銃とぴょん吉

僕はどこに行くときもぴょん吉Tシャツを着ていく。

お笑いライブに行く時もそうだし、お酒を飲みに行くときもぴょん吉Tシャツを着ていく。どうしてそんなことをしているのかというと、爆笑問題の太田さんのライフスタイルに影響されたのだ。

太田さんは私生活ではぴょん吉Tシャツしか着ないことでおなじみで、ラジオでよくその話をしている。そんな太田さんのぴょん吉話を聞くうちに、僕も自然とぴょん吉を着て外出するようになってしまった。

また、ぴょん吉以外の太田さんの有名な話として、共演者の楽屋でエアガン（弾は入っていない）を発砲する、というエピソードがある。

はたから見るとパワハラだけど、喜ぶ後輩もいるようで、かが屋なんかは太田さんの発砲に付き合ってコントをやるらしい。

さすがにエアガンは真似するわけにはいかなかったけど（それを持って外出したら職質されそう）、ピストル型のライターならぎりぎり大丈夫なんじゃないか、と思って通販で購入したりもした。

そして一時期銃とぴょん吉のセットでミナミのスナックに通ったりしていたのだけれど、スナックのママは太田さんのふだんの振る舞いを知るはずもないから、なんの指摘も受けなかった。

ところがある日のこと。とある芸人のyoutubeで爆笑問題の特集をしていたことがあって、それを見たママから、あんたがなんでぴょん吉を着てくるのかようやくわかったわ、と、言われたことがあった。

どうやら長い間、わけもなくぴょん吉を着てくる変なお客と思われていたらしい。不本意である。

まあそういった誤解も解けたことで、その日以降は気兼ねなくぴょん吉を着てスナック通いができるようになった（銃は持っていくのが面倒くさくなって徐々にフェードアウトしていった）。だからといってママからぴょん吉の話を聞かれるわけでもなかったし、僕からぴょん吉の話をするわけでもなかったけど、気楽にぴょん吉を着てスナックに行けるようにはなった。

爆笑問題が出るライブでそれをするならまだしも、特に爆笑問題ファンでもないママのいるスナックでそんなことをするなんて、傍から見ると意味がわからない行為だとは思う。

ただ、そんなことを続けていたある日のこと。スナックで初対面の客から、ぴょん吉を着ているなんて太田さんみたいですね、と、言われたことがある。

どうやらその客、大の爆笑問題ファンだったようで、その日は爆笑問題の話で大いに盛り上がった。

僕がぴょん吉Tシャツを着ていたことにはじめて意味が生じた出来事で、長いこと続けているとこんなこともあるんだな、と、嬉しい気持ちになったし、これからもぴょん吉Tシャツを着てスナックに通い続けよう、と、心に誓った瞬間だった。

ちなみに銃は今では自宅の奥深くに眠っている。