勇者
【父親妄想日記】
娘がすくすくと育っている。
足なんかムチムチでチョココロネみたいだ。
手の握力もすごい。
胸の上で抱っこしていると、急に「あれ?もぎとろうとしてる?」ってくらい肩をにぎってくる。
さらに口がむずがゆいのかなんでも噛もうとしてくる。
肩をにぎり、首元を噛んでくる時なんか、一瞬ゾンビ化したんか?って思う。
なぜか僕のアゴにとてつもない興味を示す。
確かに僕のアゴは少々鋭利だ。
だからなのか知らないが、娘を抱っこして顔をアゴに近づけると狂ったように笑う。
三回中、二回狂ったように笑い、一回は絶叫する。
どんな感情なんだ?
ホラーコメディ?
その光景を見た嫁が「アゴに殺されると思ってるんちゃう?」ととても失礼な見解を言ってきた。
そうなのか?
娘は「父親は私を愛しているけれど、アゴだけは私の命を狙っている。」と認識しているのか。
僕の体だけれど、一部が別の生き物。
身体は女性だが、髪だけが独立した蛇でできている化け物、メデューサ的な感じで捉えてるのか?
いつか父親のアゴを退治しに、伝説の剣と盾を持った勇者が現れるのを待っているのか?
いつか勇者が来た時に少しでもダメージを蓄積し、弱らせる為に日々、肩をもぎとろうとし、首元を噛んでいるのか?
そんな事を考えていたら娘が胸の中で寝ていた。
勇者が来るにはまだまだ猶予がありそうだ。