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【小5学習法⑦ 三角形の面積】算数力を高めるヒントはこの問題に詰まっています。

※この記事は、深澤英雄先生(神戸市の小・中学校で38年間教壇に立ち、教職大学院の特任教授を4年半務める。現在は和歌山大学教育学部の非常勤講師として学生の指導にあたる。久保田学園の第一号の生徒でもある。)をお招きして、久保田学園グループ代表久保田勤とグループ講師宮後のお話をベースに記事にしています。



宮後:今回も”文部科学省全国学力テスト”から子どもが躓きやすいポイントを解説していただきたいと思います。深澤先生よろしくお願いします。

深澤:令和5年度に出題された問題から、図形の文章題を見ていただきたいと思います。このような問題が出題されました。この問題も非常に正解率が低かった問題です。

令和5年全国学力テストより

深澤:この問題は、21.7%しかありません。

宮後:この問題は興味深いですね。見た目にひっぱられて細いから面積が小さい!とか、長さに注目して長くなっているから大きい!など感覚で選ぶと間違えてしまうかもしれません。

深澤:底辺が3.2センチ、高さが同じテープの幅なので、面積も同じになるんですよね。そのように考えることができる大人は③だとわかります。しっかり習ったはずだ!と大人側としては思ってしまうわけなのです。ですが子どもとしては、見た目の印象に引っ張られてしまうものなのです。

久保田:この問題は、高さが数字で書いていないのがポイントですね。小学生だと面積を比べようとすると、まず面積そのものを計算しようとすると思うのです。ですが、この問題は高さが何㎝なのか明示されていない。だから、比べられないんだと思った子どもが多かったのではないでしょうか。

深澤:それは鋭い指摘ですね。高さや面積を考えるときに数字で答えを出すものだと考えている子どもが大半ですし、現にそのような指導やトレーニングをしている子どもも多いことでしょう。計算で面積を出す時には、必ず高さが数字で書いてある。今回はそれがない。多くの子どもはそこに躓いたのだろうという指摘はもっともだと思います。

久保田:この問題を間違えた子どもは頭の中で、
 ①大きさを比べるには面積を計算する。
 ②面積は底辺×高さ÷2だ
 ③計算するには、底辺が3.2㎝だが、高さが何㎝かわからない。
 ④だから、面積がわからない→だから比べられない 答えは
という順序で考えると思うんです。③番目でわからない部分があるから次のステップには進めないのだと考えてしまう子どもが多くいるのだと思います。算数の計算の仕組みはわからない部分があっても実はその先に進めるものなんだ!というところが算数の面白いところの一つでもありますよね。是非そういう部分にも目を向けられるように子どもに伝えていきたいと思います。

子どもにどのように伝えるべきか。中学へのステップアップ

深澤:これまで何度もお伝えしていることではあるのですが、底辺×高さ÷2 この公式をただ数字で覚えているだけではダメなんです。底辺がどの部分なのか、高さとはこの図でいうところのどこになるのか、しっかり公式を意味のある言葉・文章として理解しているかが大切なんです。
その上で、
      高さ(テープの幅 つまり同じ長さ)
は何㎝かはわからないけど、2つの三角形の高さは同じ。つまり三角形の面積はわからなくても、その大小は比べることができるということをよく伝えることが大事ですね。

久保田:これは中学生で使う文字式の発想の基礎になっているんです。”わからない部分はわからないままでひとまず、置いておく。その上でわかる部分を使って、できる事をやっていこう。そうすることでわからないことがあっても問題は解決することが多いというものなんです。これは算数・数学の考え方で最も大事な思考法であるとともに、算数・数学以外でも使える大事な思考法だと思うんです。

簡単に子どもに教える方法 手を動かす 問いかけ

深澤:子どもがこの問題で必ず正解できるようになる方法はあるんです。今までのnoteでも同じようなことばかり言っていて恐縮ではあるのですが、お伝えしたいと思います。まずは、実際に紙とペンを使って、底辺と高さを示す図を子どもと一緒に描いてみましょう。そして、子どもにどの部分が底辺でどの部分が高さかを自分で確認させることです。

久保田:それが一番ですね。三角形の面積を求めるのに、教科書やテキストに載っている三角形の数字だけ見て計算トレーニングしかしたことがない生徒はこの学力テストのような問題には対応できなかったのではないかと思います。実際に自分で三角形を描いて、どこが底辺で、どこが高さでということを自分で示してみる練習をしたことがあるかないかが全てではないかと思います。

宮後:確かに、さらに同じ面積のままで、三角形の形を変えてみるにはどうするのが良いかを考えてみると今回の問題は絶対に間違えないですね。

深澤:そうですね。その時に、平行ということに思い至れば、今回のテープの上に書いた三角形が平行を活用していることに必ず気付くはずなんです。

学力テストを学習に活かすには

宮後:今回の問題、非常に良い問題ですね。子どもがどのような勉強をしてきているのかを見抜くために用意された問題だと思います。その上で、中学につながる部分を習得できているのかを見抜くこともできる、非常に良い問題だと思います。

深澤:学力テストは毎年実施され、今年も実施されています。このテストの点数だけをみるのではなく、しっかりとどのような問題で躓いているのかをみてあげることは効果的だと思います。

久保田:このシリーズはもう少し続けて、保護者の皆様に子どもが勉強でどのようなところに躓きやすいかをお伝えしていきたいと思います。その上で保護者の皆さんに向けてのメッセージです。子どもが学習に躓いたときは、焦らずに一緒に問題に向き合い、励ますことが大切です。「できるようになるためにどうすれば良いか」を一緒に考え、子どもの努力を認め、少しずつでも進歩していることを認めてあげることがまず大切だと思います。

深澤:そうですね。子どもはテストの結果を親に見せること自体に抵抗があるものです。ですが保護者と子どもがともにテストを振り返ることができると、必ず子どもの学習効果は高まっていきます。テストの点数部分だけみるのではなく、各問題への取り組みを見てあげることが大切だと思います。

久保田:そうですね。その上で子どもと良好な関係を保ちつつ、声掛けする方法などもこれまでお伝えしてきました。

これからも、子どもが自信を持って学習に取り組めるよう、サポートしていくための方法を私としてはみなさんにお伝えし、保護者の皆さんのためになればと思います。

まとめ

・子どもは計算して答えがでないと次のステップに進めないものだと考えがち。。
・図形の性質を理解するには、実際に三角形を描いて、底辺・高さを自分で書かせてみることが最も効果的。
・学力テストの点数で一喜一憂するのではなく、躓いている部分に前向きに取り組めるように、子どもが自信を持って学習に取り組めるよう、サポートしていくことが大切