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MIT MBA留学で学んだこと(1)~プログラム概要~


はじめに

このnoteではミドルキャリアのMBA留学体験記としてMITスローン経営大学院の1年制MBAプログラムSF MBA (Sloan Fellows MBA)についてご紹介出来ればと思います。

自己紹介

簡単に私のバックグラウンドを記しておきますと、国内大学卒業後、米系戦略コンサルティングファームにて2年半勤務、その後外資系プライベートエクイティ(PE)ファンドに約10年勤務しました。退職後は個人でPE投資を行い、最近ではVCとPEのハイブリッドファンドの立ち上げに参画しております。PEファンド時代には、プライベートで株主という立場で会社の創業に関わり、その会社を創業から3年半後に上場企業へ売却することも経験しております。

実は以前にもMBAを受験した事がありましたが、その時は叶わず。PEファンドで10年勤めて会社の売却も経験した今、改めてキャリア上心残りだったMBA留学に挑戦しようと思いました。ファンド退職後に留学の勉強を始めて、2024年6月より上記のプログラムで留学しに来ております。

MBAプログラムの概要

まずMBAの概要としては、2年制のMBAは比較的年齢層が若めで平均で20代中盤です。9月入学で翌年6月から8月は3ヶ月ほど夏季休暇があり、その間にインターンシップをして次の就職先を探す人が多いです。これに対して私が入学した1年制のSF MBAは年齢層が30代半ばです。6月に入学して8月までの授業密度が濃く、2年制のMBAで1年間かけて学ぶコア科目6科目を3ヶ月で終わらせます。したがって夏季休暇もほとんどありません。

欧州では1年制のMBAがスタンダードになっていますが、アメリカは2年制のものが多いです。アメリカで1年制MBAのメジャーなところは、スタンフォード大学のMSxとMITスローンのSF MBAの2つがあります。(ただしスタンフォード大学は修了後に得られる修士号がMBAではなく、MOS(Master Of Science)になります。) MITがその中でも全米で一番歴史ある1年制MBAだそうです。スタンフォード大学のMSxのプログラムはかつてMITスローンを創設したスローンさんがSloan Program at Stanfordと名付けたところから始まったプログラムのようで、両校の内容は夏にコア科目を凝縮して終わらせる・Electiveが多い、とかなり似た内容になっています。私は留学するならアメリカ、かつMBAなら1年制と決めていたため、上記2校しか選択肢にありませんでした。

クラスのプロファイル

2024年入学では、1学年で109名(うち103名が入学)、国籍は40ヶ国、76%がアメリカ以外から、女性比率は31%、平均勤務年数14.5年、修士号保有比率47%となっています。
更に詳しく知りたい方は以下リンクより願書をダウンロードしてみてください(個人情報の登録が必要です)
https://applymitsloan.mit.edu/register/?id=16225df3-8c0c-44c8-bff3-95227150cc61

2024年入学者のプロファイル

入学前の勤務先として多いのはコンサルティング、政府機関・公共機関、金融サービス(PEファンド/投資銀行/VCなど)、テクノロジー。Undergraduateはスタンフォード、ケンブリッジなどのトップスクール卒もいますが、大半は自国の大学を出ている人が多いです。学部は理系、特にコンピューターサイエンスや数学が多いイメージです。

学費については、日本人だけ社費(=所属企業からの派遣)が多いですが、大半は私費。学費は1年間のプログラムで19万ドル(1ドル150円換算の今だと3,000万円近く)なので大半の学生は学校が提供or案内するローンのプログラムを活用しています。

定性的な印象では、キャリアアップの転職のために来ているというよりは、時代なのか年齢もあるのかMITだからなのか、AI・ロボットなどの技術に興味を示して、それを起点に次のビジネスを自分で起こしたい、職を探したいという人が多いです。(現に、103名の同級生の中でAIについて学ぼうというWhatsAppのグループには66名が所属)

学期の構成

まず入学すると夏学期はコア科目6科目の履修のみに充てられます。トータル189単位が卒業までに必要なところ、60単位がここで終了します。その他にコア科目は2つ(9単位 x 2)あり、それは秋学期と春学期にそれぞれ1つずつ受けることになります。それ以外の111単位はElectiveと言って好きな授業を取る事が可能です。Sloanスクールのビジネスの授業はもちろん、MITの他の大学院や、ハーバード大学とCross Registrationと言って提携をしているので、この制度に開かれているMIT・ハーバードの大学院全ての授業の選択科目が受講可能になります。

学期の構成は、6~8月が夏(前半S1, 後半S2)、9~12月が秋(前半H1、後半H2)、1月はIAP(Intensive Academic Program)と言って卒業生も含め短期集中の授業が開催される期間があり、最後に2~5月が春(前半がH3, 後半はH4)という形になります。卒業に必要な単位数は2年制と1年制であまり変わらないので、イメージとしては、2年制が通常18ヶ月 (9ヶ月x2年間)でこなす内容を12ヶ月でこなす形になります。スケジュールは1.5倍凝縮し忙しくなるため、高いコミットメントが求められます。

各学期の科目一覧(コア科目・取得予定の選択科目)

入学直後の夏が最もハードな期間です。夏の前半と後半に分けられ、前後半それぞれ3科目ずつ、月曜から金曜の毎日8時半から16時ないしは17時半まで授業があります。クラスは約50名ずつのセクションと呼ばれる集団に分けられ、セクションAとBが出来ます。その中でさらにスタディグループという学校が任意に組んだ4~6名ほどのグループに分かれます。グループ課題などはチームでアウトプットを作ることが求められるので、このグループで授業以外の時間にミーティングをして一緒に勉強する時間が必要になってきます。毎日平均すると1~2時間程度はこれに費やしていました。長時間一緒にいるので、だんだん家族のような存在になってきます。

夏学期の時間割例

夏学期のコア科目は、前半がマーケティング戦略、統計・解析、ミクロ経済学、後半はオペレーションマネジメント、アカウンティング、組織マネジメントとあり、前後期通じてリーダーシップというコア科目もあります。統計・解析、ミクロ経済学、オペレーションマネジメントは数学寄りの授業で、公式を理解し、分析の型を覚え、演習問題やケースで応用する形になります。マーケティング戦略、組織マネジメント、リーダーシップは定性的なので、ケーススタディについてのレポート作成、クラスのディスカッション参加、チームプレゼンテーションなどが評価の対象になります。

毎週水曜日は主にリーダーシップの授業に充てられ、講義があったり、テーマ別のワークショップがあったりしました。私は Difficult Communication, Facilitation, Constructive Feedbackという3つのセッションに参加しました。それぞれ、シチュエーション別にどんな思考プロセスで考えるべきかのフレームワークの紹介や、実際のケースでそれを試してみようという、理論とケースのセットで構成されていました。

毎日の予習復習・課題

毎日Canvasというウェブサイト上に翌日の授業の予習課題がアップロードされます。3科目分でリーディングの量は毎日20ページ近くあったと思います。それに加えて、オペレーションマネジメントは授業のショートビデオ(10分弱)を見てくるようにと言われたり、統計・解析ではスライドを完全に理解してから授業に臨まないと不安だったので、スライドを全て見て、スライドの説明ビデオ(1時間~1時間半)を見てから授業に臨んでいました。その他の科目も授業の予習をしていないと発言出来ないどころか、コールドコールと言って、突然当てられてケースの説明を求められたりもするため、予習に毎日3時間程は時間を使っていたと思います。

Canvasのサイト例(リンク先に課題のリーディングがあります)

予習とは別に課題もあります。統計・解析はほぼ毎回演習問題の個人課題(それが無い時は重めのグループ課題)、マーケティング戦略は3日に一度くらい20~30ページのケーススタディを読んで、分析を考察したチームレポート提出、ミクロ経済は1週間に一度ほど重めの個人orチーム課題とシュミレーションテスト(ゲーム理論)やチームプレゼン、オペレーションマネジメントは毎週かなり重めのチーム課題とシュミレーションテストやベンチャーピッチのプレゼン、アカウンティングは週に一度個人課題、という形で各課題をこなすのに個人課題は1~2時間、チーム課題は内容によって最大20時間ほど費やしたものもありました。統計・解析、オペレーションマネジメント、アカウンティングは期末テストもありました。

夏学期:予習や課題の負荷
夏学期前半(左)、後半(右)でこなしたリーディング、レポート、レクチャースライドの量

こうした課題も合わせると、私のスケジュールは8時半から授業を受けて16時頃に授業が終わり(RecitationというTA(Teaching Assistant)による追加授業がある日もある)、18時頃までスタディグループの勉強・会議を行い、夕食を一気にかき込んで、途中21~23時は日本と仕事のミーティングをオンラインで行い、その後また夜中2~3時頃まで勉強するということがルーティンになっていました。(私は日本時間に合わせての仕事もあったので、それらがなく、かつトップスコアやオールAなどにこだわらなければ22時頃に切り上げることも可能だと思います)
成績は授業の参加度(出席、発言)、課題の点数、期末テスト、プレゼンテーションやシュミレーションなどのチーム課題などで決まりますが、授業によって評点の配分は異なります。

発言はなかなか難しく、TAが発言回数やそのクオリティを記録しており、発言が弱い人は途中で警告されたりもしていました。私は最前列の真ん中を常に陣取り、手を挙げ続けていたので、それなりに発言回数を得られていた(半ば、「また君か」と逆に呆れられていた)のですが、クラス約50人の1/3~半分が常に挙手をするので、発言をしようと思っても、自分が発言したいタイミングで当てられる事は難しいです。そのため、常にどんなトピックに関しても自分の意見が言える、予習でインプットした内容を的確・簡潔に発言出来るようにしておくことが重要です。取締役会など短時間でしっかりバリューのある発言をしないといけない際に、この経験は非常にシンクロするものがあり、実際この力は鍛えられたと思います。

以上、プログラムの概要を紹介しましたが、次は入学前までのオリエンテーションや事前課題を紹介し、その後、各授業のハイライトで科目の内容の紹介もしていこうと思います。

MIT(マサチューセッツ工科大学)の有名な図書館Kilian Courtの概観

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