見出し画像

欧州旅行記⑤

大学の前期の授業が終わった。特に何か学んだ記憶はない。強いて言うならば予備日に設けられた実験が久しぶりで楽しかった。教授が1人、退職していたらしい。いなくなったことにすら気付くことはなかった。なんせ、僕らが学校に来たのは半年ぶりだ。黒上短髪の私に皆が気付くまでには少し時間が掛かった。皆に気が付かれないあの感覚はどこか楽しさを覚えた。


彼の名前は飯田くんだ。階段で出会い、同部屋なので部屋まで案内してもらい空いているベットを教えてもらった。
彼はどこかで買ってきた弁当を食べながら自らのことを語ってくれた。私自身、1人でヨーロッパを回るなんて滅多にいたいであろうと思っていたが彼は私以上だった。話によるとロシアからフランスまで来たというのだ。度肝を抜かれた。色々と話し込み、私もお腹が減ったので再び街に出ることにした。ホテルを出て街を歩いたがせっかくならと思い、部屋に戻り彼に言った。「もしよかったら、一緒にワインとつまみでも買って下で飲まない?」と。彼はすぐ食いつき、一緒に街へ出た。近場のワインセラーに行き、白ワインをチョイスした。彼は家族へのお土産もそこで買っていた。白ワインが5€とかなり安く前日の同部屋にワインの空き瓶が多くあった理由がわかった。近くのスーパーで生ハムを買った。
白ワインに生ハムという普通ではない組み合わせだが、白ワインの方が個人的に飲みやすいと思ったのと生ハムが食べたいというだけの理由だ。

ホテルに戻り、部屋へ行き地下の共同キッチン兼飲食ルームに向かった。僕らは各々が持参しているカップラーメンを手にしていた。
お湯を沸かしカップラーメンにお湯を注いだ。 カップヌードルのカレー味だ。3分経った頃合いにワインを開けようとした。
ここで、事件が起きた。ワインボトルの開け方を知らない。開ける器具は見つかったが開け方を知らず、2人で慌てていると隣の席にいた外国人の美人女性が軽々しく開けてくれたのだ。
席についた時から気になってはいたがこのような形で仲良くなるとは思ってもいなかった。そして、とても恥ずかしい経験をした。彼女にもワインを一杯渡し、3人で乾杯をした。

やっとの思いでありついたカップヌードルはかなり伸びていた。生ハムを開け、ワインを飲んだ。お互いの旅路を話したり、先ほどの女性がどれだけ美人であるかなどを話した。結果的に女性にはイケメンな男性が付いていたので、完敗だった。

しばらくすると、1人の女性がキッチンへ来た。そして、彼女が発した一言目は「日本語っぽいのが聞こえると思ったら日本人じゃん!」であった。すぐさま、話かけ一緒にご飯を食べることにした。彼女は近所で買ったケバブを温め直しに来ていたのだ。

彼女の名前は『ももは』と言い。私達の一個上の先輩である。友達とイギリスとパリを卒業旅行に来ていたらしく最後は1人でパリを観光しに残ったらしい。

飯田くんとももはと3人で『出逢いに乾杯』というありきたりでありながらもこういう時に使う言葉なんだろうなと思いつつお酒を飲んだ。

日付が変わる頃には白ワインだったお酒が鏡月に変わっていた。飯田くんの持ち込みだ。
そんな彼は翌日朝早くからパリを出てモンサンミッシェルに向かうらしく部屋に戻った。

私とももはは1階のロビーへ行った。今となると何を話したかは特に覚えていないが飾ってあったギターを弾いてみたり他の外国人と会話をしたり各々について話た。
時刻は深夜2時を迎えていた。するとももは急にお腹が減ったと言い出し、カップラーメンを食べると言いはじめたのだ。数時間前に食べたばかりではあるが深夜テンションという謎のノリからその日2杯目のカップヌードルを食べた。

再びロビーに戻り、受付のフランス人とその友人たちと会話をした。会話とまでは言わないがその友人が必死に日本語で1〜10までを数えようとしていたのだ。うまく言えず何度もやり直し最終的には言えるようになりドヤ顔を見せてきた。イケメンだったので何も言い返せない。

ももはとはお互いに翌日の予定がなく、とりあえず、朝ごはんを一緒に食べる約束をした。近所のパン屋さんに行くことになった。
部屋に戻ったのは夜中の3時。長く濃い1日が終わりを告げた。


3日目の朝は外の騒音と二段ベッドの上の人の寝返りの揺れで目が覚めた。1度目が覚めるとなかなか寝れず、時刻は朝の7時であった。イヤホンをしてYouTubeを眺めながら再び眠りについた。8時半ごろになり再び目が覚めたのだ。飯田くんは部屋を出ていた。私は散歩までとは言わないがロビーでココアを買い外に出て一服した。やはり、まだ薄暗い。部屋に戻り三度、ベッドに転がる。また、軽い眠りについたが長くは続かず周りの音で目が覚めシャワーを浴びた。髪を乾かし、ももはとLINEをしながら10時ごろやっと集合した。

適当に散歩をしながらパン屋を目指した。日本人の感覚で言う朝には少し遅いがブランチ感覚でパンを買った。トマトとチーズをフランスパンで挟んだものを買った。

寝不足もあり、ボケていたのか写真を撮る前にかじったことを今でも悔やんでいる。

ホテルに戻りパンを食べた。ももは英語がかなり上手くとても頼りになった。お互いに予定がないので一緒に観光することになった。私のパリに関する前情報で電動のキックボードが楽しいと聞いていた。ももはにそれを伝え、アプリをダウンロードし、街へ向かった。

この人は恐怖という概念がないのか最初から全速力で坂を下って行きゆっくりと登ってきた。

街へ向かいまずはセーヌ川へと向かった。川までは普通の車道を走り続けた。

しかし、川辺に着くと自転車と電動キックボード用の車線があり、安全に乗ることができる。
最高速度の24km/hを出しながら進むパリの街並みは前日とは異なりまた変わった感覚がある。

しばらくすると、凱旋門のそばに着いた。駐車禁止区の脇に止めた。シャンデリぜ通りを歩いた。

ハイブランドのお店を横目に歩くと少年心を擽る、お店の前で立ち止まった。そう。パリを拠点とするサッカーチーム。PSGの公式ストアだ。高校までサッカーを続けてた私にはかなり興味があり、お店に入った。

店の中はPSGのユニホームからジャージ、マグカップなど様々な物があった。海外サッカーとは日本のサッカーとはまた異なり熱狂的なファンが多い。サラッと店内を回り興奮冷めやまぬうちに外へと出た。

そのあとは凱旋門へと足を運んだ。2日連続で見る凱旋門は見慣れたものへと変わっていったが見飽きることはなかった。スニーカー屋を巡り歩いた。ヨーロッパで買いたいものはCT70とブラック501の2つだ。いくつもあるスニーカーの専門店を巡った。イメージはABCマートの進化版だ。流暢な英語で店員さんと話をするももははカッコよかった。旅が始まったばっかりの私は買わずに店を出た。荷物を増やしたくなかった。
リーバイスのお店にも行った。かなり大きくパリ限定のTシャツも売っていた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?