齋藤正彦著『線形代数入門』第2章解答

厳密性はやや失われているところもあります、間違いはご指摘お願いします。

ご不明点はコメント等でご連絡ください。
飽きなければ続けます。


(1)と(2)はただの計算なので省略させてください(tex齋藤線形を解くような人なら解答はいらないはず)。

ディスプレイ数式なので少し読みづらいのはご了承ください。

2章 行列


(3)

(イ)

$$
P^{-1}=
\begin{pmatrix}
-2&-1&1\\
1&-1&-1\\
0&2&1
\end{pmatrix}
より\\
P^{-1}AP=
\begin{pmatrix}2&0&0\\0&1&0\\0&0&0\end{pmatrix}
$$

(ロ)

$$
(P^{-1}AP)^n=P^{-1}A^nP=\begin{pmatrix}2^n&0&0\\0&1&0\\0&0&0\end{pmatrix}\\
A^n=P\begin{pmatrix}2^n&0&0\\0&1&0\\0&0&0\end{pmatrix}P^{-1}\\=
2^n\begin{pmatrix}-2&-1&1\\2&1&-1\\-4&-2&2\end{pmatrix}+\begin{pmatrix}3&-3&-3\\-2&2&2\\4&-4&-4\end{pmatrix}
$$

(4)

$$
基本変形で元の行列を上三角化し、\text{rank}が変わらないことを利用する. \\
1行目を2,3_\cdots,n行目から引くと元の行列は\\
\begin{pmatrix}
1&x&\cdots&\cdots&x\\
x-1&1-x&0&\cdots&0\\
\vdots&0&\ddots&\ddots&\vdots\\
\vdots&\vdots&\ddots&\ddots&0\\
x-1&0&\cdots&0&1-x\\
\end{pmatrix}\\
1列目から2,3,_\cdots,n列目をひくと,この行列は上対角化され,対角成分は順に\\
1-(n-1)x,1-x,_\cdots ,1-x となる.よって,\\
\text{rank}=n-1(x=\frac{1}{n-1})\ ,\ 1(x=1)\ \ n(その他)\\
(n-1=x=1のときも要確認)
$$

(4)

$$
Aが正則ではないとするとA\bm{x}=\bm{0}となる\bm{x}=(x_i)≠\bm{0}が存在する.\\
{x_i}のうち絶対値が最大のものをx_kとおくと\\
\displaystyle{0=(A\bm{x})_k=\sum_{i=1}^nA_{ki}x_i}\\
\displaystyle{x_k=-\sum_{i≠k}A_{ki}x_i}\\ \ \\
\displaystyle{|x_k|=|\sum_{i≠k}A_{ki}x_i|\leqq \sum_{i≠k}|A_{ki}x_i|<\sum_{i≠k}|\frac{1}{n-1}x_k|=|x_k|}\\
より矛盾.
 よって正則\\
\ \\ 
(基本変形とnに関する帰納法を用いて示すことも可能)

$$

(5)

(イ)

$$
k=1ではA=Eより明らか\\
k>1ではA^{k-1}が逆行列より正則.
$$

(ロ)

$$
Aが正則であると仮定する.\\
与式の両辺に左からA^{-1}をかけると\\
A^{-1}AA=A^{-1}A\\
EA=E\\
A=E\\
よって矛盾.
$$

(ハ)

$$
Aが正則であると仮定する.\\
A^k=Oの両辺に左から(A^{-1})^kをかけると\\
(A^{-1})^kA^k=O\\
E=O\\
よって矛盾.
$$

(ニ)

$$
EとAは交換可能より\\
(E+A)(E-A+A^2-A^3+\cdots A^{k-1})=E\pm A^k=O(符号はkの偶奇による)\\
(E-A)(E+A+A^2+A^{3} \cdots A^{k-1})=E-A^k=O\\
より正則\\
 \ \\
(x^n\pm1の展開と同じ)
$$

(7)

$$
\text{Tr}(AB-BA)=\text{Tr}(AB)-\text{Tr}(BA)=\text{Tr}(BA)-\text{Tr}(BA)=0\\
\text{Tr}(E_n)=n\\
よって題意は満たされた.
$$

(8)

$$
定理4.2より\\
PBQ=F_{mn}(r)\\
となる正則行列P,Qが存在.\\正則行列を書けても\text{rank}が変わらないことを用いて\\
\text{rank}(AB)=\text{rank}(AP^{-1}PBQ)=\text{rank}(AP^{-1}F_{mn}(r))\\
AP^{-1}=
\begin{pmatrix}
A_{11} &A_{12}\\
A_{21}&A_{22}
\end{pmatrix}とおくと(A_{11}はr×r行列)\\
AP^{-1}F_{mn}(r)=
\begin{pmatrix}
A_{11} &0\\
A_{21}&0
\end{pmatrix}\\
よって\\
\text{rank}(AB)\leqq r.\\
転置をとって同じ議論をすればAについても示せる.\\
\ \\
(\text{rank}=\text{dim} \ \text{Im}であることを用いれば自明)
$$

(9)

$$
A=\begin{pmatrix}a_1&b_1&c_1\\a_2&b_2&c_2\\a_3&b_3&c_3\end{pmatrix}\\
\bm{x}=\begin{pmatrix}x_1\\x_2\\x_3\end{pmatrix}\\
\bm{d}=\begin{pmatrix}d_1\\d_2\\d_3\end{pmatrix}とおくと
求める条件は\\連立方程式
A\bm{x}=\bm{d}の解が一つの媒介変数をもつことである.\\
すなわち,\text{rank}A=2であることが必要十分条件.
$$

(10)

(イ)

$$
a=0またはb=0のときは自明\\
a,b≠0のときを考える.\\
\text{rank}\begin{pmatrix}a&-b\\b&a\end{pmatrix}=
\text{rank}\begin{pmatrix}a&-b\\0&a+\frac{b^2}{a}\end{pmatrix}=2\\
よって正則.
$$

(ロ)

$$
和は自明.\\
\text{rank}\begin{pmatrix}a&-b\\b&a\end{pmatrix}=rR(θ)となるθが存在することを考えれば明らか(r=\sqrt{a^2+b^2\ ,\ }R:回転行列)
$$

(ハ)

$$
\text{rank}\begin{pmatrix}a&-b\\b&a\end{pmatrix}=rR(θ)の成分を比較するとr,θがαの絶対値,偏角になっていることが直ちにわかる.
$$

(11)

(イ)

$$
与式より\\
A(P+E)=P-E \\
 ^tP  {^tA}+  ^tA=  ^tP-E\\
両辺に左からPをかけて\\
{^tA}+P  {^tA}=E-P\\
{^tA}=(E+P)^{-1}(E-P)\\
与式を足すことで
(E+P)(A+{^tA})(E+P)=O\\
E+Pは正則だからA+{^tA}=O.
$$

(ロ)

$$
A(P+E)=P-E \\
(A-E)(P+E)=P-E-(P+E)=-2E\\
(E-A)\frac12(P+E)=E\\
よって正則
$$

(ハ)

$$
(E-A)^{-1}=\frac12(P+E)とA(P+E)=P-Eを用いて\\
(E+A)(E-A)^{-1}\\
=(E+A)\frac12(P+E)\\
=\frac12\{(P+E)+(P-E)\}\\
=P.
$$

(12)

$$
\|A\bm{x}\|=\|A^*\bm{x}\|\\
\Leftrightarrow \|A\bm{x}\|^2=\|A^*\bm{x}\|^2\\
\Leftrightarrow (A\bm{x},A\bm{x})=(A^*\bm{x},A^*\bm{x})\\
\Leftrightarrow {\bm{x^*}}{A^*}A\bm{x}={\bm{x^*}}{A^*}A\bm{x}\\
これより{A^*}A=AA^*\Leftrightarrow \|A\bm{x}\|=\|A^*\bm{x}\|\\
\bm{x}を実ベクトルのと置き換えて考える.\\
{A^*}A=(a_{ij})\ \ A{A^*}=(a'_{ij})とおくと\\
{\bm{x^*}}{A^*}A\bm{x}={\bm{x^*}}{A^*}A\bm{x}\\
\sum x_ia_{ij}x_j=\sum x_ia'_{ij}x_j\\
両辺をx_i,x_jで微分して\\
a_{ij}=a'_{ij}.すなわち\\
A^*A=AA^*
$$

(13)

(イ)
計算すれば明らか

(ロ)

$$
{^tXY}={^tY }{^tX}をもちいて\\
{^t[X,Y]}=[{^tY },{^tX }]=[-Y,-X]=-[X,Y]
$$

(ハ)
成分計算すれば直ちにわかる.

(ニ)
ヤコービ恒等式と(ハ)の対応関係を用いれば示される.

(14)

(イ)$${\Rightarrow}$$(ロ)

$$
A^{-1}が非負だからA^{-1}A\bm{x}=\bm{x}も非負.
$$

(ロ)$${\Rightarrow}$$(イ)

$$
A\bm{x}=\bm{0}となる\bm{x}が存在するとする.\\
A(\bm{-x})=\bm{0}より\bm{x},\bm{-x}はともに非負.すなわち\bm{0}.よってAは正則.\\
任意の非負ベクトル\bm{x}に対しAA^{-1}\bm{x}=\bm{x}は非負であるからA^{-1}\bm{x}も非負.\\
\bm{x}=\bm{e_i}を代入することでA^{-1}も非負であることがわかる
$$

(15)

(イ)
成分計算をすれば明らか

(ロ)

$$
A=(a_{ij}),B=(b_{ij})とおいて\\
\displaystyle{\sum_j(AB)_{ij}=\sum_j\sum_k a_{ik}b_{kj}=\sum_k a_{ik}1=1}
$$

(ハ)

$$
\bm{x}の成分うち最も絶対値が大きいものをx_k(≠0)とおくと,与式より\\
\displaystyle{\sum_i a_{ki}x_i=αx_k}\\
\displaystyle{|\sum_i a_{ki}x_i|=|α||x_k|}\\
\displaystyle{\sum_i a_{ki}|x_i|\geqq |α||x_k|}\\
\displaystyle{|x_k|=\sum_i a_{ki}|x_k|\geqq |α||x_k|}\\
1\geqq|α|\\
(物理でいう密度行列に対応.A=Eで純粋状態)
$$

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