トヨタとホンダの組織体制
トヨタ
トヨタは数ヶ月に一度、組織改正についてニュースリリースを発表している。その根本にある考え方はTPSに代表されるムダの徹底排除であり、「適材適所」による柔軟な役員変更・組織改正である。
近年はフェローの設置によって高度な専門性を持った人材を役員クラスへ登用し、人材育成にも力を入れている。これはCASE革命によって一層アラインメントの時代となり、他社とやりとりをする役員クラスの人間に仲間を作る機能・能力が期待されているためである。新しい時代に必要な人材を早期から育成し、自動車産業を牽引する立場として存在感と責任感を示しているように思う。
「副社長」と「執行役員」を「執行役員」に一本化(2020年4月1日付)
執行役員を同格にしたうえで、チーフオフィサー、カンパニープレジデント、地域CEO、各機能担当に分け、それぞれの役割をより明確化。役割は固定せず、その時々の適任者を配置。
直近の変更としては2020/4/1付で副社長が廃止され、執行役員の役割の1つである「チーフオフィサー」が前面に出る。これまでは、社長や副社長、執行役員という役職が“主”で、CxO(Chief x Officer)職は“従”として担当分野を示す形で利用されてきたが、『階層を減らすことによって、私自身が、次世代のリーダーたちと直接会話をし、一緒に悩む時間を増やすべきと判断した(豊田章男社長)』とのことで、各CxOはより上層に近い立場となることで責任と権限を手にするとともに組織全体での意識共有が促進されることでより自律的なチームが構成されることを期待しているのではないか。
メモ:トヨタ生産方式
トヨタが生み出した工場の生産活動の運用方式であり、組織マネジメントの方法論でもある。通称TPS/トヨタ式。
トヨタ式においては、作業工程における「7つのムダ」を排除することを基本とし、「ジャストインタイム(=必要なモノを、必要な時に、必要な分だけ流れるように停滞なく)」と「自働化(=人の働きを機械に置き換える)」を2つの柱として生産性の向上を目指す。
(加工/在庫/造りすぎ/手待ち/動作/運搬/不良・手直し)のムダ
こうしたムダを徹底的に省いていくためには、仕事の一つひとつについて「これは付加価値を生んでいるか?」「これはどのようなサービス向上につながるか?」と問いかけながら行動に評価を行い、改善していく姿勢が必要となる。時間がかかるということはそこに改善すべき動作のムダがあるからであり、作業員はただ「急ぐ」のではなく「動作のムダを排除する」ことに意識を向ける。
ホンダ
一般に「ホンダ」とは本田技研工業のことを差すが、実はこの会社自体は四輪の開発・生産機能を持っておらず、営業や事務、管理部門に限った組織である。4輪開発においては開発・生産機能を本田技術研究所(商品開発)、ホンダエンジニアリング(生産技術開発)などに分社化しており、「営業(S)・生産(E)・開発(D)・購買(B)」の自立した各領域による協調運営体制をとっていた。これは研究開発を存分に行うべく予算枠を確保する(研究開発費によって本社の業績が下がるように見えることを避ける)ためと言われており、技術志向のホンダらしい組織体制と言える。
しかしながら2020/4/1付の組織改正においては、この四輪事業が本社に統合されると発表された。その背景には分社化に伴ってオペレーションの複雑化、部門間の意思統一の困難化などが指摘されている。
また、二輪, 四輪, パワープロダクツなどがそれぞれ独立していたところ、それらを統括して次世代サービスの企画開発を行う運営体制に移行した。これにより意思決定プロセスの高速化に加え、ホンダの最大の強みであるパワーユニットを活かした幅広い事業・商品を活かすための構成となった。
両社ともクルマ産業の次世代化、すなわち新たなモビリティ社会に向けた取り組みとして組織改正を行っているが、トヨタは仲間作り(アライアンス)に向けた強化、ホンダは自社の企画開発力の強化と方針が異なるのはそれぞれが市場において担うポジションの違いをも反映しているように見える。
メモ:マネジメント
ドラッカーによれば「マネジメント」の役割・仕事は次のように定義されている。
1. マネジメントの役割
①自らの組織に特有の使命を果たす
②仕事を通じて働く人たちを生かす
③自らが社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題について貢献する
2. マネジメントの仕事
①目標を設定する
②組織する
③動機づけとコミュニケーションを図る
④評価測定する
⑤人材を開発する
すなわち、目標設定と組織化、人材の評価測定を通して、組織として責任と成果を上げることがマネジメントに求められる。
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