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おまえの魔法

こんばんは!遅刻すみません、最近「おれ、今日こそお風呂に入るんだ」が口癖で、毎日ちゃんとフラグを回収しているクボさんです。(嘘嘘!)

本日はうちの三人目の相方、まーちゃんについて書きます。
まーちゃんのこと書くのは、こう…最終手段にしようと思っていたのですが…致し方ありません…

では4000字、頑張って読みな〜



「おまえぜったいわたしのことかかへんよな」

noteを上げなきゃいけないのに、かけることが思いつかない。「ウーンもう全然無理だなぁ、死しかかけないんダァ‼️」とドラえもんのモノマネをしながらぶつくさ呟いたあと、ドラえもんのモノマネはフル無視した生駒にそう呟かれた。

「書いて欲しいん?」
「そんなこと言うてへんやんけ、私はおまえと文化財やったら無限にかけるのにおまえはかけへんねやってだけのはなし。プリプリ!」
「なんか、生駒のことはかけへんなあ」
「なんでなん?あー、くぼちゃんってわたしのこと生理的に受け付けへんねや、くぼちゃんってわたしよりわたしのnoteのほうが好きやもんな、ほなわたしのnoteをスタッフにしたら?」
「めちゃくちゃ言い出したやん、めっちゃヒス構文やん」

確かに、私は生駒のことはnoteに書いたことがない。
何回も助けてもらってるし、元々10年来の友人である生駒なんて、書けそうなことはたくさんありそうなもんやのに、生駒のことは書けない。
こいつの言葉に勝てるわけないのに、こいつのことを書くのはおこがましい。

「いこまの言葉に勝てるわけないもん」
「確かにいこまの言葉はすごいですけども、いこまといこまの言葉は全然別じゃないですか」

『お前ってめっちゃ人によって態度変えるよな。騙せる奴は騙せるんかもせんけど、分かる奴にはめっちゃバレてんで』

よく、「なんでそんな大事なこと隠してたん?」と言われていた。
お笑いが好きとか、好きな音楽とか、恋人ができたとか。
なんだか恥ずかしいし、自分の話をするのは愚かなことだと思った。
みんな、人の話を聞いているより、自分の話をする方が楽しいはずやし。
だから、自分の話をすることはひとりよがりな愚かな行為だと思っていた。
当時の私は、「私には何もないから、あなたの話を聞かせて欲しい」と言うことで、誰とでも仲良くなっていたと思う。


『なんか誰に対してもいい顔して、本心見せてない感じあんねん。だから、友だちやと思ってた人に靴隠されたりするんちゃう』

中学3年の冬。
音楽科の高校を受験することを決めて、その学校の講師である人の門下生になることを決めた。


「君、県西の一個上の女の子とよく似てるわ」

レッスンの最中に、急に、そんなことを言われた。

「はあ」
「県立西宮の音楽科にな、僕の門下生何人かおって、そのうちの一人がずーっと謝ってんのよ。すみません、すみませんって。謝るな!って言ったらまたすみません、おもろいやろ」
「はあ」
自信ないねんなあ、君もあの子も。まああの子の方が自信ないやろうけど。
そんなふうにつぶやいて、レッスンは再開されたが、「今は私のレッスン中なんやから、他のやつのこと考えんなよ」とムカついた。(こっわ)
ある日、門下の集まりがあって、その時に背の低い、オドオドしている垢抜けてない女の子がいた。
ひと目で先生が言っていた子だとわかった。
周りの人に囲まれて、それ自体が申し訳ないみたいな顔で、みんなが残したものを食べていた。
顔を見れば気を遣ってることなんて一目瞭然で、「似てる」と言われたことにムカついた。(え!?)
私はあんなふうにならない。
もっと上手に、人にバレないように気を使ったりできるのに。
どこが似てんねん。
そう思っていたら、料理には手をつけてなかったようで、
そんな私に気がついて、彼女は話しかけてきた。

「たべれてますか?だいじょうぶですか?」

後輩だとわかっているくせに敬語で、めちゃくちゃ舌っ足らずだった。舌っ足らずなせいか、なんだか、全部ひらがなに聞こえた。
それがまたムカついた。(本当に性格が最悪)
キャラ付け?私にもかまって欲しいわけ?(本当に最悪が性格)

「大丈夫です!というか、後輩なんで、敬語やめてください〜」
「むずいっす」
「むずいっす?」

『本当の友だちって言える人、一人もおらんのちゃん。』

数年が経過し、私と彼女は、門下の集まりのたびによく話すようになる。
年を重ねるごとに彼女は垢抜けて、
先生の無数の肯定の甲斐あってか、謝るより冗談を言っている回数の方が多くなってきていた。


同じ大学に入ったある日、かなり親しくなった私たちは、二人で帰っていた。わざわざ、ゆっくり話すために、急行を見逃して、倍以上時間のかかる普通電車に乗って。
大学のムカつく先輩の話、ツインレイの話で大盛り上がりし、気が合うな、とは思った。
でもどこかで、見下していた。

『人見下してるんが透けて見えるわ。一番嫌味やで、その感じ。人見下せるようなもん持ってへんやん。頭も悪いし、運動もできへん。人と本心でぶつかり合うことを避けて、プライドが高いだけのくせに、被害者ヅラして。
だから誰の1番にもなられへんのちゃう?』

分かってるよ。ごめん。

「全部を見せへんのが、ひなたちゃんの魅力やのにね。」
「急になんですか?」

ふと、呟くように、彼女はそう言った。
「いや、なんか、きゅうに思って。ぜんぶを見せることが正解なわけないし。人によって見せるところを変えて、その人に合わせられる能力の方がだいじやとおもうねんなあ」
「はあ。でもそれって八方美人なだけじゃないんですか?」
「八方美人のなにがあかんねんよな。そのひとによって見せるところはかえてるかもせんけど、それはうそを見せてるわけじゃないくない?
ほんとうの自分を見せてはいるけど、ほんとうの自分の、見せてる部分がひとによって違うだけで。全部ほんとうのひなたちゃんやのにね」

『全部ほんとうのひなたちゃんやのにね』

黒くて重いもやが、急に輪郭を持った気がした。

まるで、魔法だ。

近づきすぎると、いつだって関係性を壊していた。
私に関係性を壊された後に、とても大切だったみんなが口を揃えて言うのは、私の根っこの部分だ。

『本気で人と向き合わへんから、どっちかが爆発して、こんなことになっちゃったんちゃん』

『ほんまは色々思ってるってことやろ?それ隠して、真摯に向き合ってへんだけやん。』

『だから、誰の1番にもなれないんだよ。』

分かってる。
人とコミュニケーションを取るにあたっての考え方自体が、間違ってるんだろう。
本当は、簡単なコミュニケーションに逃げてるだけなのに。
簡単な、聞くだけや、褒めるだけのコミュニケーションをして、

いや、こんなものはコミュニケーションでもない。

上手くやってると勘違いしているだけだ。

なのに、人を見下して、勝手に考え込んで、
自分だけ頑張ってるなんて思い込んで
本当は、話したいことも聞きたいことも、
考えたいこともたくさんあるはずなのに。

この小さい女に気付かされたのが悔しくて、
気を使わずに思ったことを言ってみる。

「なんかわかった口聞いてます?」
「プライド高いなあ、おまえは」
「お前!?」
優しい言葉ばかり選んでいる彼女の口から出る「お前」はかなり浮いていて、面白い。
この女は、プライド高いと思ったときにははっきりとプライド高い、と、言えるのか。
しかも、相手を不快にさせないように。
私のデリケートな問題に踏み込んだと思ったのだろう。だから、ふざけて、緩和させたのだ。
この人の選ぶ言葉は、「お前」でさえ優しさがある。

「えぇ、ないちゃった。うける、顔おもろ」

私の顔を見ながらゲラゲラ笑う彼女は、人の弱みを見つけて、寄り添う言葉をかけて上に立ってやろう、なんて全く思っていない顔だった。
言葉の持つ力をどこまでも信じて、丁寧に向き合って、そんなふうにした言葉が人に届いたことを喜んでいる、そんな顔だった。

『人みくだしてまうのもばかにしてるのも全部ほんとのくぼちゃんなんやからしかたないよね』

ひらがなが多く感じられるのは舌ったらずな喋り方のせいじゃなくて、
きっと、柔らかく伝わるように意識しているからだ。

『クボさんがげんきなのがいちばんいいですからね』

元々ボキャブラリーが多い上、言い方や目線の変え方で柔らかく伝わるようにしているんだ。


『さあ、クボさんが鬱クワガタとなり、つかいものにならなくなったところで、われわれががんばりますか』

『ちゃんとめしくえ、ぜったいぜんぶくえ、くいきるまでかえさへんから』

私が落ち込んだ時に聞こえてくる声は、
いつの間にかこの数年で、ひらがなまみれになっていた。
増えていくひらがなと一緒に、私はみんなから好かれたいなんて思わなくなって、本当の自分はわからないけれど
好きな自分を見つけて、言いたいことを言って、考えたことを偉そうに語るようになって、
かなり生きやすくなった。

「なあ、なんで書いてくれへんのよ」
「なら書こか?」
「いいよ、そんな感じでむりやりかくなら。
あーあ、はいはい、ざんねんざんねん。」

あいかわらず、舌っ足らずな喋り方だ。
でも、彼女のこの喋り方に救われてる人はたくさんいるだろうな、と思う。
少なくとも、ここに一人は。

『おまえを傷つける奴はぜったいぜったいゆるさへんよ。ぜんいんころしましょうね』

殺す、でさえひらがなで、優しさがあるこの人の言葉は、
きっと、私と同じような人を救いあげてくれる。

「おまえのことは好きかわからんけど、お前の言葉のことは絶対好きやな」
「はあ?じゃあ私の言葉をスタッフにしたら?」

お前の言葉こそが、お前自身であることにはまだ気づいてへんわ、と思いながら、怒ってる生駒の顔を指さして、「顔おもろ」と笑った。

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