カフェ
【父親妄想日記】
近所にコンクリートが打ちっ放しの店内が特徴的なニューヨーク風だという憧れのカフェができた。
夫婦で意気揚々と準備し、ベビーカーを押しながら15分かけて店にたどり着いた。
おしゃれな店内に緊張しながらも、ドーナツ二つとコーヒー二杯で2000円近くする暴力的な金額で商品を買い、これがニューヨークスタイルなんだと自らを納得させ、こじゃれたアンティーク風のソファーに二人で腰を下ろした。
憧れのカフェのおしゃれな内装に囲まれ、さぁニューヨークを味わおうかと思ってコーヒーを持ち、二人で笑顔を浮かべた刹那、娘が堰を切ったように泣き出した。
体育館のような店内に響き渡る娘の泣き声。
注目する周りの客。
慌てふためく二人。
気づくと私はパニクるあまり、ソファーに深く座り、カフェラテを優雅に飲み、ケータイでニュースをみるという現実逃避をしていた。
しかしそんな事で問題が解決する訳はなく、1秒前と変わらない現実が広がっていた。
よし、冷静に状況を判断しよう。
この状況をクレバーに乗り切り、再び優雅にカフェラテをすすろうではないか。
まずは原因の探る為に娘の心理を分析するんだ。
娘は打ちっ放しのコンクリートの天井が目に入るやいなや、雪崩のごとく泣き出した。
確かに大人から見たらニューヨーク風のおしゃれなカフェだが、このコンクリート打ちっ放し感はよく見たらブツの受け渡しに使われそうな港の倉庫に見えなくもない。
娘は両親がよからぬ取り引きに乗り出すと勘違いし、それを止める為に涙をもって訴えかけてきたのだろうか?
だとしたらなんという親孝行な娘だろう。
悪い両親を改心しようという娘の心遣いを噛み締め、目を閉じ感慨に耽っていた。
しばらくして状況を思い出した。