化物

眠れない。

朝イチの元気チェック。
「元気?」と聞かれれば「大丈夫です」と食い気味に答える。
だって今から12時間一緒にいるのに、大丈夫じゃなかったら大丈夫じゃないじゃん。

カメラマンと上司と3人、行き2時間の車内で相槌を打つのに精一杯だった。

時間調整がうまくいった。
仕事がちゃんとできた。
ご飯がおいしかった。

時間潰しの散歩、私が食べたいと言って向かったジェラート、楽しかった。こういうデートがしたいなあ。「元気だね」と言われた。

帰りの車内、元気になった私は運転手が眠くならないように話しかけ続けた。

「ここまでできれば大丈夫だよ」
「直属の上司とも大丈夫そうだと話したよ」
「でも、もしダメで休んでも俺がやるからプレッシャーに感じなくていいよ」

車から降りると頭痛と吐き気が襲ってきて、泣きながら帰った。
消えちゃえよ、消えちゃえよ。

湯船をためて泣いて、ご飯を食べて、辞めていた薬を飲んで、また気持ち悪くなって泣いた。
音楽を聴いても、漫画を読んでも、YouTubeを見ても治らない。
4時間も前に目を閉じたのに、頭の中は上司のことでいっぱいで冴えている。

復帰して3週間、私は毎日泣いてるよ。
仕事から帰ると夜は何もできないよ。
上司の言葉が疑似恋愛みたいに私に刺さって、恋愛感情なのか依存したいだけなのか分からないまま、そのことだけを考えることで誤魔化して息をしていた。

どうしてこの人に私の世話を全部任せたの?私が女の人達に心開かなかったから?
こんなにも忙しい人なのに、遠方の仕事を私とセットで任せて。私が会社の外でリフレッシュできるように?仕事が楽しいってまた思えるように?
どんな意図かわからないけど、もしその策略だったら全部成功してるよ、よかったね。

私が朝起きて仕事に行けているのは、トイレで泣き出しても会社から帰れないのは、「大丈夫?」と聞かれて吐きそうになりながら「大丈夫です」と答えるのは、会社の人たちに私の存在をもう何も気にしてほしくないからだ。

急にテレワークしたり、休憩を2時間とったり、ただ画面をスクロールしていたり、そのくせあの人の前でだけはヘラヘラとしていたり。きっと全部見てるんでしょ。この子辞めないかな?体調悪くないかな?てか仕事全然してねえなって。
だから私には話しかけず、私以外でご飯行って私の話してるんでしょ。

こういう思考になり、でもちゃんとこれが被害妄想であること、あの人たちが純粋に心配してるだかってことをちゃんと俯瞰して、その上で死にたくなる。
ああ、ここまでやってもらって、誰も悪くないのに、私が普通にできないだけなんだ。

牡蠣のミルキーさを言語化できないこと、なぜかサーバーにうまく繋がらないこと、返すの忘れてたETCカード、明日40分走るのに残量1のガソリン、修正できないまま先方に送りつけた原稿、提出を無視してる来年のスケジュール案。

明日、行けないねえ。
でも、休む方が辛いんだよ。

あの人に行けませんって送ったら全部飲んでやってくれるだろう。お母さんに話したら、また帰ってこいって言われるだろう。あ〜、誰にも迷惑かけたくないよ〜〜。


スキップとローファーの最終回を見て泣いて、星野源のライブ映像を見てこれを書いた。よく考えたら、上司はちょっと星野源に似ている。

ちくしょう偽星野。
この後ちゃんと眠れて、明日ちゃんと仕事に行けて、履歴書の返事もそろそろ来ますように。


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