#1


二十一世紀になってからもう僕の年齢と同じ時間が経った。蝉が鳴いているような気がして振り向く。幻聴だったみたいだ。

学校が終わってすぐ、僕は自転車に乗ってアスファルトを滑る。僕の住む町はあまり活気はなくて、駅前から3分も自転車を漕げば家か畑しかない。
僕の家に近づくにつれて道の形はどんどん多角形になる。湿度も上がっていくし、色の種類も減っていく。

僕は今日、やらないといけないことがある。公園の池を撮る、ということ。
なんで撮らないといけないのか、言う必要が無いし聞かれることも無いだろう。何故なら僕を救うためだから。

あの池はもうすぐ無くなる。工事が池を壊して直す。僕の5歳のときの思い出。細かい出来事は分からないけど、僕が笑ってたことは覚えてる。だから。

僕が撮ったものはきっと誰も見ない。それでも、何かの間違いでもいいから、誰かのもとに届いて欲しいと思った。

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