ウエストランドの井口さんが、SNSに自分のちんちんを晒した日

漫才師 ウエストランドの井口浩之さんが、SNSでファンに自分のちんちんの写真を送りつけたらしい、そんな噂が僕の耳に届いたのは、今週火曜日の22時頃のこと。

井口さんは、爆笑問題を擁する芸能事務所のタイタンに所属するお笑い芸人で、今年で芸歴11年になる。自分が発信する立場の人間であることは、重々承知しているはずだ。

だからこそ、この噂を聞いた時は、にわかには信じがたいと思った。キャリア的にも、芸風的にも、そんな行動をするとは思えなかったからだ。

詳しく調べてみると、ファン(と称するアカウント)とネット上でセクシャルなやり取りをするうちに興奮してしまい、自分のちんちんの写真を送りつけてしまった、とのことだった(おまけに、いきり立った自分のちんちんをしごく動画も送ってしまったらしい)。

結果として、このアカウントは(おそらく)ファンでなく騙りであり、一連のやり取りはすべてネットの掲示板に晒されてしまうこととなる。そしてとうとうツイッターにまで情報が流出してしまい、お笑いファンの間で騒ぎになっていたのだ。

一連の騒ぎを受けて、火曜深夜放送の爆笑問題のラジオに井口さんが生出演し、釈明と謝罪をしていた。

ラジオからでも伝わるぐらい、憔悴しきった様子だった。

いつも自信満々な井口さんが、今にも泣きそうになりながら、騒動を出演者(とリスナー)に説明していた。井口さんのあんな声は聞きたくなかった。ただただ辛かったし、こっちまで泣きそうになった。

ただ、この日カーボーイがあったことは、彼にとって本当によかったなあ、とも思った。

今回の騒動を受けて、一時芸人を辞めようとまで考えた彼を、出演者達がそれぞれの言葉で励ましている様子を聞くと、こっちまで嬉しい気持ちになった。

特に心に響いたのは太田さんの言葉だ。

お前のやったことなんてなんでもないんだ、芸人を辞めるなんてふざけんじゃねえよと、表現こそきつかったが、確かな優しさも感じる言い方で、本当にいい先輩に恵まれたのだな、と思い、じーんときた。


太田さんは、一貫してだめな人に優しい。

太田さんのメディアでのトークや、著作に触れると、だめな人に対する暖かい眼差しを感じる瞬間が何度もある。

太田さんの尊敬する芸人、立川談志の言葉に「落語とは、人間の業の肯定である」というものがあって、何度もご自身の著作で引用されている言葉なのだけれど、彼の芸人としてのスタンスも、この言葉に通じるものがあると思う。

だからこそ、SNSで自分のちんちんを晒すという、人間の業の極地のような振る舞いをしてしまった井口さんに対してさえ、太田さんは優しいのだ。

そんな太田さんの著作のなかで、特に好きな一節があるので、以下に記したい。

“すべからく、人間は残酷な一面を持っている。笑うし、笑われるし、いじるし、いじられるし、いじめるし、いじめられる。いじめる側もいじめられる側も、そんな人間の一人で、誰もが完璧じゃない。だからこそ、その残酷さに蓋をして綺麗事とせず、みずからの作品や芸で人間を描く表現者に俺は感動するし、そういう作品に救われてきた。それらの表現のなかには、チャップリンやたけしさんたちの「笑い」ももちろん含まれている。そういう意味では、笑いは時に人を殺しもするし、時に人を救うのだろう。だからやっぱり、笑いは取り扱いが難しい”

これは太田さんの著作「違和感」に収録されたエッセイの一節だ。今の井口さんにも、この言葉を届けたいと思う(と言っても、もう読んだことがあるかもしれないが)。

人間にはいい部分と悪い部分の両方があって、だからこそ面白い、というのが太田さんの長年に渡る主張の一つで、個人的にもその考えに共感する。

そんなあたたかい先輩のサポートを受けることのできる環境なのだから、井口さんもこれでめげることなく、立ち直って欲しい、と強く願う。


ファン(と称するアカウント)とセクシャルなやり取りをした日、井口さんは、SNSに自分のちんちんを晒してしまった

もう、ちんちんを晒す前の井口さんには戻れない。

これから先、日常の出来事に対して不平不満を言っても「でも、この人SNSでちんちんを晒してるんだよな」と思われるし、社会の矛盾にするどく切り込んでも「でも、この人SNSでちんちんを晒しているのよね」と思われてしまう。

愚痴を笑いに昇華するスタイルだった井口さんにとっては、難しい状況になってしまった。

彼が自分で蒔いた種なのでしょうがないとは思うが、ファンとしてはやるせない気持ちになってしまう。

おそらく、これまでの芸風は180度変えないといけなくなるだろう。

ただ、変態的な行動をとった経験をもつ彼だからこそ表現できる笑いがきっとあるはずだし、それで救われる人もいるはずだ。

少なくとも太田さんは、井口さんの芸人としての実力と、笑いの力を信じているし、だからこそカーボーイで暖かいパスをしてくれたんだと思う。

太田さんの優しさをしっかりと受け止めて、これから自分が芸人として、どういう形の笑いを提供できるのかを、しっかりと考えていって欲しい。


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