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星が消えても

ぼくたちの住むばしょから
すこしだけ遠くの海で

大きな波と小さな波が
渚まで伸びては、溶け
また伸びては、溶けてゆく。

まるで歌のように
小さく優しいメロディーや
大きく力強いメロディーを唄うように
海が唄うたびに、波が産まれています。

海は、海月が踊っている姿を見るのが好きでした。
月は明るく、海月は星のようにキラキラと光っています。
ぽうっと光る海月がみんなで踊るので
あまりの美しさに
朝を招くのも忘れて、見惚れてしまうのでした。

海月は魚と遊ぶのが好きでした。
海に写った月の影を、魚は餌と間違えて何度もつつくので
海月はそれが可愛らしくて、ゆらゆら笑うのです。

魚のつついた水面は海の歌と混ざって
渚へ急ぐ波となったのでした。

生きとし生ける物は
深く、濃紺の高鳴りにため息をつく美しい夜に唄うのです。

かつて、青いホシでは「方舟」という乗り物に
すべての生きものたちを乗せ旅立ちました。

しかし、方舟は波を乗せ忘れてしまったのです。
あの美しかった、すべてのものが恋した波を忘れてしまったのです。

それから幾年月も過ぎ、波のことなどみな忘れてしまいました。
方舟が青いホシに還ったとき

なんと
失われたはずのリズムが聞こえたのです。
どこか遠くの星が消えてしまうほどの年月を越えてもなお
海は歌い続けていたのです。


「星が消えても」

ゆらゆらと、、、漂っている。
ゆらゆらと、浮かんでいる。

海月と月のあいだで
鯉が水面に触れただけ

濃紺の高鳴りで
延びる渚が溶けてゆく

通り雨に濡れた飛沫の
プラネタリウムを泳いでゆく

方舟に取り残されたはずのリズム
あなたが口ずさむ
星がまたひとつ、消えても
悠久をたゆたう

ゆらゆらと漂ってる
ゆらゆらと浮かんでいる

海月と月のあいだで
鯉が水面に触れただけ

濃紺の高鳴りで
延びる渚が溶けてゆく

通り雨に濡れた飛沫の
プラネタリウムを泳いでゆく
海月のリズムを謡う波

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