成された単調な痛みのみがある辛さと、ぬっとりと口蓋にまとわりついて離れない独特の粘性とが渾然一体となって味蕾に攻撃を仕掛けてくる。
粘性と長時間格闘し、ようやく嚥下しても、口には痛みにも似た辛さと、謎のココナッツミルクとなぜ入れたかわからないカシューナッツの風味が強く残る。
この”痛みにも似た辛味”は、辛すぎて痛いとかそういうことではないのだ。なんというか、胡椒とかの辛味成分だけをココナッツミルクで薄めたらこうなった、みたいな、辛さは大したこと無いのに痛いのだ。しかも旨味も殆どない。鶏肉からわずかに供給された旨味が侘しささえ感じさせる。
つまり美味しくない。

ただ、この弁当の一番の問題点はここではない。ここではないのだ。

そう、この弁当の主役、「黒ごまカレー」である。
一口目は驚きによって不味さが抑え込まれた。強いゴマの匂いだ。
ここからが問題だった。

驚きに浸り2秒ほど咀嚼すると、全ての要素の一つ一つがとてつもないコンビネーションで口の中を蹂躙する。

まずチキンカレーのときと同じ、旨味も麻辣もまったくないただの痛みを舌に感じ、そしておそらく黒ごま由来と思われる強い苦味。そして古玄米の妙な食感。
加えて鼻には黒ごま餡まんのような匂いとスパイスの香り、カシューナッツの香りが駆け抜ける。私はこのときほど鼻が花粉症で詰まっていることに感謝した試しはないだろう。

これだけでまずいのに、カレはまだ攻撃をやめない。
玄米には「よく噛まないと飲み込みにくい」性質がある。つまり、玄米を全てすりつぶし、嚥下可能になるまで私はこのおかしくなってしまいそうな味と強烈な臭いを相手に戦わなくてはならないのだ。
もはや私はこの、到底人に出せるようなものじゃないと思える口の中の異物を飲み込むべきかどうか、迷うようになってくる。そんな中でも絶えず玄米は口の中で引き伸ばし工作を図る。

もはや私の心は折れているので、こいつを美味しく、作ってくれた方などに感謝しながら食べようなどという感情はどこにもなかった。あった形跡すらなかった。せめてこれは私が私のために買ったのだから、全てと言わずともほとんどを食べてしまおうと思った。冷蔵庫から買ったばかりの牛乳を取り出した。

私にはここから先の記憶はあまりない。気づけば弁当の中身はほとんどなくなっていて、ついでに買ったばかりの牛乳2Lパックが半分ほど消費されていた。

ローソンさんをディスるわけではない。きっとこのカレーが美味しいと感じて、企画にゴーサインを出した偉い人がいるのだろう。美味しいと感じる人も、もしかしたらいるのかもしれない。もしくは、健康のためなら多少味が落ちてもいいとか考えて食べる人もいるだろう。許容範囲内かは別として。監修のどこかのシェフも、これでいいと思ったのだろう。
私の舌に合わなかっただけかもしれない。

こんな散文を読んでいただいたあなたにも、一度食べていただきたい。
案外美味しく食べちゃうのかもしれない。感想待ってます。

p.s.
Twitterで「玄米の黒ごまカレー」で調べるとみんな不評だわ。私の舌がおかしいわけではないらしい。よかった。


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