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無限大ゴリラは作曲依頼(2曲目)をして増殖する

またの名を、妄想力豊かなミュージカル好きの歴史創作限界オタクが推しのミュージカル化妄想を作曲依頼(2曲目)してもう少し現実に近付けた記録とその感想


前回ほど長くない前置き

なぜ作曲依頼をしてもらったか、なぜ無限大ゴリラなのか。
そんな疑問は前回の記事を読んでください。

さて前回の作曲依頼から約1年が経ちまして……全然コロナ落ち着いてない!

観劇の予定は崩れ去ってしまったわけですが、オンライン配信が増えたのは地方在住オタクとしてはありがたかった。
チケット代とほとんど変わらない宿泊費……チケット代の数倍の交通費……そもそも日程が……等々地方在住オタクあるある問題を考えると、家に居ながらに気になっていた公演をリーズナブルに楽しめる配信はとてもやさしい。

でもやっぱり生での観劇に勝るものはないわけで……
昨年度の観劇は比較的コロナが下火だった時期に地元に来た全国公演の1公演のみ。
久しぶりに劇場で観たミュージカルの感動はひとしおですね。
全身でミュージカルを”浴びている”というあの感覚!
飢えた細胞1つ1つにまで音楽とダンスが沁みわたっていくようなあの感覚!
これぞミュージカルの醍醐味!

でもやっぱり圧倒的にミュージカルが足りていない
心を身体をミュージカルで満たしたい!
架空のミュージカルを作曲依頼するしかないな!!!

というわけで依頼

今回もF.Koshiba様にお願いしました。
前回も書いたんですけど、大好きなボカロPに曲を作っていただけるなんていう幸福があって良いんですかね?
F.Koshiba様(わんだらP)の曲でも私が特によく聞いていたのが『蒼穹図』や『コンドル』で、空や風の表現が本当に好きなんですよ。
前回お願いした曲でも空への憧れを伸びやかな音で見事に表現してくださりました。
なので、F.Koshiba様に依頼するという選択肢以外は存在しなかったです。

さて、依頼の際の流れ等は前回の記事を読んでもらうとしまして、今回依頼した曲の概要をば。

前回依頼した曲が架空のミュージカルの序盤における曲だとすると今回依頼したのはフィナーレにあたる曲です

片足を失い失意の中にあった主人公が空への思いを捨てることが出来ず、厳しい戦局にある空へと再び舞い戻っていく、そんなイメージの曲です。

主人公のモデルとなった人物の日記からイメージを広げていく形で歌詞は作成しました。

(前略)
私たちにとって飛ぶことこそが天に与えられたものなのだ。飛ぶために生き、飛ぶことは思考の延長や別世界への憧れのような個性の表現なのだ。天と地の間を浮遊し、魂の最も純粋な言葉に耳を傾け、人や物の欠点を忘れ、永遠の正当性の中にある生命の本質を認識することを学んできた。
(中略)
しかし、私たちはまだリリエンタールとライト兄弟の人間的ではあるが不備のある技術へ片足を踏み入れており、もう片足は技術の革新により人間的な感じがなくなっていく明日の世界にある。
(Aus Krieg und Friedenより)

素人の訳なので文章が不自然なことには目をつぶって欲しい。特に核となっているのはこの足を失い入院している際に書かれた日記である。
愛機に対し人間のように「彼女(sie)」「君(du)」と呼びかけている記述、プロパガンダにより英雄として祭り上げられることに対する苦悩など日記の他の日に書かれた記述も参考にしつつニュアンスとして加えていき歌詞を書いた。

ちょうど依頼する少し前に配信でモーツァルト!を見まして、歌詞を書くときにかなり影響を受けたこともついでにここで白状します。
もともと歌詞を書く際には、翻訳ミュージカルっぽさを出すために倍ほどの分量で歌詞を書き、そこから約半分になるまで歌詞を削っているんですね。ですが、モーツァルト!の『僕こそ音楽』で原詩のニュアンスをほとんど落とすことなく日本語詞が作られていることに感動して、その雰囲気が出せないかとあまり歌詞を削らなかった結果あわただしくなってしまい、結局あとからガッツリ歌詞を削ることに……。(本当にご迷惑をおかけしました……)

フィナーレらしく、群衆(アンサンブル)を含めたキャスト全員の合唱でいくべきか、主人公と愛機のデュエットで締めるべきかもさんざん悩みに悩み、結局どちらも捨てきれずに両方の要素を入れてもらうことになりました。

さて、そんなこんなもありながら作曲者様に曲をつけていただきます。毎度のことながら、丁寧に要望をくみ取り仕上げてくださりました。本当にありがとうございます。


そして完成

Trotzdem(それでも私は飛ぶ)

僕の心はどこにある
ここじゃない 遥かなあの空だ
君と一緒なら 追いつけるだろうか
自由な あの鳥たちに

君と飛んだ空が
僕の胸を焦がす
折れた翼 痛むけれど
羽ばたかずには いられないんだ

勝利から勝利へ 飛び続けた
死神の手からも 逃れ飛んだ
英雄じゃない 飛びたいだけ

天と地の間 君と舞い踊ろう
君のエンジンの 歌声に合わせて
何もかも忘れ ただ命ある限りに
君の翼が 私の栄光だ

燻る赤い炎
迫り祖国燃やす
希望潰え 叶わぬとも
進む道しか 残されてない

絶望の日にさえ 飛び続けよう
死の息吹にさえ 立ち向かおう
たとえ勝利が 過去のものでも

天と地の間 共に飛び戦おう
鈍いエンジンの 残響を残して
前だけを見つめ ただ命ある限りに
彼の翼が 祖国の栄光だ

片足は過去の至福へ 片足は未来の空へ

天と地の間 君と(あなたと)舞い踊ろう
君の(わたしの)エンジンの 高鳴りに合わせて
何もかも忘れ この命ある限りに
僕らの(ふたりの)翼は 自由な大空だ

納品された曲を聞いた。

泣いた

あの皆さんはミュージカルで泣いたことってありますか?
私はめちゃくちゃ泣くタイプの人間です。
ライオンキングのサークルオブライフで毎回号泣するタイプです。(余談ですがサークルオブライフが流れる=涙が出るというパブロフの犬も真っ青な条件反射が確立されてしまった結果、映画館で実写ライオンキングの予告が流れるだけで泣いてました)

そんな話はいいんですよ。あの、ミュージカルのフィナーレで胸がぐわっと熱くなって思わず涙が出てくるあの感覚がそのまま再現されてるんですよ。
フィナーレでこの曲が流れたら絶対に泣く。というか今泣いてる

さて、もうちょっと落ち着いて聞いてみます。
以降このミュージカル公演が存在するかのような感想が見受けられるかもしれませんが私はいたって正気ですし、ちゃんと落ち着いて聞いてます。

イントロ部分、病室のベッドの上に主人公が見えますよね?窓から見える空を見上げてますよね?
この部分は前回のFrom Umbrella to Stukaと同じメロディラインにしていただいたんですけれども、伴奏と歌い方が変わるだけでここまで印象が変わるのか…と本当に驚きました。

そしてそこから力強い声が戻って前奏~Aメロの流れ!
ここがもう一番好きなところです。
劇場に通い詰めて、今度こそ泣かずに見るぞ!と決意をして臨んでも毎回ここで泣いちゃいうんですよ。
戦場に戻るという状況にも関わらず、そこに悲壮感はなく空を飛ぶことが出来る喜びがあふれていて、松葉杖に縋りながらも立ち上がるのを見ると胸がいっぱいになっちゃって、気付いたらアンサンブルの合唱に場面が切り替わってるんですよね……。
この舞台に限らず、何度も見てる舞台なのに好きな場面に限って記憶喪失になるのはどうしてなんですかね?
不思議ですね。

そしてアンサンブルの合唱ですね!
キャスト全員でのフィナーレの合唱って本当に良いですよね。
悲壮感を感じさせない主人公の歌唱とは対照的なアンサンブルパート
見ている観客にはこの先に待ち受けている暗い未来がわかっているからこそ光るパートでもありますね。
赤い照明に照らされた足元のスモークがキャストの行進のような動きに合わせて揺らめくのがまた美しいんですよ。

Cメロも大好きです
アンサンブルのコーラスが入っているところから、シュトゥーカ(主人公の愛機)とのデュエットへ移っていくあの感じ!!
主人公は片足を失っているわけなんですが、演じるキャストさんによって「片足は過去の至福へ 片足は未来の空へ」のどちらが失われた足なのか解釈が違うのも面白いですね

最後のデュエット!
もうね、このデュエットを聞くためにこのミュージカルを観に来てる。
これはもうふたりだけの世界だよ。
この先に待ち構える未来を示しつつも、そこを照らす光のように前を見据えて飛んでいくんですよ。2人の間にたしかに存在する絆と信頼感!!!
最後のメロディーがFrom Umbrella to Stukaのリプライズになっているのも、空への憧れは変わっていない感じがして本当に好きですね。

ここから照明が消えて、カーテンコールになるんですけど、腕が痛くなるくらい拍手しますし、スタンディングオベーションですよ。
毎回めちゃくちゃ泣いてしまうのでなんとかカーテンコールの間に目の赤みが引くことを願うんですよ。

そういえば、Aメロの時点で号泣するせいで気付けばいつも最初のサビの記憶がないオタクなので、この曲の考察(※そんなものは存在しない)を読んで初めてなるほどと思った部分があるんですね。
最初のサビのラストで主人公が「君の翼は 私の栄光だ」って歌っている部分、主人公の一人称は基本的に「僕」なのにここだけ「私」になっているのは「英雄じゃない 飛びたいだけ」と歌っている主人公も無意識的には民衆が求める「英雄」を演じてしまっているのではないかって考察。そう思って聞くとそうかもしれないって感じになる。すごい。
(ごめんなさい、本当は私が歌詞を作る時に完全に一人称をミスっただけなんですが、そういうことにしといてください。私が公式だ

どうも、無限大ゴリラです

そんな訳で、めでたく架空のミュージカルの2曲目が出来ました。
妄想を知覚できる形にするのはやっぱり楽しいですね

前回の記事で「一人でも多くの人間にこの幻覚を見せて、ゴリラを増やしていきたい」と書きましたが、最近は順調にゴリラが増えていますね。
私のフォロワーにはちらほらとこのミュージカルを観に行ったらしき人が出始めていますし、フォロワーの中には他の架空の舞台や架空の〇〇を生み出す人も出てきているので無事ゴリラは増えているみたいです。(持ち寄った架空のフライヤーを集めて、劇場の入り口でもらえるフライヤーの束みたいにするの絶対に楽しそうだと思うんですけどどうですか?)

ちなみに私は架空のミュージカルの架空の公演コラボメニューを作るべく最近はお菓子作りに励んでいます。やばい発色の食用色素を買いました。

まだまだゴリラを増やしていきたいですね。

最後になりますが、この度素晴らしい曲を作ってくださったF.Koshiba様、ヘッダー画像を作ってくださった黒木洋様、本当にありがとうございました!

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