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データ提供はプロダクトの機能の一部である

この記事は10Xプロダクトアドベントカレンダーの18日目の記事です。
昨日は PDMのkeiさんの「10XでProduct Fridayという社内発表会を運営している話」という記事でした。

データアナリストをやっている村中です。今日は、データ分析とプロダクトの関係について自分の考えていることを綴ってみようと思います。

データアナリストとプロダクトチームとの距離は遠い

前提ですが、10XはStailerというネットスーパーを垂直立ち上げできるプラットフォームを提供しています。お客様がお買い物で使う「お客様アプリ」や店舗・配達スタッフの方が使う「スタッフアプリ」「管理画面」などのシステムを開発している会社です。
ただシステムを提供するだけでなく、ネットスーパーの事業運営に必要な知見の提供や提案をしており、事業の成功に伴奏している点がユニークだと思っています。

一方で、現状10Xのプロダクト組織とデータ分析チームの距離は遠く、普段あまり一緒に仕事をしているところを見ないかもしれません。直接の接点はデータソースの仕様を訪ねることくらいかもしれない。

これは単純に分業しているからであり、それ自体は悪いことではありません。データを生成するのはソフトウェアエンジニアの仕事ですが、データアナリストはSQLを書くことができるので、データの可視化はアナリストやアナリティクスエンジニアがやっていることがほとんどです。

多くのテクノロジー企業にとって事業のボトルネックは常にソフトウェアエンジニアなので、SWEはプロダクトを作ることに集中できることは良いことです。
ただ、トレードオフもあるとしたら、それはデータ提供の価値がプロダクト組織に正しく伝わらず、過小評価されてしまう可能性があることです。

なぜStailerにとってデータの可視化は重要なのか?

先ほどプロダクト組織とデータアナリストの距離が遠いという話をしましたが、実はデータアナリストがプロダクトの機能の分析に対してリソースを割けていないというのも一つの要因だと思います。

10Xのデータアナリストは私含めて4名いますが、もっぱら事業側の分析にリソースに投じています。
理由は大きく2つかあって、一つは、10XがプラットフォームであるがゆえにNのパートナーが存在し、横断的なデータの可視化を先に進めないと、パートナーの増加に対して必要なアナリティクスリソースも線形に増加してしまうことが予想できるため、先に優先的に対処が必要だと判断しています。

もう一つの理由が、「ネットスーパーの普及」に向けたボトルネックはお客様であるエンドユーザーというよりも、小売企業にあると考えられ、小売企業の事業運営にデータは極めて重要な役割を果たすからです。

具体的にいうと、ネットスーパーの事業は採算を成立させる難易度が非常に高いというのがあります。

収益性の構造分解

ネットスーパーの多くは通常の実店舗から配送する店舗出荷型のモデルを採用していますが、採算性が厳しい例として以下のようなものがあります。

  • 食品小売はそもそも他の業態に対して原価率が高い。

  • ピッキング費用が通常より高い。通常のECで購入される商品種類は数点だが、ネットスーパーでは20~30点以上の多種の商品を購入する。イチゴやブドウや寿司など、丁寧な梱包が必要で時間がかかる。自動化は進みづらい。

  • 配送コストが通常より高い。ネットスーパーでは賞味期限が短い商品が多く、鮮度や品質が重要なため、受け渡し直前にピッキングして配送する必要がある。生鮮品なので宅配ロッカーに入れておくわけにもいかず、配送の最適化が難しい。常温、冷蔵、冷凍商品など、適正な温度管理が必要で、嵩張る商品もおおいため、配送キャパシティも小さい。

このような事業構造のため、ネットスーパー事業はただ需要さえ伸びれば良いわけではなく、需要に合わせて必要な人員や車両を確保する必要があり、供給は需要対して多く用意しすぎても少なく用意しすぎても問題なのです。採算性確保のためには、需要の増強とそれに合わせた供給の確保と、ミリ単位の最適化が必要であり、それにはデータの可視化が必要不可欠なのです。

一方で、一度データが正しく可視化されると、小売企業はPDCAを回すことができます。
例えば、機会損失の可視化、販促の効果、商品施策の効果、スタッフの生産性などは、それが正しく可視化されるだけで小売企業は採算の改善に向けて正しい方向に向かっていくことができます。
採算が改善すれば、ネットスーパー事業への再投資が進みます。こうしてネットスーパーの普及速度を上げることができます。

プロダクトの提供先というと、お客様やスタッフを思い浮かべやすいですが、データ提供を介して小売企業のマネジメントに大きな影響を与えることが可能なのです。

このようにプロダクトが生成するデータは広い問題解決範囲をもつ一方で、こうしたデータの可視化自体が事業にとってどうインパクトするのかは計測が難しく、目に見えづらいので新機能の開発に対して優先されにくく、組織やチームにオーナーシップも持たせづらい構造にあると思います。

「分業による効率化」と「協業による最適化」

前述の通り、ソフトウェアエンジニアとデータアナリストは分業しています。ソフトウェアエンジニアはデータを生成し、データアナリストはそれを使っています。ソフトウェアエンジニアはソフトウェアを作ることに専念できるし、データアナリストは分析に専念できます。

専念できることで似たような仕事を反復的にこなすことができる、結果、認知負荷が適正なサイズに刻まれ、意思決定の精度と速度が上がり、業務が効率化されます。

極端な例だと、18世紀の第一次産業革命では蒸気の利用と生産の機械化が進み生産性が8倍になったそうです。この成果は人の作業が機械に置き換わるだけではなく、人員の配置が再構成されたことにより、作業は専門化され、単純化され、意思決定の精度と速度が上がり、目覚ましい生産性改善を成し遂げたと言われています。

分業は「効率化」を促します。一方で行き過ぎた分業は、作業自体の優先度判断を難しくします。何の仕事にどれだけのリソースを投下すれば良いのかという判断、「最適化」が難しくなります。
自分はデータ分析チームとプロダクト組織には、今より強い協業が求められていると思います。

俺たちはどうすればいいのか

分業ができることの前提として、「プレイヤーにとって重要な情報が可視化されていること」が必要だと言われています。

それは「データがプロダクトの提供先の小売企業にとって極めて大きな価値を提供していること」「現状発生しているデータ課題によって発生している事業課題」をクリアに可視化していくことが重要だと思います。逆に情報がプロダクト組織に対して適切に可視化されれば自ずと最適化が進んでいくはずです。

だから僕はプロダクト組織のメンバーに対して声を大にして言います。

「ヤッホーーーーー!プロダクト組織の皆さーん!!聞こえますかーー??みなさんが生成するデータ資産が事業にとんでもない成果を生んでいますよーーーー!!!!これから一緒に事業作っていきましょうねーーーー!!!」

仲間募集

自分が言いたかったのは、Stailerが提供しているプロダクトの定義にデータまで含めると、そのポテンシャルは半端ないということです。そしてこれからはデータ提供もプロダクトの一部として扱っていくべきだと思います。

繰り返しになりますが、データ提供は、小売企業のマネジメントに影響を与え、P/L改善のPDCAを促すことができます。P/Lが改善すれば再投資が実行され、ネットスーパーの普及を加速させます。

もちろんデータは小売企業のPDCAだけでなく、ソフトウェア自体の問題解決範囲を広げることができます。需要予測だって、パーソナライズだって、OMOだって、データが資産となってStailerの競合優位性を高める未来はそう遠くはないと思います。

私の上司の上司である元モノタロウの執行役 橋原さんの記事より
https://10x.co.jp/news/seminer_202311_report/


最後になりましたが、これから一緒にプロダクトとデータの資産を一緒に作っていただける方を切に求めています。

明日はCSのoga-san!To be continued!

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