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【お話】ほんものの愛コンテスト #2

ファンファーレが鳴り響く

 パンパカパーンパパパパンパカパーン
ラッパの音が高らかに鳴り響いて、コンテストがはじまりました。
お城の大広間には、たくさんの見物人が集まっていました。
審査員は王さまとお妃さまとお姫さま、そして魔法使いです。
 そうでなくてもお姫さまには日頃から、縁談話が後を絶ちませんでしたので、コンテストにかこつけて「我こそは!」とこの国の王座を狙う者たちも、世界各国から大勢集まってきているようでした。
司会を任された大臣がコホンと咳払いをしてから、声を張り上げます。
 「エントリーNO.1、隣の国の王子さまぁー」

愛は希少なバラの花


 紹介された王子さまは両手に抱えきれないほどのバラを持って、お姫さまの前まで進み出ました。
真っ赤なバラは、しっとりとしたビロードのように見えます。そしてよく見ると花びらにはうっすらと金色の粒が光っています。
 「これはとても珍しいバラで、わたしの国にしか咲きません。わたしのお姫さまへの愛は、このバラのように世界でたったひとつのほんもの。このバラをあなたに捧げることが、わたしの愛の証です。どうか受け取ってください」
そう言いながら片膝をついて、深々と頭を下げた王子さまに向かって、お姫さまは微笑みました。
 「ほんとうに美しいバラですわ」
 「お誉めにあずかり、光栄です」
頭を下げたまま王子さまは答えました。
 「でも…そのバラのような愛だということは、あなたの愛はいつか枯れてしまうということかしら」
お姫さまは人差し指を頬にあてて、少し首をかしげました。
 「だとすれば、それはほんものの愛だとは言えないのではないかしら」
小さくため息をついて、お姫さまは司会者に目で合図をおくりました。司会者は腕を大きく交差させて×印をつくって、
 「失格です!」
と王子さまに告げました。王子さまはがっくりとうなだれてしまいました。
 「そ、そんな!」
するとふたりの衛兵が王子さまに歩み寄り、両脇を抱えて立たせると、広間の外へと連れ出していきました。
 「お父様、わたしあのバラを育ててみたいわ。今度貿易の交渉をしてくださいませね」
お姫さまは王さまにそう言って、また司会者に合図をおくりました。
 「エ、エントリーNO.2! 隣の国のその隣の国の第3王子さま!」


愛の詩

 次の王子さまは優雅な足取りでお姫さまの前に立ち、マントをひらりとはためかせてお辞儀をしました。
 「わたしの愛の詩をお聞きください。そうすれば、わたしの愛がほんものだということがおわかりになるはずです」
お姫さまは王子さまを見つめて微笑みました。
 「聞かせていただきますわ」
ゆっくりとお姫さまが目を閉じると、広間のざわめきも静かになりました。
王子さまは、なめらかな声で詩の朗読をはじめました。

おお姫よ わたしの姫よ あなたの瞳は星のように
そしてわたしの愛は宝石のように光り輝く
おお姫よ わたしのすべて
あなたのためにこの身を焦がす わたしの苦しみをあなたは知らない
おお姫よ あなたのためなら わたしはすべてを捧げよう
おお…

 「ちょっと待ってください」
ぱちりと目をあけてお姫さまは、王子さまの朗読をさえぎりました。
 「え? まだ始めたばかりですよ。これからが大切なところなのに」
不服そうに口をとがらせて王子さまは言いました。
 「いま、すべてを捧げられるとおっしゃったのは本当ですか」
お姫さまはやわらかい口調で尋ねました。
 「もちろんですとも! わたしのすべては、お姫さまのもの」
詩のつづきを読むように、王子さまは答えました。
 「そうですか、ならばこの場でわたしにその命を捧げてくださいな」
お姫さまの言葉に広間に集まっている人々は一斉にざわめきました。
王子さまも青くなって後ずさりました。
 「姫!」
となりで魔法使いが小声でお姫さまを止めようとしますが、お姫さまは構わずに続けます。
 「できないとおっしゃるの?」
 「ほ、ほかのことならなんでもいたしますが、死んでしまっては元も子もありません」
ひきつった笑いを浮かべて王子さまが答えると、お姫さまはにっこりと笑って、
 「わかりました。それはごもっともですね、では、あなたの国をわたしにくださいますか」
 「は?」
 「あなたは確か第3王子でしたわね。王位継承権は3番目。お兄さま方と争ってでも王位を手に入れて、そしてわたしに捧げてくださる?」
口元に笑みを浮かべたまま、お姫さまは王子さまを見つめました。
でも王子さまは、どうしても微笑み返すことができませんでした。
 「失格!!!」
司会者の声が広間に響き渡りました。

<#3につづく>


くぅの本日のヒトリゴト 2024.9.12

 読みにきていただき、ありがとうございますー☆
今日もまだ蒸し暑いですね。

 ほとんどの過去のお話はワープロ原稿が手元にありまして、
それを見ながら打ち込んでいます。
この台詞、無理があるやろ!、とか、過去の自分にツッコミいれながらですけどね。
「うるさいな、もう新しいお話は思いつかないくせに!」と、過去の自分に怒られるかもね(苦笑)

 まあそんな、焦りなさんな。
大丈夫。きっとまだ、なにかあるよ。

ではまた、#3でお目にかかれますように。
くぅでした。



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