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会えない間何してた?

本と喫茶とギャラリー縁側が、営業再開に伴って、「会えない間、何してた?」というタイトルで新聞を作るというので、それに送るように、私もコロナ渦での生活を振り返った文章を書いてみた。
そしたら、ブログかよ、という長さになったので、ここにも記録として残しておきます。

「会えない間、何してた?」
ペンネーム ひらたんな


正直に言うと、かなり生きやすかった。
大変な思いをしている人がいる中で、あまり大きな声では言えないけれど。

突然に現れた夏休みのような時間。
毎日お店に立っていると、ニュースに連動するかのように客足は減っていった。
コロナが流行る前は、始めて半年経たない自分のお店で、お客さんが少ない日は、このまま少しずつ客足が減っていって誰もこなくなるんじゃないか、と不安になることがあった。
でも、今回はお客さんが減ることは当然だ、と不安にならないどころか、自分の時間がたくさんあるということに気付いた私は、ここぞとばかりに自由に過ごすようになっていった。
時々訪れるお客さんの合間に、海外ドラマを観たり、消しゴムはんこを彫ったり。

何かをつくりたい、と常に思っているくせに、やっぱり目の前に人がいて、予定が入るとそっちを優先してしまう。
だから、人と会うことが制限されるということは、自分1人で没頭して製作活動をするにはもってこいかもしれないと思った。
私はやってみたいな、と思っていた油絵を描いたり、木版画を彫ったり、俳句をつくったりした。

テレビやネットを見ていても、みんな家にいた。
不思議な一体感があった。
普段は、休みの日は、外に出かけるのが好きだ。友達と会ったり、一人でも好きなお店に行ったり新しいお店を開拓したりする。
でも、外に出れなくなって、出掛けられない状況を嘆くどころか、ホッとしている自分がいた。
休みの日、ずっと家にいても、日が暮れる頃に罪悪感に駆られることがなかった。
それは新たな発見だった。
自分のことをアウトドアな人間だとばかり思っていたから。
1日家で過ごした日に鬱々としていたのは、勝手に楽しそうな人と比べてしまってたのかも。

仕事が家に帰ってからも、今日は何をしよう、と考えるようになった。
家に帰る時間は特に変わらないはずなのに、なんだかみんなが暇を持て余してるので、つられてすごく時間があるように思えた。

私は料理をするようになった。
今までは嫌いだったこと。
私にとって料理は、まともな大人になるために、やらなきゃいけないミッションの一つだった。
覚えるべき知識が多い上に、時間もかかる、めんどくさい、食べる時間より作る時間の方がかかる、作ったからと言って思ったほど節約にもならない、器用でマルチタスクじゃないとできない、こんなに大変なのに、出来て当たり前、という風潮なのは理不尽だ、と思っていた。
でも、料理が出来ないことへの負い目、コンプレックスを感じていた。

作ったことのなかったメニューを一つ作るたびに、自己肯定感が1上がった気がした。
春巻きを作る、1ポイントup
餃子を作る、1ポイントup
エビマヨを作る、1ポイントup

(中華ばっかだな)

食べた家族が褒めてくれると、更に自己肯定感が上がった。
そうするうちに、私は昼間から今日はどんな新しき料理を作ろうかと、考えるようになった。こうして文章にしてみるとなんて単純なんだ。

料理って本当はすごく創造的な行為なんじゃないか?と思った。みんな当たり前のようにやってるけど、当たり前じゃないよ、と思う。

私が消しゴムはんこを作ったり、zineを製作したりしているのをみると、そういうことに馴染みのない人は、すごいね、って言ってくれるけど、料理だって作ることだし、めちゃくちゃすごいことだと思う。何で料理だけ出来て当然みたいな感じなのかよく分からないなあ。

毎日、今やりたいなってことをやろうって思って過ごした。
2ヵ月くらいそうやって過ごしてみて、部屋の壁を塗ったり、お菓子を作ったり、ラジオを録ったり、ピアノを弾いたり、漫画を読んだりした。
意外だったのが、時間が出来たらやりたいなってずっと思っていたことは、あまりしなかったということ。
ギターは何度も練習したいと思ったけど手が伸びなかったし、積読は積読のまま、filmarksでチェックした296本の観たい映画はほとんど観ないままだった。
時間があったらやりたいなってことは、時間ができてもしないんだな。
でもそれでいいと思った。
やりたいなってことには旬があって、その気持ちが高ぶっている時にやるのが一番楽しいってことに気付いた。

地元の田舎に帰って3年。
みんなが友達と会えない!飲み会ができない!と嘆いている時に、はじめて友達も近くにはおらず、飲み会とは無縁の生活をしていたことに気付かされた。
そして、オンライン飲み会が主流になり、むしろ普段よりも友達と話す機会が増えた。
お客さんや家族と話す機会はあるから、友だちと時々しか会えなくてもそんなに気にしていなかったけど、久しぶりに友達と話して思ったのは、友達と話すのは楽しい、元気になる、という文字にしてしまうと嘘くさいほどに陳腐な事実だった。
時々、学生時代の写真やSNSを振り返ると、すごくテンションが高くて、若かったなぁ、、と思っていたけど、あのテンションの高さって、若さが故というよりは、毎日友達と過ごして楽しかったからだったんだな、と思った。

地域で感染者が出ていないこと、田舎に住んでいて生きているだけでかかるお金が少ないことから、影響が少ないという立場だから言えることなのだろうが、
「早く普通の生活に戻ったらいいですね。」という周りの人達の言葉にいまいち共感できないままでいる。

普通の生活に戻ったとしても、内にこもることを楽しんでいたい。自分の今日のやりたいことをやり続けたい、そう思う今日この頃です。


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