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ネットショッピングでは現金や電子マネーよりクレジットカードが安全というお話

ネットを利用していろいろな商品やサービスの注文をするのは手軽で楽しいものです。
ただ、そんなネットショッピングにも落とし穴があるのは事実です。
 
海外詐欺サイトやインチキなセキュリティソフト、詐欺的な情報商材や出会い系サイトなど、トラブルは多発しています。
 
海外詐欺サイトとは、見た目はブランド品を扱う日本の通販ショップでありながら、実態は海外の悪質業者が運営する詐欺的なサイトです。ブランドのファッション用品がありえない安さで販売しており、その価格に魅せられて現金振り込みをすると、商品を送ってこなかったり、全く違うジャンク品を送ってくるというものです。
クレーム対応もメールのみで、そのうちに全く連絡がとれなくなります。
 
インチキなセキュリティソフトは、動画サイト等の閲覧中に「ウィルスに感染しました」という警告メッセージが表示され、解決するためにはセキュリティソフトを購入する必要があると誘導されるものです。
もちろんウィルス感染というのはウソ情報で、遠隔操作でインストールさせられるセキュリティソフトも本来は不要のものです。
 
アフィリエイトやFXについて教える高額塾や、出会い系サイトで話し相手になれば高額報酬がもらえるという詐欺的なネット広告もあふれています。
 
こうした詐欺的な取引では、銀行振込による現金支払いやアマゾンギフト等の電子マネーで支払いをするように請求されることが多く、クレジットカードは利用できないことが多いです。
 
それはなぜか?
 
銀行振込や電子マネーは返金処理が困難で、クレジットカードは被害を正確に申告すれば返金される可能性があるからです。
 
悪質業者にとっては、クレジットカード決済では返金されてしまうことがあり、しかも販売業者への審査が厳しく取引がしてもらえないことが多いためです。
 
 

ネット通販に関する法令


 
このようにトラブルがてんこ盛りのネットショッピング(ネット通販)ですが、そのような問題を予防するために法令による事業者規制や返品ルールが定められています。
 
主要な法律としては、特定商取引法、割賦販売法、景品表示法、電子消費者契約法などです。経済産業省では、「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」というガイドラインを公開し、その内容を随時更新しています。
このあたりの法令やガイドラインを確認することで、ネット通販トラブルのリスクを下げることができます。
 
特定商取引法では、ネット通販事業者に所在地や会社名、代表者名、連絡手段、返品ルール等を明確に表示することを義務付けています。(返品ルールを表示しない場合は、消費者に7日間の法定返品権を認めています。)
 
景品表示法では、実際よりも有利な価格であると誤認させる有利誤認、実際よりも優良な品質であると誤認させる優良誤認の不当表示を禁止し、違反した場合には事業者に対して罰金や措置命令が課せられます。
 
電子消費者契約法では、サイトでの注文時に確認画面を表示することを義務付け、これに基づかない契約方式は無効と主張することが可能とされています。
 
その他にも「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」では、ショッピングモール等の取引の場を提供する事業者の責任についても言及がされるなど、実際に起きているトラブルを想定して対策が講じられています。
 
それでもネット通販トラブルが減らないのは、急成長市場ということもあって、膨大な取引事例に監視の目が行き届かない状態にあるということでしょう。
しかし、ネット通販の分野での法令やガイドラインによる取引適正化は確実に図られているので、時間の経過とともに落ち着いていくものと見込まれます。
 
 

現金取引は危険で代引きは安全か?


 
ネット通販での安全取引のための法令やガイドラインの整備は進められているものの、それでも前述のようなトラブルは多発しており、しかも消費者が泣き寝入りをするしかない事例は多いものです。
 
特に詐欺サイトに注文をして現金前払いをしてしまった場合には、サイト業者の所在地は不明であり、しかも海外で日本の法律の効力が及ばないことも多く、支払ったお金を取り戻すことはほぼ不可能です。
 
ネット通販での現金前払いは危険だという認識は広がっていますが、代引きの配達にすれば安全だという意見を見聞することがあります。
 
果たして代引きの配達は安全なのでしょうか?
 
これについては、現金前払いよりは安全かもしれないけれど、それでも危険であることに違いはありません。
 
なぜかと言えば、代引きで受け取った商品がジャンク品である可能性があるからです。
箱を空けてから注文した商品とは異なるジャンク品だと気づいても、既に現金支払いしたお金を取り戻すのは困難です。
詐欺業者との現金取引は、誰も安全性を保証してくれないのです。これでは被害回復はできません。
 
現金の場合は、銀行振込でも代引きでも、一度支払ってしまったお金を取り戻すのはかなり難しいと覚悟しなくてはなりません。
 
 

クレジット会社の対応とネット取引での安全性


 
ネット通販で初めて取引をする業者とは、相応の警戒心を持って支払い方法を選択する必要があります。
現金の前払いや代引き配達は安全では無いことはご理解頂けたと思います。(現金でも先に商品を受領する後払いなら安全ですが、後払いに応じるケースは少ないですね。)
 
それではクレジットカードで支払いをすれば安全性は高まるものでしょうか?
 
クレジットカード取引を規定する割賦販売法には、支払い停止抗弁の接続という制度があります。
これは販売店が商品を送らなかったり、ジャンク品を送ってくるようなケースでは、販売店に債務不履行を理由として返金請求をできるのですが、同じ理由でクレジット会社に対してもクレジット代金の支払い停止を申入れることが可能になるものです。
 
つまり、クレジット決済はされても銀行口座からの引き落としを停止することが出来ると言うことです。
 
ただし、クレジットカードの一括支払い(マンスリークリア)を選択した場合は支払い停止抗弁の手続はできないことになっています。
分割支払いのリボルビング支払いであれば、支払い停止が可能になります。
 
それではクレジットの一括支払いは救済されないかというと、クレジット会社もネット通販トラブルがあまりに悪質な場合は独自対応でキャッシュバックに応じてくれることもあります。(クレジットの独自ルールでチャージバックと呼ばれる制度)。
 
このように取引にクレジット会社が一定の関与と保証をしてくれるので、相手がわからないネット通販ではクレジットカードを使用するのが安全といえるのです。
 
なお、電子マネーについては割賦販売法の対象外のため、支払い停止抗弁の接続という救済手段はありません。
電子マネーは資金決済法という法律でルールが定められていますが、まだ歴史が浅い決済サービスであるため消費者保護のルールは不十分な状況です。
 
筆者は大学講演や消費者講座で安易なクレジット利用による多重債務への注意喚起をしていますが、ネット通販に関しては現金よりもクレジットカードを利用した方がよいと語っています。
 
カードの年会費やリボルビング払いの利息など、クレジットには消費者にとって金銭負担もありますが、ネット通販を利用する場合はそれ以上のメリットがあると感じています。
 
普段は現金派や電子マネー派の方も、ネット通販で高額商品の購入や長期間の継続サービス(サブスク契約)を利用する場合には、クレジットカード決済を選択した方が安全性が高いため、そうした場面ではカード利用することをお勧めします。
 

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インターネット取引と消費者法

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