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“奇をてらう”空間デザインの手法

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「奇をてらわない」というデザイナーはたくさんいるが、「奇をてらう」というデザイナーはなぜかいない。 「奇をてらう」意味: わざと普通と違っていることをして人の注意を引こうとする。…
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2021年12月の記事一覧

20年間の仕事をふり返る3

【18年前: 鉄板焼 憩家】 初めて月刊商店建築さんに掲載して頂いた思い出深い案件。天正三木屋さんに続き、ここでは壁面を伝う滝を作った。 エントランスに一部生簀を兼ねた池を作り、池に渡したガラスの橋を歩いて店内に入る。水中ポンプで壁の上端まで池の水をポンプアップし、そこからオーバーフローさせて水を落とす。やはりここでも水の動きに悩まされた。 石貼りの壁全体的にまんべんなく水が流れてほしいのに、水は束になって枝分かれして落ちる。水を流した瞬間「なんでやねん」となった。オーバ

私は建築家ではない 20年間の仕事を振り返る

仕事を始めて20年、ということで昔を振り返る。大阪芸術大学の建築学科で建築を学んだものの、落ちこぼれだった私は就職せずバンドを続けるために大学院に進み(なんと親不孝な)、大学院でも音楽ばかりに情熱を注ぎ、教授にボロクソに言われながらもなんとか修了した。その後、院の研究員として大学に籍を置きながら大阪の設計事務所に出入りしているときに、実家の稼業である店舗デザイン会社のデザイナーに欠員が出るので帰って来いと言われた。うちの会社はいわゆる店装屋という店舗を設計施工する会社で、施主

20年間の仕事を振り返る2

【19年前:天正 三木屋】 地下防空壕が出てきてびっくりした案件。クライアントは天正時代の三木城主の末裔。贈答用の手延べうどんを製造し、オンライン販売されていた。事業拡大のため試食もできる直売所をつくりたいというご依頼でした。注文が入れば、エントランスに設置したカマドの羽釜でグツグツとうどんを茹でる。大きな御影石の天板からの湧水が水盤へと流れ、絶えず水の音を響かせる。 工事が始まって水盤を作るため重機で土間を掘削したところ、地面にえらく大きな空洞が口をあけた。重機が転落して